ゆうけいの月夜のラプソディ

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2009年「10の最も深刻な人道的危機」

Yemen
(Yemen 2009ⓒ Arnaud Drouart / MSF)
 拙ブログでも度々取り上げてきた、国境無き医師団Medecins Sans Frontieres, MSF)の人道的危機報告の2009年版が発表されました。1998年から毎年発表しているこのリストは、もうこれで12回目になり、今回の題名は「10の最も深刻な人道的危機」となっています。
 最近までは「語られなかった」という接頭辞がついていましたが、今回はありません。MSFのこれまでの地道な広報活動により、全世界的に周知されてきた証なのでしょう。
 一方で「もっとも深刻な」という修辞が追加されています。これまで報告されてきたが今回入っていない国においても問題が解決されたわけではないのだろう事は容易に想像がつきます。では、今回の10項目を紹介します。

1:絶え間ない暴力に追い詰められるコンゴ民主共和国東部の市民
 
2:暴力と医療不足に耐えるソマリア国民
 
3:医療が受けられない事態に直面するスーダン南部とダルフール地方
 
4:スリランカでは、数十年にわたる内戦の最終局面で数千人が負傷
 
5:パキスタンで暴力と無視に苦しむ一般市民
 
6:援助政策により、人道援助から隔絶されるアフガニスタン国民
 
7:イエメン北部の激しい戦争で身動きの取れない市民 

8:著しい資金不足が幼児期の栄養失調治療を阻害
 
9:数百万人がエイズ治療を必要とするも、資金援助が停滞
 
10:研究開発と治療の停滞が患者を苦しめる、顧みられない病気

10の最も深刻な人道的危機 2009年

 最近邦人誘拐事件で話題になったイエメンも入っていますね。他の国々は以前より報告が続いている地域で、長年の疲弊が国家としての機能を喪失させている事が懸念されます。

 実際MSFは2009年の危機の特徴を3つ挙げています。

1: 政府による人道援助活動の妨害
 スリランカパキスタンでは 紛争下で孤立無援の状態にある市民への救援活動を現地政府が許可せず、スーダンダルフール地方ではMSFの複数のチームが国外退去命令を受けた。2009年4月以降、スリランカで政府と反政府勢力「タミル・イーラム解放のトラ(LTTE)」の戦闘が激化し、数万人の市民が非常に限られた医療ケア以外の援助から除外されていたが、MSFは政府から紛争地帯への立ち入りを禁止された。ソマリアでは2009年初頭、20万人が首都モガディシオから避難を余儀なくされ、2008年以降MSFスタッフ3人を含む少なくとも42人の援助従事者が殺害されている。

2: 紛争下の住民や人道援助従事者に対する襲撃

 イエメン、アフガニスタンパキスタンコンゴソマリアでは、住民あるいは人道援助従事者が襲撃を受け、市民の身の安全の確保と中立な人道援助活動の尊重が損なわれた。 政府と反政府勢力の戦闘が2009年に激化したイエメン北部のサアダ州では、10月にこの地域の唯一の医療機関であるMSFが活動する病院が砲撃を受けたため、閉鎖を余儀なくされた。同じく10月、コンゴの北キブ州では、MSFが集団予防接種を実施していた現場を政府軍が襲撃し、紛争地域で独立した援助活動を行うための信頼が著しく損なわれた。

3:、国際社会から顧みられない病気の放置

 アフリカ睡眠病やシャーガス病への 取り組みは依然として国際社会から無視 され、HIV/エイズ感染者が必要な延命治療を受けられる機会も脅かされた。

 2009年、世界基金などの資金拠出機関はHIV/エイズ治療に向けた資金援助の削減を発表し、一方で年間500万人の5歳未満児が命を落としている栄養失調の蔓延国36ヵ国での対策に必要な112億米ドル(約1兆321億円)のうち、実際に行われた資金援助は年間わずか3億5000万米ドル(約316億4000万円)にとどまっている。シャーガス病、カラアザール(内臓リーシュマニア症)、アフリカ睡眠病、ブルーリ潰瘍などの顧みられない病気の治療の拡大や、より新しく効果的な治療薬の開発の取り組みはほとんどなされなかった。

   「一般市民がますます紛争の犠牲になり、しばしば意図的に命をつなぐ医療や人道援助から隔離されていることは明らかです。2009年に武力衝突が激化したスリランカやイエメンなどでは、援助団体も援助が必要な人びとの元へ赴く道を閉ざされ、攻撃の対象ともなったため、退避せざるをえませんでした。こうした容認しがたい力の行使が当たり前になりつつあります。このような危機がもたらす人道上の明らかな結末を、現地のMSFは、戦闘地域で、また活動を続けているHIV/エイズや栄養治療の診療所で、直接目撃しています。ですから、私たちは声を上げずにいられませんし、その必要があるのです」

クリストフ・フルニエ医師
MSFインターナショナル会長

 MSF JapanのHPにおいても「メッセージを広めよう」というページを立ち挙げています。リンク、バナー、TwitterにおけるRTなど、個人が出来る広報活動の幅が広がった現在です。皆さんもよろしければその輪を広げていってくださいますよう、切にお願いいたします。