ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

言の葉の庭

Kotonoha

 拙ブログでも何回か紹介してきた、私が今最も注目しているアニメーション作家新海誠の新作「言の葉の庭」をようやく観ることができました。今春公開時に見逃していて残念に思っていましたが、ようやくJ.comのVODで公開されたので早速鑑賞いたしました。
 彼の真骨頂である映像美は健在でした。現在の日本のアニメーションの最高水準は新海誠である、とあらためて思いました。

 こんな映画こそ4Kや8Kで見たいものですが、Stereosound On Lineに今日こんな羨ましい記事が載っていました。最新のAV機器を用いた4K&5.1chのシアターで新海誠とともに鑑賞するというなんとも贅沢な企画。ご一緒させていただきたかったですねえ(^_^;)。オーディオファイルのために機器構成を書いておきましょう。

「言の葉の庭」を新海監督と観た。BDに込めた監督の"想い"をホームシアターで再現できたのか

<視聴システム>
・プロジェクター:
 ソニーVPL-VW1000ES ¥1,680,000
・スクリーン:キクチ グレースマット ¥325,500(16:9/120インチ、電動式)
・BD/HDDレコーダー:パナソニック
 DMR-BZT9300オープン価格
・AVセンター:
 ソニーTA-DA5800ES ¥273,000
パワーアンプ:アキュフェーズ
 PX-650 ¥693,000(生産終了)
・スピーカーシステム:パイオニア
  S-1EX ¥1,260,000(ペア、フロント)
  S-7EX ¥504,000(1本、センタ−)
  S-2EX ¥756,000(ペア、サラウンド)
  +CP-2EX ¥157,500(ペア、スタンド)
・サブウーファー:イクリプス
 TD725sw ¥441,000(1本)

『 2013年 日本映画 配給: 東宝映像事業部

スタッフ
監督、原作、脚本: 新海誠
キャラクターデザイン: 土屋堅一
作画監督: 土屋堅一
音楽:  KASHIWA Daisuke

キャスト
入野自由: 秋月孝雄(タカオ)
花澤香菜: 雪野百香里(ユキノ)
平野文: タカオの母
前田剛: タカオの兄
寺崎裕香: タカオの兄の彼女

 「雲のむこう、約束の場所」「秒速5センチメートル」など、繊細なドラマと映像美で国内外から人気を集めるアニメーション作家・新海誠監督が、初めて現代の東京を舞台に描く恋の物語。靴職人を目指す高校生タカオは、雨が降ると学校をさぼり、公園の日本庭園で靴のスケッチを描いていた。そんなある日、タカオは謎めいた年上の女性ユキノと出会い、2人は雨の日だけの逢瀬を重ねて心を通わせていく。居場所を見失ってしまったというユキノのために、タカオはもっと歩きたくなるような靴を作ろうとするが……。キャラクターデザイン、美術、音楽など、メインスタッフには、これまでの新海作品とは異なる新たな顔ぶれがそろう。

(映画.comより)』

 ジブリの後追い的なストーリーが気になった前作「星を追う子ども」よりは、オムニバス形式で思春期の淡い恋のほろ苦さを描いた傑作「秒速5センチメートル」に近い世界に回帰したことは私には嬉しく思われました。

 今回は「秒速5センチメートル」よりはやや年齢が上がり、15歳の男子高校生と27歳の社会人の女性の物語になっています。新海誠の初めての恋物語と紹介されていますが、恋というよりは、そこに至るまでの男女の心理の彩を繊細に紡いでいる、という印象です。キャッチコピーにも

"愛"よりも昔、"孤悲(こい)"のものがたり

とありますように、愛に至る以前の孤独「弧悲」の物語と言えましょう。やや古風な表現には、万葉集の雨にまつわる歌とその返歌が鍵となることが示唆されています。

 とは言え、上映時間が短い(46分)こともあり、ストーリーには物足りなさが残りますし、主人公の男女の設定にやや無理がある気もします。雨の日の地下鉄の電車の中が嫌いだから、雨の午前中は学校をサボることにしている、ってヲイヲイ。。。てな感じです。

 しかしそれを補って余りあるのが、何度も述べておりますように作画のクオリティの高さです。今回の別の意味での主人公である「雨」と「新宿御苑」は特に丹念に描かれています。私がどうのこうの言うより、公式HPの説明を引用させていただきましょう。

「地雨、夕立、天気雨、豪雨・・・本作では心の変化や揺れそのもののような,様ざまな雨を丁寧にアニメーションで表現。新海作品の特徴でもある美しい景色はもちろんのこと、本作で出色なのが、その景色の色味や明暗を人物の陰影にまで反映させた色彩。映画から想いが、言葉から情景があふれ出す。」

 その通り、季節や光、雨の強弱等による、新宿御苑の木々の緑、池のさざなみ、東屋の細かい変化が見事に表現された映像美は圧倒的でした。町の情景ももちろん丁寧には描かれていますが、これはどことなく既視感のある新海誠特有の世界。
 そのあたりにマニアックにこだわる方は上記Stereo On Lineのインタビューで新海誠氏自身がかなり詳しく説明されておられますのでご一読ください。

 更には雨の効果音も、様々に工夫が凝らされています。また、今回初起用のKASHIWA Daisukeによる、ピアノの透明感のある音色も美しい映像を引き立てています。

 声優も「千と千尋の神隠し」のハクでデビューし、先日紹介した「あの花」でも主人公を演じていた入野自由(みゆ)を始めとして、安定して活躍しているプロの声優を起用しており安心して観ていることができました。

 というわけで、前作に比べると商業主義的な色合いの薄い小品に回帰していますが、その分新海誠の映像美を堪能できる佳作です。本当に良質なホームシアターにお邪魔して鑑賞したい一品ですね。

評価: C: 佳作
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)