ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

サイボーグ009完結編 conclusion GOD’S WAR (1)-(5)

サイボーグ009完結編 conclusion GOD’S WAR 1 (少年サンデーコミックススペシャル)サイボーグ009完結編 conclusion GOD’S WAR 2 (少年サンデーコミックススペシャル)サイボーグ009 完結編 conclusion GOD’S WAR 3 (少年サンデーコミックススペシャル)サイボーグ009完結編 conclusion GOD’S WAR 4 (少年サンデーコミックススペシャル)サイボーグ009完結編 conclusion GOD’S WAR 5 (少年サンデーコミックススペシャル)

 サイボーグ009ファンとしては人後に落ちないつもりの私でしたが、石ノ森章太郎先生が亡くなられ「天使編/神々との闘い編」が未完に終わった時点で、私の中では「サイボーグ009」という作品は終わってしまい、石ノ森漫画館グッズやフィギュアたちとともに封印されておりました。とか何とか言いながら2002年ごろに放映されたアニメは観ておりましたが、これも未完で唐突に終わってしまいました。

 しかし故石ノ森先生は余程心残りだったようで、残した膨大な構想ノートを息子の小野寺丈氏に託し、それが小説「2012 009 conclusion GOD'S WAR」となり、それを最終的に漫画化したものがこの5巻の「完結編 conclusion GOD’S WAR」シリーズです。ついに先日第五巻が出版され、名実ともに「サイボーグ009」は完結しました。

 しかしう~ん、何と言っていいのか?息子さんと石森プロが制作されている以上正当な「Conclusion(結論)」であることは間違いないのですが、正直なところすべての面において「劣化版009」としか言いようがありません。これが無断で他人が描いたものだったら袋叩きにあっていたこと間違いなし、です。

 たとえば作画。最終巻の特別付録として永井豪氏をはじめとする弟子の方々の00戦士9人を描いたピンナップがあるのですが、正直なところその低クオリティぶりにちょっと呆然としました。
 本編を見ても、キャラクタの作画クオリティの低さが気になります。それも巻が進むにつれてひどくなる。裏書きをみるとメインライターが第一巻のみ早瀬マサトで、第二巻からはシュガー佐藤・早瀬マサトとなっています。
 第一巻だけは冒頭の石ノ森少年の上京から始まる感動的なプロローグをはじめとして最も違和感がなかった事から類推すると、早瀬氏が石森プロの中では最も高い実力の持ち主だったのでしょう。どういう事情かは分かりませんが、ファンとしては最後まで早瀬氏にイニシアチブを取ってほしかったです。

 場面構成やコマ割り、そして一番の肝の戦闘場面にしても同様。「天使編/神々との闘い編」に比べるとその差は歴然としていますし、その後の「ドラゴンボール」等の進化した迫力ある戦闘場面に慣れてしまった目で見ると、第4巻なんかは下手なスプラッター漫画にしか見えません。

 ストーリー展開にしても同様。第一巻~第三巻において、一巻につき三人ずつの00戦士が「」らしき存在と遭遇するエピソードが積み重ねられていくあたりは遺作を引き継いでなかなか充実していると思いました。が、このペースで話を進めていくのであれば00戦士が揃って神々と対決するにはその倍、全9巻くらいが必要だったのではないかと思います。

 しかし残されたのはあと二巻のみでした。スプラッター映画のごとくぼろぼろにされ、再改造された00戦士が対抗できたのは所詮雑魚キャラのみ。真の強敵には恐ろしいほどの進化を遂げた「Psyボーグ」形態になっても敵いませんでした。

 例えばドラゴンボール孫悟空が「超サイヤ人」に進化するのは真の強敵を倒す為であって、そこに初めてカタルシスが生まれます。これが雑魚キャラ相手では面白くもなんともありません。そこのところがわかっていないのかなあ、とため息をつくことしきりでした。

 それにしてもラスボス的キャラがイエスブッダとは一体どういうことか?ムー大陸を中心とした環太平洋文化圏の神々が敵の真の正体ではなかったのか?とか言う前に二人とも人間なんですけど。。。思わず中村光の「聖☆おにいさん」を思い出して失笑してしまいました。

 最後に001が真相を語るシーンもサンドウィッチマン富澤風に言えば

何言ってんのかよくわかんない

009の台詞を借りれば

何が善で何が悪なのか。。。僕たちは一体誰がために戦っていたのか

とぼやきたくもなる「今更そんなこと言われても」的展開で、とにかく自己犠牲精神で人類を救うべく最後の手段を選択する001,003,009。

 最後のカラーページに至ってようやく真の平和が訪れますが、これが「どの世界」なのかは分かりません。とにもかくにも9人が切に望んでいた姿に戻させてあげることがこの物語の、そして残されたスタッフの真の目的だったのだな、と(かなり無理やりにですが)納得しました。

 さようなら、ギルモア博士と9人の戦士たち。そして天国の石ノ森章太郎先生。