ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

アンダルシア 女神の報復

Andulcia
  織田裕二外交官黒田康作を演じる最新作「アンダルシア 女神の報復」です。前作映画「アマルフィ」は玄人筋にはボロボロの評価、TVドラマは視聴率的に惨敗と苦難の道を歩んでいるシリーズですが、個人的には黒田康作という「踊る大捜査線」の青島君とは正反対の寡黙なキャラに注目して観ておりました。そして織田裕二はぶれる事なく新作でもこの黒田康作を演じております。

『2011年 日本映画
製作:フジテレビジョン他 配給:東宝

監督:西谷 弘 
脚本:池上純哉 

キャスト:織田裕二 黒木メイサ 戸田恵梨香 福山雅治 伊藤英明

映画『アマルフィ』、TVドラマに続いて織田裕二外交官・黒田康作を演じるシリーズ第3弾。スペイン北部に位置するアンドラ公国で起こった日本人投資家殺害事件。調査のため現地を訪れた黒田が、巨大な国際犯罪の闇に立ち向かう。黒木メイサが物語のカギを握るエリート銀行員を、伊藤英明が黒田と同じ事件を追うインターポール捜査官を演じる。(ぴあ映画生活等より)』

 これだけ大規模な海外ロケを敢行した大スケールのサスペンス・ドラマは、いかに活況の日本映画界でも年に何本も撮れるものではないでしょう。そして金をかけた分、貧相に見えるところが殆ど無い、隙の無い映画作りをしているところにも敬意を表します。
 黒田康作という織田裕二の新キャラクターもほぼ確立されたといってよいでしょう。いろいろと批判もありますが、やはり彼は日本映画界には欠かせない逸材であり、映画館の大画面に映える数少ない日本俳優の一人だと思います。

 まあその上で、敢えてこの映画の欠点をあげるとすれば、妙に間延びして不得要領な脚本でしょうか。

・ ハリウッドのように息つく暇も与えずは襲ってこず、しかも最後は何と効果音だけで画面にも出してもらえず一網打尽にされてしまうちっとも怖くないトホホな闇の組織、
・ 主役三人(織田裕二黒木メイサ伊藤英明)のキャラを皆暗くしてしまったので、福山雅治がいくらおちゃらけても、会話で細かいジョークを入れてもちっとも盛り上がらない展開、
・ 一番重要な「ブツ」のこれは有り得ないだろうと溜息が出るようなぞんざいな扱われ方、
・ 謎の人物の意外な正体を最後に明らかにするのは御約束にしても、その動機のあまりの卑小さ、
・ あいも変わらずの上からの圧力とそれに逆らっても必ずお許しが出るマンネリズム
・ 主人公が死なないのは分かりきっているのでちっとも心配にならない絶体絶命場面、

ぱっと思いつくだけでこれくらいのところでしょうか。分析的に映画を観る方が真剣に検討されたらまだまだあるかもしれません。

 さて、俳優陣はまずまずの演技をしていたと思います。ただ、黒木メイサという方はとても美人である事は論を待たないのですが、正直に申し上げて、個人的に、あくまで個人的には観ていてつまらない女優さんです。あまりスクリーン映えがしないというか、演技がTVドラマ止まりというか。。。
 伊東英明は「死ぬ死ぬ詐欺」と言われつつ人気の高い「海猿」シリーズとはがらりとイメージを変えて、抑制の効いた演技が良かったと思います。敢えて言うと、タッパがあってスクリーン映えする体型だけに、主役の織田裕二が見劣りしてしまうと言う意味でミスキャストだったかも。。。

 いやあ、あまり褒め殺ししてはいけないのでこの辺で筆を置きましょうか。どこが褒めてんねんと言われそうですが。
 まあとにもかくにも織田裕二は日本映画界において貴重な存在であり、このシリーズもどうせ作るならこれくらいの派手なスケールで作り続けていただきたい。そしてどうせならハリウッドばりの息もつかせぬ、小賢しい理屈は抜きのサスペンス・アクションにしたほうが良いのではないかと思います。

評価: D: イマイチ
(A: 傑作、B: 秀作、C: 佳作、D: イマイチ、E: トホホ)