ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Quartette Humaine / Bob James and David Sanborn

Quartette Humaine
  いつもオーディオのリファレンスソースにしているFourplayのボブ・ジェームスの新譜「クァルテット・ヒューマン」です。グラミー賞を獲得し大ヒットしたアルバム「ダブル・ヴィジョン」以来27年振りにデヴィッド・サンボーンと組み、更にはベテランドラマーのスティーブ・ガッドと新進気鋭のベーシスト、ジェームス・ジナスを加えたカルテット編成での演奏です。
 それも驚いたことに、ボブ・ジェームスデヴィッド・サンボーン共にフュージョンのイメージの強いミュージシャンですが、完全なアコースティック・ジャズのアルバムになっております。

1. You Better Not Go to College 
2. Geste Humain 
3. Sofia 
4. Follow Me 
5. My Old Flame 
6. Another Time, Another Place 
7. Montezuma 
8. Genevieve 
9. Deep in the Weeds

Bob James: piano
David Sanborn: alto,soprano,sopranino saxophones
Steve Gudd: drums
James Genus: bass
Javier Diaz: percussion on 9

 アコースティック・ジャズと言っても4ビートやインプロといったモダンジャズの定石からは外れ、音楽的にはボブ・ジェームスが完全に仕切っている所謂コンテンポラリー・ジャズの範疇に属する演奏です。が、

「そんなことどうでもいいから俺たちの音楽を楽しんでくれ」

と言わんばかりの、ノリノリでグルーブする所はばっちりと決め、しっとりと聴かせる所は聴かせる、ツボを心得た円熟の演奏です。

 相変わらずデヴィッド・サンボーンのサックスは良く歌いますし、ボブ・ジェームスの流麗なピアノも聴き所いっぱい。ガッドジナスリズムセクションも強力です。一曲目冒頭のガッドのブラッシングとジナスのウッド・ベースのフィンガリングでいきなりノックアウトされそうになりました。
 そしてそれをまとめるボブ・ジェームスのアレンジはさすが。個々のメンバーの見せ場をちゃんと用意した上でまとまりのある曲に仕立て上げるあたりはもう名人芸と言っていいほど。だから、聞き飽きることが無いです。

 また私が購入したのは輸入盤ですが、録音も素晴らしい。個々の楽器のよさを最大限に引き出そうという意図が見てとれます。「泣きのサンボーン」と言われる情感溢れるサックスの音色、ボブらしいエレガントで流麗なピアノのタッチ、ガッドの熟練のブラッシング、低音の響きの素晴らしいジナスのウッドベース、といった個々の楽器の音色や質感の素晴らしさが余すところ無くとらえられていますし、全体のバランスも良好ですので、オーディオのリファレンスソースとしても好適な高音質盤だと思います。

 ちなみにカバー・アートは「Philosophy of Flight」というボブ・ジェームス自身の作品だそうです。才人ですねえ。