ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

The Endless River / Pink Floyd

The Endless River (Gatefold Sleeve 180g 2LP)

 Pink Floydの最後のアルバム(おそらく)「The Endless River」のアナログ盤がやっと届きました。

 随分待たされましたが開けてみて満足。アートと言っていい美しい表ジャケはアナログ盤くらいの大きさがあると見栄えしますね。

 ちなみにクリエイティブ・ ディレクターとしてはやっぱりヒプノシスが参加。ジャケットの、雲の「川」に漕ぎ出してゆく男の力強いイメージのコンセプトは、18歳のエジプト人デジタル・アーティスト、アハメッド・エマッド・エルディンの作品がもとになっているそうです。

Pinkfloyd1

Produced by David Gilmour,Phil Manzanera, Youth, Andy Jackson

Side 1
01. Things Left Unsaid
02. It's What We Do
03. Ebb And Flow

Side 2
04. Sum
05. Skins
06. Unsung
07. Anisina

Side 3
08. The Lost Art Of Conversation
09. On Noodle Street
10. Night Light
11. Allons-Y (1)
12. Autumn'68
13. Allons-Y (2)
14. Talkin' Hawkin'

Side 4
15. Calling
16. Eyes To Pearls
17. Surfacing
18. Louder Than Words

 個人的にはロジャー・ウォーターズと他の三人が袂をわかった時に既にピンク・フロイドは終わったと思っていましたから「」「」は音楽としては興味はあってもピンク・フロイドとは思っていませんでした。
 むしろ「On An Island」の方がデイブ・ギルモア名義で潔いし、アルバムとしても良く出来ていると評価できるものだったと思います。

 さて、再びPF名義で出したこのアルバムはどうか?事前のアナウンスではデヴィッド・ギルモアニック・メイスンリック・ライトを中心に1993〜94年に行われた「The Division Bell」セッションのアンビエント&インストゥメンタル・ミュージックをベースにしているとのことでした。

 その音源をギルモアフィル・マンザネラキリング・ジョーク等で知られるユース、レコーディング・エンジニアのアンディ・ジャクソンがプロデュースして仕上げた作品です。当然ながら殆どの曲がインストルメンタルで、終曲の「Louder Than Words」のみに「対」で殆どの作詞を担当したポリー・サムソンが歌詞を付けています。

 クレジットを見ると「Anisina」「Calling」という曲以外全てリック・ライトの名前がありますし、ギルモアとライトの二人だけの曲も三曲あります。泣きのギルモア・ギター・サウンドに呼応するような、あのリック独特の残響の効いた、或いはホーンのように鳴り響くキーボードやオルガンのサウンド、様々なエフェクト、そして美しいピアノの響き、いかにもリックだなあと言う懐かしさがこみ上げてきます。

 更にはSide-3「Autumn'68」という曲ではロイヤル・アルバート・ホールパイプオルガンまで弾いています。その曲はオーディオファイル的には鳴らしがいのある曲ですが、個人的には同面一曲目の「The Lost Art Of Conversation」の、ギルモアとのDuoの美しさの方が心に染み入ってきますね。

 古い音源に新しい息吹を吹き込む、と言えば聞こえは良いですが、あくまでも「」の延長線上にある音であり、リック・ライトを偲ぶためのアルバムです。70年代にプログレッシブ・ロックの新たなる地平を切り開いたピンク・フロイドが好きだった者にとっては美しい残滓に過ぎないといってはあまりにも失礼でしょうけれど、彼らの最期を(ロジャー・ウォーターズ抜きでではありますが)しかと見届けた、という思いです。終曲の「Louder Than Words」にはぐっとこみ上げてくるものが、確かにありました。

Louder than words
The thing they call soul
Is there with a pulse
Louder than words

Louider than words

(exerpt from "Louder Than Words")