先日私が新宿のディスクユニオンで買ったアルバムは「The Velvet Underground & Nico 」の日本初盤でした。
A-side
1. Sunday Morning
2. I'm Waiting for the Man
3. Femme Fatale
4. Venus in Furs
5. Run Run Run
6. All Tomorrow's Parties
B-side
1.. Heroin
2. There She Goes Again
3. I'll Be Your Mirror
4. Black Angel's Death Song
5. European Son to Delmore Schwartz
今でこそアンディ・ウォーホールがデザインしたバナナのシールの意匠はロック史上最も有名なジャケットの一つですが、1967年発表時は全く売れなかったのでUS original 1st pressでミント・コンディションのものはおそらく値段がつけられないほどの価値があると思います。
日本でこのアルバムが発表されたのは実は随分後の事で、その頃にはこのバンドは4枚のレコードを残して既に解散していました。1967年と言えばビートルズが「Sgt.Pepper's」を発表してる頃で、NYのアングラ・パンクが売れるなんて日本では思いもしなかったでしょうから、まあ当然と言えば当然なんですが。後年とは言え、旬の過ぎた腐りかけたバナナをポリドールも良く発表したものです。そう言う意味でレアものでしょ(笑。でもって、これを見つけて買ったのですが、盤もジャケットもミント状態でお値段2000円台、超お買い得です(笑。まあホントにこれは儲けモノでした、バナナの皮もめくってなかったですし(笑。
他の3枚で有名なものといえば、デヴィッド・ボウイがタイトル曲をカバーしたことで有名な「White Light /White Heat」がありますが、まあ代表作といえばこのアルバムに止めを刺すでしょう。The Velvet Undergroundというバンド名はルー・リードが捨てられたSM雑誌から名付けたというのが定説となっており、この当時のメンバーは
Lou Reed (vo, g, kbd, p)
John Cale (el vn, p, org, b, vo)
Sterling Morrison (g, b, cho)
Maureen Tucker (perc)
の4人でした。そこにAndy Warholがプロデュースを申し入れ、かつボブ・ディランから紹介されたモデル兼歌手のNicoを引き入れ、このアルバムは作成されました。
ニューヨークの暗部を赤裸々に抉り出すようにヘロイン中毒、同性愛、SM等をテーマにした曲がずらりと並び、どの曲もシンプルなコード進行でありながら、ガラスを爪を立てて引っ掻くような不快感、底無しの陰鬱さに溢れています。演奏もまあまあ下手(をい)だし、録音も曲によっては(まあ殆どですが)ひどいもんです。
一体どこがええねん?と言われそうですが、まあ基本的にはルーとジョンの個性のせめぎ合いが空中分解寸前のぎりぎりのところで踏みとどまりなんとか商業音楽として成り立っているところでしょうか。やっぱり一般性はないなあ(笑。
一般受けしないと言えばドラムスの女性モーリーンも不思議なドラムを叩く人で、なんとバスドラをスティックで叩いていました。ドラムスの華と言えるハイハットなど殆ど無視でバスドラをバンバン叩きまくっているところが実はこのアルバムの肝だという人もいるくらいです。
曲目は全部とうの昔に知っているので、再聴したからどうという事も無いんですが、まあ何と言ってもB-1のHeroinでしょうね。とはいえ、A面の6曲も全てクールですし、後年カバーされた曲も結構あります。「このアルバムは全然売れなかったが、聴いた奴はみんなミュージシャンになった」というルー・リードの言葉もうなづけますね。B面もそれなりにイラつきますが、B-3なんかは良い休憩になってますし、B-4、5あたりは30年早くポストロックを見据えてましたね(爆。
既にモリソン(リンパ腫)、ニコ(事故死)、ウォーホール(心臓発作)の三人は他界しています。ルー・リードは以前ご紹介したポール・オースターの映画「ブルー・イン・ザ・フェイス」の冒頭でインタビューに答えていたのが滅茶苦茶格好良かったのを覚えています。ジョン・ケイルはイーノと組んで現代音楽の方へ行ってしまいましたが、今はどうしてるんでしょうね。
と言うわけでロック史上に燦然と輝くニューヨーク・アングラ派ロックの名盤をご紹介させていただきました。えっ、全然褒めてないって?そんなことないと思うけどなあ(苦笑。