ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

パット・メセニー・ ユニティー・グループ@新神戸オリエンタル劇場

Patmethenyprogram20141012

 昨日(10月12日)Pat Metheny Unity Groupの日本ツアー・ファイナル、新神戸オリエンタル劇場でのライブに行ってきました。いやあ、素晴らしすぎて感動のあまり涙が出てしまいました。

 オーケストリオンで完全に一人での音楽世界を構築してしまった感のあるパット、これから一体どうするんだろうと思っていましたが、「パット・メセニーオーケストリオン」+PMG的なバンドを作り上げてきました。それもメンバーはサックスの名手クリス・ポッターを始めとして従来のPMGとは全く違うメンバーで個々の能力も高く、さらにアグレッシブな音を目指しているようです。

Picassoguiter

 さて、弦楽器職人のリンダ・マンザーメセニーのために作った42弦のアコースティックギター、かの有名な「ピカソギター」のソロで始まった今回のライブ、パットは様々なギターを取替えひっかえの大熱演。演奏される曲も80/81的なハードなものあり、陶酔するような美しいバラードあり、DUO合戦ありで、更には噂のオーケストリオンも見ることができ、夢のような時間が終わると会場は怒涛のスタンディング・オベーション。そしてその後のアンコールは「ついておいで」と「Last Train Home(Solo)」、こんな素晴らしいフュージョンのライブを体験できたのは初めてで、感無量で帰路に着きました。

パット・メセニー ユニティーグループ ワールドツアー2014

Date: 2014.10.12  18:00-20:30

Place: 新神戸オリエンタル劇場

Patmetheny2014

Pat Metheny Unity Group

Pat Metheny (g) + Orchestrion
Chris Potter (sax)
Ben Williams (b)
Antonio Sanchez (ds)
Giulio Carmassi (p,vo,hr)

 午後5時半の開場で、外人おじさん(名物おじさんらしいです)の呼び込みでグッズ売り場はたくさんの人だかり。冒頭写真はサイン入りプログラムで、入場してすぐに売り切れ寸前で買うことができました。通常1500円のところ3000円ですが、正直1500円出して普通版を買う気も無いので3000円でサインを手に入れたと言うところですね。これがファン心理(笑。

 席は前の「ザ・ニュースペーパー」公演の時に押さえてあった、二階の一番左端の席。予想通り、パットを間近に見られる特等席でした。そして定刻までには3階までの会場がほぼ満席となりました。
 幕は最初から開いており、ファンの方が最前列に詰め掛けてギター・ディバイスなどを興味津々で覗いておられます。

 定刻の午後6時になると、アナウンスが流れ、まずはパット・メセニーが一人で舞台に登場。盛大な拍手の中、フロントの向かって左側の椅子に座り、おもむろにピカソギターでのソロ演奏を始めました。この自然さがパットらしい。

 還暦を迎えたそうですが、昔ながらのしま模様のシャツ、ジーンズにスニーカーというアメリカ少年の印象。あの天然パーマのふさふさした髪の毛がやや白くなった程度でしょうか。

 それはともかくピカソギターの演奏を実際に見たのは初めてだったのですが、あれだけ多彩な音を出せるんだと驚きました。変則5ネックですが後方の弦はまるでハープのようでとても太くて綺麗な音色でした。

 続いては前作のユニティ・メンバーの三人が登場。サックスのクリス・ポッターがフロント向かって右側、ドラムのアントニオ・サンチェスセカンドラインの中央、ベースのベン・ウィリアムスが向かってその右側、クリスの後方に位置します。しかし、新メンバーのジュリオ・カルマッシは登場しません。

  あれれ?と思うまもなく、演奏が始まり、「80/81」からの「Folk Song #1」や「Song X」からの「Police People」など、パットの敬愛するオーネット・コールマンを髣髴とさせるクリス・ポッターの見事なサックス演奏をフィーチャーした、前衛的でハードなナンバーが続きます。途中ベースのベンの柔らかくしなやかなベース・ソロや、高速で正確なサンチェスのドラム・ソロも交えてどんどんステージは進んでいきます。ライル・メイズ役がいないのが残念ですが、各個人の能力は素晴らしく、パットももちろんソロは取りますが「新MSG」としてのまとまりが素晴らしかったです。

