ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

PACO第17回定期演奏会@西宮

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 昨夕「佐渡マーラー」を聴いてきました。芸術文化センター管弦楽団(PACO)第17回定期演奏会です。曲目は昨季の6番「悲劇的」に続いて満を持しての1番「巨人」でした。
 
日時: 2008年6月6日(金)19:00~
会場: 芸術文化センター 大ホール

指揮: 佐渡 裕 
ヴァイオリン: フィリップ・アイシュ 
管弦楽: 兵庫芸術文化センター管弦楽団(PACO)

演奏曲目
バーンスタイン:セレナード 
マーラー交響曲第1番 ニ長調 《巨人》 

 佐渡裕さんは子供の頃初めて買ってもらったレコードがマーラーの1番で、更には今年は師でありマーラーの演奏に情熱を燃やしていたレナード・バーンスタインの生誕90年でもあり、「巨人」にかける情熱は並々ならぬものがあると思います。一方でこれをやろうと決断されたと言う事は、手塩にかけて育ててきたPACOに十分な手応えを感じていらっしゃると言う事でしょう。私もこのオケの成長を見続けてきたので楽しみにしていました。

 開演前に佐渡さんのプレトークがありました。「私は阪神ファンですが、今日は巨人をやります。まあ、今年は余裕ですから許してもらえるでしょう」と軽妙なトークに会場が和みます。佐渡さんはいつも詰襟風の服を着ておられますが、今回もそうでした。ちょっとスマートになられた感じがあって良く似合っていました。

 まず最初は師であるバーンスタインの「セレナード」。バーンスタインは「ウェストサイド・ストーリー」以外にも多くの曲を作っていますがこれもその一つ。プラトンの「饗宴」から霊感を得て作られたそうです。ですので弦楽器以外には古代楽器であるパーカッションとハープが入るだけの構成で、古代的リズムである2拍子と舞踏のリズムである3拍子だけで構成されているそうです。
 パリ管弦楽団のマイスター、フィリップ・アイシュのヴァイオリンの妙なる調べでスーッと古代アテネへ誘われ、5楽章があっという間でした。簡潔な構成ながらポリリズム的な複雑さも兼ね備えた懐の深い作品で、所々にはウェストサイド・ストーリーを思わせるジャジーな旋律も顔を覗かせていました。アンコールでアイシュさんのソロ演奏がありました。イザイの曲だったと思います。セレナーデではとても丁寧でたおやかな演奏でしたが、こちらはとても情熱的な演奏でアイシュさんの真髄を見たように思いました。彼は臨時でPACOのヴァイオリン奏者への指導もされたそうです。

 さて休憩を挟んでいよいよ「巨人」です。マーラーは何度も演奏をくりかええしつつスコアを改訂して最終的に現在の4楽章構成に落ち着いたようですが、個人的にはこの交響曲

第4楽章のコーダを鳴らしきる

ためだけにあると思っています。
 もちろんそれまでにも幾つかの山場や小技を効かせた聴き所はありますが、それら全ての一切合財が最後の最後のコーダに収斂していき大爆発を起こさなければその演奏は失敗である、とプログレファン的には思うわけです(笑。念のため前回井上道義氏のコンサートの際に、理論派の彼と新日フィルの「マーラー1番」を会場で購入して家で聴いてみましたが、やはりその思いは変わりませんでした。

 で、PACOの演奏。。。素晴らしかったです。途中ちょっとしたミストーンや少し不満な部分も若干ありましたが、それら全てを吹き飛ばしてしまうほどの感動的なコーダでした!特にオールスタンディングの金管楽器が咆哮し、打楽器隊があらん限りの力を出しつくし、それを佐渡さんが見事に統率し鳴らしきりました。終わった途端思わず「ブラボー!」が口をついて出てきました。嵐のような喝采の中でPACOが確実な成長を遂げ、一流の仲間入りをしてきた事を肌で感じました。

 佐渡さんご自身も感動されていましたね。佐渡さんがプレトークで、

「いつも沢山のお客さんが入ってくださり、そして送ってくださる拍手が彼らを育ててくださった」

とおっしゃってましたが、そうであれば拍手を送り続けてきた一人として私もとても嬉しいです。なおこの公演の成功の余勢を駆って佐渡裕&PACOは初めてのツアーに旅立ちます。ベートーベンの「皇帝」と「第7番」と言う贅沢なプログラムです。もしお近くの方がおられましたら是非どうぞ!
 また、四川大地震のチャリティ・コンサートも計画されておられるそうです。このセンターおよびオケ自体が阪神淡路大震災の鎮魂から始まったものだけに大変有意義なことだと思います。予定が合えば是非聴きたいです。