ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Chopin Impresje / Leszek Mozdzer

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 ポーランドの天才ピアニスト、レシェク・モジュジェルショパン集です。先に言っておきますが、すんごいアルバムですよ~(煽。前記事で紹介したザビエル・レコードで運良くゲット出来たのですが、そんなに在庫はないと思うので早いもん勝ちです!

 モジュジェルについては先日紹介したラーシュ・ダニエルソンとのDUOアルバムで初めて知ったのですが、毎度お馴染みオラシオさんのブログからは

「レシェクの真の実力はこんなものではない」

という雰囲気がプンプン漂っております(笑。という訳で探しまくってとりあえずこれを見つけたわけです。

Leszek Mozdzer(p)
Tomasz Stanko(tp)*
Zbigniew Namyslowski(sax)**

1. Mazurek C Op.24 Nr 2
2. Nokturn F Op.15 Nr 1
3. Etiuda Ges Op.25 Nr 9
4. Nokturn G Op.15 Nr 3
5. Mazurek A Op.17 Nr 4
6. Preludium As Nr 26 (My Secret Love)
7. Preludium A Nr 7
8. Etiuda A Op.25 Nr 4 (Segments)
9. Mazurek F Op.68 Nr 3
10. Nokturn F Op.15 Nr 1 (2nd Version)*
11. Nokturn Fis Op.48 Nr 2
12. Mazurek G Op.24 Nr 1**

ポーランドと言えばショパン、ピアノといえばショパンということで、ポーランドのピアニストがショパンを弾くのは至極当然といえば当然の事。というわけで、現代ポーランドジャズ界の奇才ピアニストLeszek Mozdzerがショパンと真っ向から向かい合い、掟破りのアレンジ攻撃を繰り広げている作品。(ザビエル・レコード解説より)』

 クラシックの世界ではショパンは汎世界的題材であるわけですが、ポーランドにあってはジャズピアニストにとっても避けて通れない課題のようです。そう言えば以前紹介した、同じレシェクはレシェクでもクワコウスキさんの方もライブでショパンを取り上げていましたね。。。あっ、読み返してみるとそこにも「早いもん勝ち」と書いてあるわ(爆。(→熱しやすく醒めやすいB型なので全然覚えてない)

 閑話休題、曲目はマズルカノクターン、プレリュード、エチュードの中から選曲してありますので、クラファンには耳馴染みの曲ばかりでしょう。かく言う私もショパンだけは色々と持っておりまして、ルビンシュタインポリーニアシュケナージなどの大御所、鬼才アシャナシエフ、そして上述のジャズ畑からクワコウスキさんなど、色々聴き比べてみました。

 いやあ、DUOという制約から解き放たれたモジュジェルさん、凄いっ!クラシックと違って解釈が自由なジャズだけあって、右手の装飾音符の豊かさ、華麗さ、自由闊達さには鳥肌が立ちます。それでいて基礎的なテクニックが確固たるものである事は私でも明瞭に聞き取れます。彼は5歳から18歳までクラシックを研鑽していたそうですが、その間相当ショパンを弾きこんでいたんでしょうね。さすがにルビンシュタインやポリーニの演奏と聴き比べると若いなあとは思いますが、まあこの二人と比べる方が野暮ですね(笑。

 全体的な印象としては、6にチャーリー・パーカーの主題を取り入れたというクレジットなどもあるのですが、前回同様ブルース的コード進行やジャズ的なノリは希薄で、クラシックの作法を濃厚に残した流麗且つ透明な寒色系の音調です。
 例えば5のマズルカ17-4。実はこの曲、クワコウスキさんの「ショパン」の時にもアシャナシエフと聴き比べてます。今回改めて三者を聴き比べてみると、クワさんのブルース色の強い事強い事(笑、こちらは完璧にジャズのノリです。それに比べるとモジュさんのジャズ色は希薄で、段違いにスピードが違うとは言え曲を自己解釈して解体してしまうことで有名なアシャナシエフさんにむしろ近い、現代音楽的な印象を受けます。

 そんな彼の本領が発揮されるのはやはりマズルカだと思います。

ポーランド人の血が騒ぐのよ(by 未知やすえ姐さん)」(^_^;)

 ポーランド民衆の舞踏音楽を純粋芸術の域にまで止揚したのがショパンマズルカ、と言われていますが、それを更に現代のポーランド風に解釈すればこうなるのではないか、という彼の主張がとても明快に出ていると思います。
 17-4、24-1,2、そして晩年の68-3を取り上げていますが、特に24が素晴らしいです。マズルカ24-2は一曲目に持ってくるだけあって彼自身相当自信があるのでしょう、原曲の雰囲気を留めつつも押さえようのないイマジネーションに任せて自由奔放なソロが展開していく様は圧巻です。迷うことなくこのアルバムのベストテイクに推します。
 一方押さえとしてラスト曲にマズルカ24-1を配置するところなど、余程24番が好みとみえます。こちらではこれまたポーランドジャズ界の至宝、「ナミさん」ことズビグニェフ・ナミスウォフスキの感動的なサックス演奏も聴けます。

 これを聴いていると、最近の若いクラシックのピアニストのマズルカ全集を聴いてみたくなります。しかし、私こちら方面の知識がないんですよね~(涙。以前レコ芸で江崎昌子さんのマズルカ全集が特選になっていたような記憶がありますが、ご存知の方がおられたらどうか教えてくださいm(__)m

 というわけで、クラシックファンでも現代音楽まで許容範囲内にある方なら文句なく楽しめるアルバムだと思います。むしろカチカチのコアな4ビート・ジャズファンにはお勧めできないような音楽性だと思っていただいて結構です。
 ポーランド国内での録音なので前回紹介したACTレーベルよりは若干音質は劣るかもしれませんが、決して悪くはありませんのでオーディオファイルでもそれ程がっかりはしないと思います。是非どうぞ。