 4曲くらい終わった後でしょうか、やっとパットがマイクの前に立ち、メンバー紹介。続いてMCが入ります。

「今日で日本公演も最後で残念です。でもここに来れてこれだけのお客さんの前で演奏できるのはとても嬉しいです。最初はユニティ・グループのメンバーで80/81からもともとデューイ・レッドマンのために書いた曲やフォーク・ソング・パート1、ポリス・ピープルなどを演奏させていただきました。さて、いよいよもう一人の新メンバーを紹介しましょう、ジュリオ・カルマッシ!」(大意)

というわけで今まで暗かったステージ後方にライティングが当たり、中央のキーボードの場所にカルマッシが登場し盛大な拍手を浴びます。そしてその両脇に、噂の「オーケストリオン」の巨大なセットが姿を現しました!向かって左側にメイン装置、右側には様々なサイズの乳白色の液体を入れたガラス瓶を並べた棚が配置されています。おおっ、と思わず身を乗り出して魅入ってしまいました。

Orchesrion

 もうここまで来ると6人目のメンバーですね。あまりの巨大さに、カルマッシのキーボードが小さく見えて、カルマッシも肩身が狭そうです(笑。そしてここから怒涛の熱演が始まりました。パットの、

「では僕らの新作「KIN(← →)」から、まずはタイトルナンバーを演奏します」

 この表題曲はサンチェスの超高速ドラミングから滑り込んでいく、各メンバーの実力が如実に現れた非常に高度で濃密な曲ですが、いささかまだカルマッシの存在感が薄いように思いました。パットも基本ギター・シンセですが、オーケストリオンがライティングも鮮やかに動いており、そちらの方に気を取られてしまいました。

  そんな中でも「RISE UP」は乗りがよく、超高速のめくるめく出色のナンバーでした。これからの彼らの定演ナンバーになりそうな予感がします。イントロではクリスもギターを持ってなんとダブル・ギター!会場に手拍子を要求されるんですが、タイミングが難しく、みんなドキドキ。それはともかく、パットのカッティング・ストロークの凄いこと凄いこと、神がかってましたね。

 「On Day One」はサンチェスの変則ドラムから始まり、これにもメンバーが会場に手拍子を要求しますが、あんな複雑なリズムの手拍子真似できない(^_^;)。

 一曲一曲がアグレッシブで長いのはライブならでは、と思っていましたが、帰ってから買ったCDを聴いてみるとあれがほぼ譜面どおり。解説によると1曲目「On Day One」と2曲目の「RISE UP」だけで25分もあるそうです。

 そんなハードなナンバーの後に聴いた「BORN」という曲の美しさには陶然としました。本当に涙が出そうなほど美しいバラードで、これもこれからの彼らのキラー・チューンになると思います。

 その後にクリスとの絡みも面白い前衛的な現代音楽とも言うべき「Genealogy」が来るあたりがパットの真骨頂でしょうか。

 そして後半にはパットと4人各々のDUO合戦が挟まれます。みんなそれぞれに個性を発揮していました。
 まずはベン。パットのわずかにラテン・フレイバーの効いたソロと、黒人ならではのブルージーなベースソロが不思議と上手く絡み合っていて見事でした。
 続いてはクリス。ここはもう正当ジャズ路線でのテクニック合戦。
 そしていよいよ新人カルマッシ。メロディアスなキーボード演奏とともに披露されるカルマッシ自身のスキャットが美しくて驚きました。パットもゆったりとしたバラード演奏でそれに合わせます。
 最後はサンチェス。予想通りハードなロックも真っ青なドラムソロにパットも思いっきりファズをかけた大音量の高速演奏で応えます。

 本チャンが終わると会場が一斉にスタンディング・オベーション!私も無意識のうちに立ち上がっていました。もうメンバーも会場も感極まったという感じ。

 アンコールは二曲。

オフランプ

 まずはお約束のナンバー「ついておいで」の有名なリフが流れ始め、会場から盛大な拍手。まずクリス・ポッターがマイナー調の物悲しくも美しいフルート・ソロを披露し、そのあとパットの入魂のソロが入ります。新しいグループによる新しい「ついておいで」の美しさに鳥肌が立ちました。

One Quiet Night

 最後はもちろん「Last Train Home」、それもパットのソロで「One Quiet Night」バージョンです。ピカソギター・ソロで始まり、バリトン・ギターで終わるパットにしかなし得ない見事なライブでした。

 終演は予定の午後8時半をかなりオーバーしていました。最高の夜をありがとう、パットと4人の仲間たち!