ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

TIME

Time
 斬新なアイデアが話題のSF映画TIME」を観てきました。超映画批評の前田有一絶賛していたので楽しみにしていましたが、う~ん、それほどのもんかな?というのが正直な感想でした。

『原題: In Time   2011年アメリカ映画
配給: 20世紀フォックス映画

監督: アンドリュー・ニコル

キャスト: ジャスティン・ティンバーレイクアマンダ・セイフライドキリアン・マーフィ、ビンセント・カーシーザー、オリビア・ワイルド 他

ガタカ」のアンドリュー・ニコル監督が、ジャスティン・ティンバーレイクアマンダ・セイフライドを主演に迎えて描くSFアクションサスペンス。科学技術の進歩によりすべての人間の成長が25歳で止まり、そこから先は左腕に埋め込まれた体内時計「ボディ・クロック」が示す余命時間だけ生きることができる近未来。貧困層には余命時間が23時間しかない一方で、富裕層は永遠にも近い時間を手にする格差社会が生まれていた。ある日、ひとりの男から100年の時間を譲り受けた貧困層の青年ウィルは、その時間を使って富裕層が暮らす地域に潜入。大富豪の娘シルビアと出会い、時間監視局員(タイムキーパー)の追跡を受けながらも、時間に支配された世界の謎に迫っていく。(映画.com等より)』

 遺伝子操作により人間が25歳を境にして成長・老化が止まる社会、貧困層社会は、せっせと日銭を稼がないとあっという間に余命が尽きて突然死したり、ちょっとでも多くの余命を持っていると強盗に襲われたりし、おまけに「時間」のローン金利や物価はどんどん上がっていく悲惨な毎日です。一方富裕層社会は永遠にも等しい[「時間」=生命を手に入れており、カジノでは何千年という「時間」を賭けでやり取りし、高級ホテルのスイートルームは一泊何ヶ月(正確な数字は忘れてしまいました)という時間を必要とします。また、主人公の出会う富豪の家族は何人ものボディガードが常に付き従い、「時間」を守っています。

 このあたりの描写が今のアメリカの明らかに行き過ぎていると思える資本主義社会を皮肉っているのは良く分かるし、「金」を「時間」に置き換えた社会の描写は確かにとても面白い。しかし、そのからくりに慣れてしまえば、中盤以降は貧民のジャスティン・ティンバーレイクと大富豪の娘のアマンダ・セイフライドの逃避行のアクション映画に過ぎなくなってしまいます。まあ活劇映画はハリウッドの十八番で、それを今人気のある二人にやらせればアメリカの観客は大喝采、という目論見はある程度成功しているのでしょうが、純粋にアクション映画としてみれば、ややしょぼい感じは否めません。

 さて、貧民だったジャスティンは超格差社会に怒りを覚え、富裕層のアマンダはただ時間を消費するだけの息の詰まるような怠惰で窮屈な社会に嫌気がさし、逃避を続けながら富裕層の莫大な「時間」=「資本」を強奪して、貧民に分け与えようとします。

 終盤100万年というとてつもない「時間」を盗み出した二人の行動は体制の崩壊という新たなカオスにもたらすかに見えます。しかし考えてみれば100万人に分け与えれば一人当たりたった1年ですし、究極まで富を再分配するためにまた新たに時間を強奪することをたった二人だけでいつまでも続けられるとはとても思えません。

 にもかかわらずラストシーンでボニーとクライド張りにかっこよく車から降り立ち、巨大銀行を襲いに行く彼らの姿で幕を閉じられてしまうと、えっ、それでその先どうなるの?という中途半端感が拭えませんでした。

 というわけで羊頭狗肉感の拭えないSF映画でしたが、アイデアはいいしその世界の描写はとても面白かったと思います。ジャスティンとアマンダの二人のファンにも二人が存分に活躍してくれるのでお勧めです。

評価: D: イマイチ
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)