ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

マーラー:交響曲第7番「夜の歌」 / ジンマン=チューリヒ・トーンハレ管弦楽団

マーラー:交響曲第7番「夜の歌」
 先日の「Stereo Sound No.172」記事中で「気になる」と書いたジンマンの「夜の歌」を聴いてみました。クラシックの交響曲に一つとして同じ演奏はない、と分かっていてもやはりこれだけ違うと驚きますねえ。テンシュテットに感激し、先日の「5番勝負」でガブリエル・フェルツを中心にレビューした経験からすると、拍子抜けするくらい普通なロマン派交響曲に聞こえます。これだけさっと演奏されると、もしこれで初めて7番を聴いた方は「難解」とか「とらえどころがない」とかいう7番の評価が信じられないでしょう。

 良く言えば室内楽の延長のように端正で大人しく、各楽器パートの分かり易い演奏です。そう言えば室内楽の壮大な延長のような曲という評論もありましたね。一方で指揮者の個性を感じさせるようなケレンやオーケストラとしての派手さは無く、悪く言えば、まるで恐くないお化け屋敷の様です。

 違うと言えば、ステサンではこのディスクをなんと4人も取り上げておられるんですが、それぞれの褒め方に苦労のあとがありありと見られます。私もまだまだ修行が足りません(笑。折角ですので最後に紹介してみましょう。なお敬称は略させていただきます。

1: 夜の歌について
2: 演奏について
3: 録音について

菅野沖彦
1: とらえどころのない難曲
2: ジンマンのオーケストラのコントロールも向上して、マーラーオーケストレーションの複雑さやその大きさの処理に手馴れた扱いを聴かせる。
3: 細部から全体に至るまで周到な製作。ギターなどによる細かなディテールにも、ホール一杯に轟くトゥッティにも破綻が無く安定。

東条碩夫
1: ちょっと怪奇で謎めいた雰囲気を持つ。マーラー交響曲の中ではもっとも演奏の機会が少ない。
2: 表現主義的・前衛的な要素は薄められているため、そこが物足りないという人もいるかもしれない。その代わり、マーラーのヒステリックな騒々しさが苦手と言う人には最適だろう。
3: 丸みのある柔らかい響きが特徴で、各楽器も刺激的にならずに溶け合い、ホールの空間性を十分に生かした、均衡を保った音色で流れていく。楽器の定位もそれほど強調されていない。「スコアが眼前に見えるような」隈取のはっきりした音作りではない。

宮下博
1: 特に複雑な構成を持つ難物。実演でも、納得のいく快演になかなか遭遇しない。
2: 即物的なまでに余情を配した解釈は、時に味気ないほどだが作品の構造を面白く味わうには好適だ。
3: チューリヒ・トーンハレを満たすパースペクティブ豊かな音の洪水を、誇張感なく、すっぽりと収めた。各パートの分離・定位もきちんとしているが、真価を十全に聴き取るには、装置の解像力を問う厳しさをも持ち合わせている。

柳沢功力
1: 難解とも不可解ともされる。
2: 重苦しい低音に重なり気だるいテノールホルンのソロで始まるその冒頭で、すでにこの演奏がその不可解さに挑戦していると感じた。他のどの演奏より陰鬱ではないのである。聴き進むと、持ち込まれた多彩な楽器による、無秩序とも喧騒とも思える音の渦を、丹念に整えているのも感じ取れる。
3: 広々としてかつ奥行きの深い空間に、きら星のごとく多彩な楽器を浮かび上がらせている。

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