ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Miss KEIKO MIZUKOSHI ONE NIGHT / 水越けいこ

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 長年探し続けていたアナログ・レコードをついに手に入れました。1984年に発売された、水越恵子初のライブアルバムで、渋谷公会堂大阪厚生年金ホールでのライブが収められています。ソロ・デビューして5年目、歌唱力に一段と磨きがかかり、スマッシュ・ヒットも続いていた彼女の最盛期とも言える時期の素晴らしい歌唱を十分堪能することができます。

Side-A

1. 生まれ変わる為に
2. 渚にかえって…
3. 踊り子
4. リンダ
5. 街
6. メドレー: エアーメイル ~ 東京が好き ~ タッチ・ミー・イン・ザ・メモリー ~ ほほにキスして ~ ブルースカイロンリー ~ 愛するミュージック

Side-B

7. あ・な・た・に
8. フィーリング・ブルー
9. 最後は愛して
10. トゥー・ファー・アウェイ
11. ラヴ・ソング・フォー・ユー

Miss KEIKO MIZUKOSHI ONE NIGHT 当時私はこのアルバムをカセット・アルバムで購入してとても気に入り、カセットデッキウォークマン、カーステとあらゆる場所で聴いていました。随分長い間所持していた記憶があるのですが、悲しいかなカセットテープですのでハードな使用のうちにケースはなくすわ傷はつくは、果てはテープ自体が伸びてピッチが狂うわでついにダメになり、やむなく破棄してしまいました。その頃にはLPもCDも廃盤になっており、中古店でもなかなか見つからず、半ばあきらめていました。

 しかし、「あ・な・た・に」という切ないバラード曲があるのですが、「Like You」に入っているオリジナル曲よりこのライブ・バージョンの方が良かった、という思いが捨てられず、いつかもう一度聴きたいとずっと思い続けてきました。

 今回ようやくこのLPがアマゾンに出品されているのを発見し、結構なプレミアがついているのにびっくりもしたのですが、この機会を逃すまいと思い切って購入しました。そして本日届いたので早速開封してみますと、盤もジャケットも良好な状態でまずは一安心。オーディオを暖機運転しておいて、一仕事終えて、いよいよ盤面に針を落とします。「あ・な・た・に」を聴きたいのをぐっと我慢してまずはA面から。

 記憶の中であまりにも美化されすぎてはしないかと心配でしたが、杞憂でした。傑作「アクエリアス」の冒頭を飾る名曲「生まれ変わる為に」の冒頭の一節

「命落としてもあなたについて行けそう」

で鮮やかにこのアルバムを聞きまくっていた頃の感覚が蘇ってきました。ライブですのでオリジナルでの凝ったアレンジは聴けませんが、彼女の歌唱力の素晴らしさ、ライブならではの迫力がひしひしと伝わってきます。バックバンド「Better Days」の演奏もアレンジにはさすがに時代を感じざるを得ませんが折り目正しい堅実な演奏で、特にエレベのうねりが心地よい。やはり記憶どおりの素晴らしいライブアルバムであると確信しました。

 続く「渚にかえって・・・」も明らかにオリジナルより素晴らしい。「踊り子」「リンダ」「」と私にとっては懐かしいナンバーが快調に続き、MCのあとA面を締めくくるのはシングル・カット曲のメドレー。ヒット曲のサビを見事につないだアレンジも見事なら、崩したり流したりせずに丁寧に歌いこむ歌唱も素晴らしい。楽しげに歌う彼女の姿が見えてきそうな気がします。

 そしていよいよB面の一曲目「あ・な・た・に」です。イントロに続いて滑り込む冒頭の

「あなたの後姿をぼんやりみつめている」

の一節で鮮やかに記憶が蘇り、鳥肌が立ちました。正直なところ、全体的には記憶よりはあっさりとした歌唱でしたがそれでも彼女の歌唱力は素晴らしく、それに加えてギターソロ、シンセソロも見事で、やはりこのバージョンは素晴らしいと思います。

 それ以上に驚いたのが続く「フィーリング・ブルー」の出来栄え。これもオリジナルを凌駕していると思います。そして本チャン・ラスト曲の「最後は愛して」のバンドとしてのかっちりとした演奏と終了後のオーディエンスの盛り上がり。そして編集してあるとは思えないほどシームレスに続くアンコールの拍手に迎えられて再登場するけいこさん。

 「多分この曲がリクエストが一番多いと思います、久しぶりに歌います」というMCの後流れてくるのは「アクエリアス」所収で多くのカバー曲を生んだ彼女のキラー・チューン「トゥー・ファー・アウェイ」のイントロ。そして抑え気味の伴奏をバックに彼女の歌唱がぽっかりとスピーカーの間に浮かび上がり、マイク録音の適度なホールトーンが会場で聴いているかのような錯覚さえ起こさせてくれます。ついにこらえきれずちょっとウルウルしてしまいました。

 最後はいかにもライブらしい「ラブ・ソング・フォー・ユー」で締めくくられます。

 その後結婚・離婚を経てダウン症のお子様を育てながら今も元気で頑張っておられる彼女の姿にも頭が下がりますが、このライブの頃の彼女もとても素敵でした。愛蔵盤として大切にしたいと思います。