バロック・ヴァイオリンの第一人者ジュリアーノ・カルミニョーラが、兵庫県立芸術文化センターにやってきました。ヴェニス・バロック・オーケストラとともにピリオド楽器(古楽器)演奏で四季全曲を演奏するという美味しい演目がメインでしたが、噂どおり型破りで結構派手なパフォーマンスを楽しませていただきました。
Date: Nov. 23th., 2010 14:00-
Place: 兵庫県立芸術文化センター
ヴァイオリン ジュリアーノ・カルミニョーラ
弦楽合奏 ヴェニス・バロック・オーケストラ(VBO)
プログラム:
アルビノーニ:弦楽と通奏低音のための4声の協奏曲 ニ長調 op.7-1
ガルッピ:弦楽と通奏低音のための4声の協奏曲 ト短調
タルティーニ:弦楽と通奏低音のための4声のソナタ第3番 ニ長調
ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲第10番「狩」
ヴィヴァルディ:ヴァイオリン協奏曲第5番「海の嵐」
intermission
ヴィヴァルディ:「四季」全曲
encore: 3曲、最後は「夏」
『 遂にジュリアーノ・カルミニョーラとヴェニス・バロック・オーケストラによる、ヴィヴァルディの「四季」全曲演奏会が実現します。
カルミニョーラとヴェニス・バロック・オーケストラの「四季」は、地位や名誉欲など一切なかった遅咲きのカルミニョーラが48歳で世界デビューを果たした際、名声を手に入れた代表的な作品のひとつです。“赤毛の司祭”ヴィヴァルディと同じく、誰もが芸術家を志したくなるようなヴェニス独特の空気と水を何世代にもわたって存分に吸収し、内面化けるしてきた彼らにしか演奏することのできない、紛れもない本物のヴィヴァルディの「四季」。しかも、プログラムの前半には、ヴィヴァルディと同じく、ヴェニス出身の作曲家の作品が据えられています。
イタリア・バロック音楽の系譜をたどる、絶好の機会が到来します。(兵庫県立芸術文化センターHPより)』
最初の三曲、アルビノーニ、ガルッピ、タルティーニはVBOのみでの演奏。1stヴァイオリン4名、2ndヴァイオリン3名、ヴィオラ2名、チェロ、コントラバス、アーチリュート(6弦と12弦のダブルネックの胴体がマンドリンのような楽器)、チェンバロが各1名、計13名で構成されていました。この3曲はバロックらしい端正で静かな演奏です。古楽器のキー、音色を確認し、楽しませていただきました。
そしてヴィヴァルディのヴァイオリン協奏曲からいよいよカルミニョーラの登場。ジャケット写真などでお馴染みのイメージどおり、精悍で男っぷりの良い方で、風を切って登場されました。ボローニャ貯蓄銀行財団が彼のために購入し貸与しているストラディヴァリ「バイヨー1732」の音色を堪能しつつ、オペラグラスでじっくり拝見もさせていただきました。このヴァイオリンは数あるストラディヴァリの中でも珍しく一度もモダン楽器として手を加えられた事のない17世紀イタリアそのままの楽器だそうです。
バロック楽器と言うと素朴で音量もそれほどでないイメージがありますが、彼の弾くバイヨー1732からはモダン楽器に勝るとも劣らない艶のあるそして思いの他大きな音が出ていました。ストラディヴァリ自体の能力とともに、男らしい強い弾き方をするカルミニョーラの実力でしょう。
カルミニョーラの動作は確かに躍動的ですが、音的には「狩」「海の嵐」の二曲は比較的堅実にまとめていました。ここで一旦休憩。
そしていよいよ「四季」です。もう「春」からアゴーギク、デュナーミクを効かせた情熱的・躍動的で楽しい演奏が展開されていきます。カルミニョーラの動作は派手で大きくテンポを目まぐるしく変化させていきます。擦弦音が大きくとも多少不協和音が混じろうとお構い無しにグイグイ演奏を引っ張っていきます。こんな自由な解釈の四季は初めてでした。
特に「夏」のアレグロやプレストはすさまじい勢いでした。「冬」のラルゴでさえ決してラルゴとは思えないようなテンポです。とにもかくにも優雅・典雅とは対極にあるダイナミックで現代的な「四季」でした。吉田拓郎の「古い船を今動かせるのは古い水夫ではないだろう」というフレーズが思わず脳裏をよぎりました(笑。
ですから、「冬」が終了した時も本当にこれで終わりなのか観客に戸惑いがあり、拍手が2,3度途切れ、カルミニョーラがはっきりと終了の意思表示をしてから万雷の拍手でした。アンコールも3曲ありましたが、最後の3曲目が凄かった。「夏」をなんと本番以上の猛烈なスピードで。全員ノリノリのもう「曲芸弾き」と言って良い演奏です。プログレのインプロと言っていいかもしれない(笑。
以上楽しくてスリリングな2時間でした。カルミニョーラ&VBOの四季の人気の秘密が良く分かりました。