ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

僕だけがいない街(4) / 三部けい

僕だけがいない街 (4) (カドカワコミックス・エース)

 この作品を紹介するのは初めてですが、KindleでDLしているうちにすっかりはまってしまいました。幼女殺害の事件報道が絶えない現代社会の病根をタイムスリップと推理劇形式で抉り出していく展開が注目を集めている三部けいの「僕だけがいない街」です。気がつくともう第四巻が出ていました。

 初めてのレビューですのでこれまでの展開を簡単にまとめておきます。

・ 時は2006年。主人公は売れない漫画家・藤沼悟。漫画では食っていけないためピザ屋のアルバイトをこなしながら日々を過ごしている。

・ 彼は「再上映(リバイバル」と呼んでいる特殊能力を持っている。それは、その能力が発現した前後で起こる「事件」の原因が取り除かれるまで、「事件」の直前の場面に何度もタイムスリップしてしまうというもの。自分の意思とは関係なく発現するので、悟はこの能力を嫌っていた。

・ その「再上映」が原因でトラックにひかれた悟の看病のため、北海道から母がやってくる。母と悟は元々は北海道に住んでおり、母はテレビ局アナをしていた。

・ 二人が北海道で暮らしていた18年前、小児連続誘拐殺人事件があり、悟の小学生時代にクラスメイト雛月加代もその犠牲者の一人となってしまった。加代は母とその愛人に虐待されており、悟はこの二人を疑っていたが、悟もよく知っていた善人にしか見えない男が犯人として逮捕された。しかしこの事件を取材していた悟の母は犯人に疑問を持っていた。

・ そして現在において謎の真犯人の存在が浮かび上がり、それを知った悟をつけ狙うようになる。そしてなんと母が殺害されてしまう。そして狡猾な犯人によりその容疑がなんと自分自身にかかってしまう。

・ 小学生時代に「再上映」した悟は、雛月加代殺害を阻止しようとするが、失敗に終わる。

・ 現在に戻った悟はピザ屋の同僚の女の子アイリの協力で何とか逃げ続けるが、そのアイリも謎の真犯人の標的にされてしまう。そしてついに悟は逮捕されてしまう。

 様々な伏線が複雑に張り巡らされたこれまでの展開は一級の推理劇となっています。

 そして本巻では、逮捕直後悟が二度目の「再上映(リバイバル)」に成功して小学生時代に戻り、前回失敗した同級生雛月加代殺害事件の阻止に再び挑みます。

 前回失敗している経緯を知っているだけに、悟は必死に加代を守ろうと奔走します。彼をはじめとする子供たちの懸命の努力にエールを送りたくなること必至。そして、主人公の母親を除いてどの大人を信用していいのかわからない展開にハラハラドキドキ。

 もちろん結果は伏せておきますが、虐待していた加代の母の母、すなわち加代の祖母の登場に涙する場面もあり、今回は感動の展開に。。。

 さて、タイムパラドックスというSFの鉄の掟を破ることはできるのか?今から次巻が楽しみです。