ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

図書館戦争

Toshokansensou
  人気作家有川浩の代表作満を持しての実写化「図書館戦争」を観てきました。原作は有川浩の得意ジャンルである「甘々ラブコメ」と「自衛隊モノ」を上手く組み合わせた秀逸なラノベ・シリーズでした。私も大好きで今回の実写化を楽しみにしていたのですが、ラブコメの部分を適度に抑制しアクション・シーンを重視したことにより、実写化でも違和感なく見られる、よい出来栄えの作品に仕上がっていました。
 また、おそらく有川浩さんのご希望なんでしょう、原作をとても誉めておられた故児玉清さんへのオマージュにもなっており、それにもほろりとさせられました。

 

『 2013年 日本映画 配給:東宝

監督: 佐藤信
原作: 有川 浩 「図書館戦争

キャスト: 岡田准一榮倉奈々田中圭、福士蒼太、西田直美 他

 ベストセラー作家・有川浩の代表作で、コミック化、アニメ化もされた人気シリーズ「図書館戦争」を、岡田准一榮倉奈々の共演で実写映画化。国家によるメディアの検閲が正当化された日本を舞台に、良書を守るため戦う自衛組織「図書隊」の若者たちの成長や恋を描く。あらゆるメディアを取り締まる「メディア良化法」が施行され30年が過ぎた正化31年。高校時代に図書隊に救われ、強い憧れを抱いて自身も図書隊に入った笠原郁は、鬼教官・堂上篤の厳しい指導を受け、女性隊員として初めて図書特殊部隊(ライブラリータスクフォース)に配属される。個性的な仲間に囲まれ業務に励む郁は、かつて自分を救ってくれた憧れの隊員とは正反対のはずの堂上にひかれていく。監督は「GANTZ」2部作の佐藤信介。(映画.comより)』

 今回注目していたのは何と言ってもキャスティングです。「ダ・ヴィンチ」誌上で異例の読者投票による仮想誌上キャスティングが行なわれたそうですが、その結果で主人公の堂上教官に岡田准一を起用すると聞いた時に、もうこの映画はあらかた成功したも同然だな、と思いました。
 彼に関しては、麻生久美子と共演した「おと な り」を観てジャニーズの中でも卓越した演技力に驚き、更にはSPシリーズで肉体を鍛え上げ格闘術をマスターした根性に感嘆しました。
 惜しむらくはこれでもう少しタッパがあればなあ、と余計なお世話ながら残念に思っていたのですが、今回はそれが幸いしました。原作がヒロインより背の低いチビという設定であり、榮倉奈々との凸凹コンビぶりが見事にはまっておりました。SPシリーズで鍛え上げたアクションシーンも見事でしたし、大画面のアップにも十分耐えられる演技力も遺憾なく発揮されており、本当に彼のために用意されたかのような役柄でした。

 ヒロインの新人図書隊員笠原郁役の榮倉奈々もまずまず原作のイメージを損ねない適役だったと思います。大柄で運動神経抜群だが図書館業務などの頭脳系には弱い、性格は明朗快活で精神的にもタフだがやや、というかかなり無鉄砲、そして大切な本を検閲から守ってくれた図書隊員を一途に思い続けている、という役柄をそつなくこなしていたと思います。欲を言えば昔の志穂美悦子並みの身体能力とアクション技術があれば言うことなかったですが、それはまあ欲張り過ぎでしょう。

 更には笠原郁のルームメイト、クールで頭脳明晰な飛び切りの美女柴崎麻子役の栗山千明も見事に原作のイメージ通り。手塚光役の福士蒼太、小牧幹久訳の田中圭を含めたメインキャスト五人組はよくもまあこれほど、と感心させられる見事なキャスティングでした。

 一つだけ不思議だったのが、栗山千明が「特別出演」となっていたこと。特別出演といえば格上の俳優が少しだけ顔見せする出演の仕方だと思うのですが、今回の栗山千明は主要キャラクタの一人で出番も多く、格上というわけでもありません。どうしてなんでしょうね?

 閑話休題、キャスティングが成功すればあとは脚本と演出ですが、冒頭で述べたように原作の魅力の一つである漫画チックな恋愛模様を敢えて抑制し、自衛隊の全面協力を得て撮られた迫力満点の戦闘シーン、更には岡田准一君の鍛え抜かれたアクションシーンを前面に押し出したことにより、原作を読むより、更にはアニメDVDを観るより、ずっとシビアに思想弾圧や銃撃戦の恐ろしさが画面から伝わってきました。
 このあたり、Gantzシリーズを撮った佐藤信監督の得意分野なのでしょうが、GANTZと異なり実写化にありがちな荒唐無稽感を見事に払拭していた分、より見事な演出だったと思います。

 そしてラストシーン。今の時期にネタバレはまずいので詳細は述べませんが、上手く伏線を回収し過度に甘くならないスマートな落とし前のつけ方であり、心地よい余韻を残してくれました。安易にJ-POP歌手に頼らない重厚なエンドテーマも、その余韻を十分に堪能させてくれました。

 ラノベの実写化ということでそんなに大した映画じゃないだろう、と思われる向きもあるかもしれませんが、意外にも、というと失礼ですが、予想以上の秀作となっています。GWに何か楽しめる映画を、と考えておられる向きにはピッタリの映画だと思います。

評価: B: 秀作
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)