ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

金聖響のマーラー7番@兵庫県立芸術文化センター

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 以前キリ番企画で取り上げたことのあるマーラー7番を、金聖響指揮芸術文化センターオーケストラ(PACO)演奏で聴いてきました。難解というイメージの強いこの曲一本だけというプログラムにもかかわらず、大ホールは超満員。いかに通年チケット会員が多いとは言え、このセンターの集客力の高さをあらためて認識させられました。演奏もなかなか充実していて楽しめました。

「 第52回定期演奏会

日時: 2012.5.27 午後3時開演
兵庫県立芸術文化センター KOBELCO大ホール

マーラー交響曲 第7番ホ短調

指揮: 金聖響
演奏: 兵庫県立芸術文化センター管弦楽団

 まず会場に入って驚いたのが、ステージに所狭しとおかれた椅子と楽器。全く空きスペースがありません。コントラバスは6台、ハープが2台、最後列最上段には端から端までシンバルやティンパニ、チャイナシンバルなどが並んでいます。プログラムでオケの人数を確認してみると、なんと92人!あらためて7番のスケールの大きさを実感しました。定時になって団員が揃うとさすがに圧巻でした。

 そして軽やかに金聖響が登場、イケメンの若手指揮者だけあり、人気は抜群、盛大な拍手が起こります。そして一息の静寂のあと、第一楽章が始まりました。

第一楽章:ロ短調ソナタ形式テノール・ホルンが「自然が吠えるのだ」とコメントしたという主題を演奏して幕を開け、アレグロの主部では行進曲風に。静かになってヴァイオリンが第2主題セクションを演奏し、それらを粗大に音楽が展開されていく。(パンフレットより)

 難解なこの曲にあって比較的分かりやすく親しみやすいロマン派らしい構成の楽章ですので、楽しんで聞けました。特に冒頭の珍しい楽器テノール・ホルンの音色と響きが美しく印象的でした。キリ番企画のときにあれほど聴き込んだのにこの楽器の魅力を理解していなかったのは不明の至りです。やっぱり生で聞かなくてはだめですねえ。金聖響も終了後のアプローズでまず最初にこのテノール・ホルンの方を立たせましたので、快心の出だしだったのでしょう。
 その金聖響の指揮ですが、奇を衒ったところのない実に自然な演奏をさせ、各楽器の持ち味の出し方がうまい方だなと思いました。

第二楽章:ハ長調ロンド形式。「夜曲」と題されたこの楽章は、静寂に響き渡る信号ラッパのようなホルンの主題に始まり、やや不気味な行進(主部)が始まる。主部の合間に、チェロによる幸福な雰囲気の主題や、木管楽器が、まるで夜の闇に騒ぎ立てる鳥のような音楽を演奏する。(パンフレットより)

 いよいよここからが睡魔との勝負(笑、馴染みにくい旋律や展開の第二楽章。しかし金の正確な指揮の下、各楽器が統制の取れた音を奏でていく様を目で追っていると、意外にも退屈しませんでした。
 が、私はバルコニー席後方で一階フロア全体を見渡せる席にいたのですが、早くもちらほらと居眠りする人の姿が。。。

第三楽章:ニ短調、3部形式。「影のように」と題された不思議なスケルツォ夜の音楽、または死の香りが漂ってくるダンス。2本のオーボエにヴァイオリン・ソロが絡むトリオで、やや希望が見える。(パンフレットより)

 さていよいよ最難関の第三楽章。たしかに分かりにくい楽章で旋律も不気味なのですが、指揮の効果なのか、それともPACOの特徴なのか、音は意外にも清澄で不協和音もそれほど耳障りではありません。展開が分かっているのでこれも意外にも楽しめました。
 が、、、やはり会場を見渡すと爆睡者が増殖、私の周囲でも寝てる人だらけとなっておりました。やっぱりこの楽章はこうなるんですねえ~。

第四楽章:ヘ長調、3部形式。ギターとマンドリンの音色が独特の「夜曲」甘いヴァイオリン・ソロで始まる繊細な音楽は、各楽器のソロあり、音色の微妙なブレンドありで、さながらオーケストラによる室内楽のように響く。(パンフレットより)

 第二楽章に比していかにもロマンティックな「夜曲」らしい楽章。コンマスのヴァイオリン・ソロも良かったですが、やっぱりギターとマンドリンに期待してしまいます。何人くらいいるのだろうと思ったら、なんとたった一人ずつ。でもオケには珍しいこの楽器を堪能することができました。

第五楽章:ハ長調ロンド形式ティンパニの乱打とファンファーレで始まるこの楽章は、それまでの重厚さや神秘的な雰囲気を帳消しにするような、祝祭的・熱狂的な音楽。まるでいろいろな映画がつぎはぎされたように場面が変化して、音楽のジェットコースターに乗せられたような気分にもなれる。(パンフレットより)

 「夜の歌」という副題のついたこの交響曲にあって唯一の「昼」。キリ番企画のアンケートでTak Saekiさんに

「第7番に関しては終楽章のずんどこどんどんをどう処理するかが全てだと勝手に思ってます。」

という名言をいただいたこの楽章。もうノリノリで楽しませていただきました。家内から

「勝手に指で指揮するし、リズムに合わせて体をゆするし」

と終了後ぼやかれてしまったほどでした。
 まあそれほど出来が良かったですね。特に打楽器に注目していましたが、それまで控えめだったチャイナシンバルはバシコ~ンと叩かれるし、ティンパニの連打は強烈だし、カウベルは左右両端でステレオでなるし(w、爽快でした。そしてシンパルの合図とともにフィナーレを迎え、トゥッティで怒涛のエンディングを迎えるあたりは、総勢92人という大構成の迫力を見せつけられました。 

 途中あれほど寝とったのに(w、と思わないでもない「ブラボー」と賞賛の拍手の渦が会場全体に響き渡り、金聖響もやりつくした達成感に溢れておられました。アンコールはなし。この7番にかけた意気込みの分かる一発勝負、とくと拝聴できて満足でした。