ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

All I Intended to Be / Emmylou Harris

All I Intended to Be
  先日のステレオサウンドで和田博巳先生も紹介しておられた、エミールー・ハリスの待望の新譜です。前作の「Stumble Into The Grace」も大変な傑作だったので、拙ブログでも当然紹介してるはずと思って前記事を探しても見つかりませんでした。それもその筈、なんと5年振りの新作なんですね。
 途中、ダニエル・ラノアニール・ヤングのアルバムにバッキング・ボーカルで参加したり、マーク・ノップラーとの共作を発表したり、ジョニ・ミッチェルのトリビュート盤に参加したりと、露出機会が多かったせいか、そんなに経っているとは気づきませんでした。

1. Shores of White Sand 
2. Hold On 
3. Moon Song 
4. Broken Man's Lament 
5. Gold 
6. How She Could Sing the Wildwood Flower 
7. All That You Have Is Your Soul 
8. Take That Ride 
9. Old Five and Dimers Like Me 
10. Kern River 
11. Not Enough 
12. Sailing Round the Room 
13. Beyond the Great Divide

 先ず、何はともあれ、「真珠のように静かな光沢を放ち、月のように謎を秘めた歌声」と天辰保文氏が形容した声は健在です。エミールー・ファンにはもうそれで十分買いです(笑。一曲目「Shores of White Sand」が比較的内省的な詞で前作からの流れは途絶えていないとは思いましたが、全体的には上品なカントリー・ミュージックという印象で、和田先生のレビュー通り、

「肩の力の抜けた、カントリー回帰作」

と言う事になると思います。前二作「Red Dirt Girl」「Stumble Into Grace」が、マルコム・バーンをプロデューサーに起用してカントリーの枠を超えた重厚なサウンドを作り出し、歌詞世界も社会批判や哲学的内容を多く含んでいたのに比すれば、の話ですが。

 「回帰作」になった理由としては、今回は70年代に親交の深かったブライアン・エイハーンがプロデュース、演奏を含め全面的にサポートしている事が大きいと思います。ドリー・パートンマイク・オルドリッジ等のカントリーの大御所も参加して盛り上げていますし。

 もちろんノンサッチ・レーベルですから音質は良好ですが、今回は和田先生も書いておられるようにアルバム中の5曲はナッシュビルアナログ16トラックで録音されています。デジタル録音のクリアな微粒子感と比べると、やや粒子の粗さを感じます。それが丁度ヴェンダースの傑作映画「パリ・テキサス」や先日紹介した「虹の女神」の中に挿入されていた8mmフィルムのような暖かさが感じられて好ましい感じがしました。

 と言うわけで、カントリーファンやアナログ時代の彼女がお好きだった方には気に入っていただけると思います。