ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Billy Bat (4) / 浦沢直樹; 裏・火の鳥説開陳の巻

BILLY BAT(4) (モーニング KC)
 このブログで毎回取り上げている浦沢直樹の「Bliiy Bat」の新刊です。日本の黒い霧事件で幕を開けたこの物語も時代をポンポンと飛び越えて再び近現代史の時代へ戻り、当初の主人公であるケヴィン・ヤマガタが帰ってきました。それもただの漫画キャラであったはずのBilly Batに取り憑かれた悲惨な姿となって。。。

『時は1960年代、アメリカ黄金期──夢のテーマパーク『ビリーランド』でビリーバットの着ぐるみに入り、毎日黙々と仕事をする男。自分が何者なのか、何になるかすらわからない“自分探し”途中の男。彼の夢は、みんなに愛されること。彼の夢は、いつか偉大な英雄になること。そんな彼の前に現れた本物のビリーバット。ビリーにいざなわれ、彼の人生に転機が訪れる……。彼の名はオズワルド。 (Amazon解説より)』

はむちぃ: と言うわけで今回の主人公はリー・ハーヴェイ・オズワルド様でございます。
ゆうけい: おや、はむちぃ君、呼びもせんのになんで出てきたんじゃ(?_?)
は: 匿名特命にてございまする。
ゆ: いくら前巻が忍者編だったとはいえ(^_^;)、まあよろしかろう、話を続けるぞよ。

は: ははっ、ではオズワルド様の説明をいたしましょう。ご主人様の世代ならリアルタイムでご存知でございますが、
ゆ: これこれはむちぃ君余計な事はイワン・ツルゲーネフ
は: おおっ、「イワンの馬鹿」の母国で新ネタを。。。って、話が進みません(-_-;)、若い方でも歴史読み物で知らぬもののない名前ですね。アメリカ合衆国第35代大統領ジョン・ケネディ暗殺の実行犯とされる人物でケネディ暗殺直後ジャック・ルビーによって射殺されました。
ゆ: その経緯のあまりの不自然さに利用されただけではないか?と言う疑念の消えない人物ですが、2039年までその真相はわかりません。
は: そのギャグは落合信彦ファンにしか受けません(--〆)。
ゆ: スマソ、マリ~リ~ン♪(本田美奈子風)

は: そのオズワルドですが、1957年に日本の厚木基地にいてそこでロシア語を学びそのままソ連に亡命した経歴の持ち主なんですね。
ゆ: 本作における下山事件の時の登場人物が本作でもちょっと顔を出すんですが、

「ああ......あんたもニ、三度見かけた事があるよ」(うつむきながら)

「銀座と厚木基地でね」(ジロッと眼鏡の奥からオズワルドをみつめて)

この1ページを割いて描いたシーンはちょっとゾクゾクしましたね。

は: さて、本巻ではダラスまで至らずに終了しますので第5巻が楽しみでございますね。
ゆ: 引っ張りますね~、とみせかけて、全然違う時代へとぶかもしれませんけど(笑。その辺、ファンがついていくのも大変で、描いている浦沢直樹本人(及び長崎尚志)には全貌が見えていてずっと話がつながってはいるんでしょうけど、読者のうちにはもう飽きてきて離れていく人もいるのではないかと心配な感じもします。

は: ご主人様もちょっと今回は退屈そうでしたね。
ゆ: 途中で一回投げ出したからね。。。でもふと思いついた事があるんだ。
は: はて、それは?
ゆ: この前友人とおしゃべりしてて、ひょいと手塚治虫の「火の鳥」に話が及んでね、その時にあっ、と思ったんだ。

Billy Bat」は浦沢版「裏・火の鳥」ではないか

ってね。
は: 確かに浦沢直樹様は手塚治虫氏の熱心なファンでおられて、「鉄腕アトム」のリメークまでされましたからね。しかし、「Billy Bat」と「火の鳥」の共通点とは?
ゆ: どちらも空を飛べるはず~♪
は: 。。。。。(--〆)
ゆ: まあそんなにカリカリしなさんな、はむちぃ君、私が前回のレビュー

Billy Batファウストメフィストフェレスのようだ」

と書いたのを覚えているだろう。
は: はい、確かに「人の心の弱さにつけこむまるでファウストメフィストフェレスのような道化回しを使えば長崎x浦沢コンビであればどの時代ででも自由闊達なストーリー展開が可能でしょうけれども」とお書きになっておられます。
ゆ: とするとね、

火の鳥 = 絶対的善 ⇔ Billy Bat = 悪魔

どちらも様々な時代に登場する

その時代の大事件に関わる

という共通項から考えて、「PLUTO」が「鉄腕アトム」へのオマージュだったように、この作品も実は「裏・火の鳥」としてやはり手塚治虫にこだわっているんじゃなかろうか、と思ったわけなんですな。

は: なるほど、ではそうなりますといくらでも大風呂敷を広げる事が可能で、却って前回の

「広げた上でどの時点に収斂させていくのか、今後の展開がちょっとまだ読めない」

という心配がますます問題になってきますね。
ゆ: ケヴィン・ヤマガタに収束させていくなら、まあこの話の終わりも近いのかなとは思いますが。あとは浦沢・長崎コンビの気力がどこまで持つか(苦笑、ファンとして見守りましょうか。ではご苦労であったぞ、特命羊君、忍者の修行に熱中するあまり熱中症にかからないでくれたまへ。
は: ベタなギャグではございますが御意にござります。常連の皆様方も暑さ厳しき折柄くれぐれもご用心くださいませ。