ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

BILLY BAT(5) / 浦沢直樹

BILLY BAT(5) (モーニングKC)
 第4巻のレビューで「Billy Batは裏・火の鳥か?」なんて珍説を開陳しておきながら、5巻が出たのを見過ごしてました(大汗。ちなみに発売日は昨年11月22日、この日はケネディ大統領暗殺の日です、凝った事しますね。

『オズワルドに最初に課せられた使命は、ケネディ暗殺を目論む男の暗殺!? 一方、大統領暗殺の歴史的事実を予知したケヴィンは、その歴史を変える方法をビリーから授かるが……!! (AMAZON解説より)』

 冒頭にポパイのパターンをビリーバットに置き換えた、毒にも薬にもならないいかにも子供向けのカトゥーンが登場します。さすが浦沢直樹、上手いもんです。
 当然ながらこれは主人公ケヴィン・ヤマガタビリーバットではなく、彼が日本に滞在中に謎の会社に権利を買い取られ、アシスタントだったチャック・カルキンが描いた(これには本巻のラストで疑問が呈されますが)人気シリーズの一話。このシリーズによりチャック・カルキンは莫大な財をなし、ビリーバットは国民的アイドルキャラクターになっています。
 ケヴィンは帰国後この状況に愕然としますがどうしようもなく、ファンクラブのある西部の町で細々と自らのビリーバットを書き続ける。それも本物のビリーバットに悩まされ続けながら。そしてその内容は大統領暗殺を示唆したものだった。。。

 というところで前巻の最後の脱出劇につながるわけですが、ビリーバットの教える暗殺劇の場所はダラス。

 そのダラスに転勤のため車で向かうカップルが一組。以前登場した白人男性と黒人女性の夫婦です。当時はマーチン・ルーサー・キング牧師を中心とした黒人公民権運動のさなかで、彼らが旅するディープサウスは当然ながら危険極まりない地帯であるわけで、彼等もKKKの黒人リンチに遭遇し、大変な苦境に立たされます。

 そして、前巻からダラスに滞在しているオズワルド。本巻の時点ではまだケネディを崇拝しており、彼もビリーバットに悩まされています。

 そのようなわけで、いろいろな時代場所を描いてきた本作も少なくともアメリカ編ではケネディ暗殺の起こるあの年のダラスに向かって収斂しつつあります。この先どのような展開が待っているのか、次作が楽しみです。願わくば凝りすぎて展開が遅くならないよう、浦沢・長崎両氏にはお願いしたい(笑。