ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Fear Of A Blank Planet / Porcupine Tree

フィアー・オブ・ア・ブランク・プラネット
 旅日記シリーズも終了したので、久しぶりのアルバムレビューです。UENOさんからお勧めいただいていたPorcupine Treeの新作「Fear of a Blank Planet」を聴いてみました。

 Porcupine Treeについては元JapanのRichard Barbieriが参加していること、「Great Deceiver」Robert Fripp翁がいたくお気に入りであることくらいは知っていましたが、実際アルバムを通して聴くのは初めてです。

1. Fear of a Blank Planet 
2. My Ashes 
3. Anesthetize 
4. Sentimental 
5. Way out of Here 
6. Sleep Together 

Steve Wilson: vocals, guitars, pianos, keyboards,
Richard Barbieri: keyboards and synthesizers
Clin Edwin: bass guitars
Gavin Harrison: drums

 なるほど、演奏に関しては手馴れのプログレバンドだなと思います。現代のピンク・フロイドと例えられる事もあるようで、キーボードやギター更にはストリングスを用いた劇的な展開には確かにPFを感じさせるところがありますね。

 しかし、音量を上げていくにつれその印象が段々と変わっていくところに興味を惹かれました。タイトでハードなリズムセクションが産み出すハードなドライブ感が前面に押し出されてくるのです。このビートはどこかで聴いたことがあります、そう、近年のフリップ翁が追い求めて止まない「メタル・クリムゾン」のリズムセクションととてもよく似ています。

 特にGavin Harrisonと言うドラマーのマッチョでかつエッジの効いたドラムはどこかPat Mastelottoを連想させます。どこかと言えばこのドラマー、どこかで聞いたことがある名前だなと思っていたんですが、検索をかけたらすぐ分かりました。

 来年40周年で復活させるとフリップ翁が公言している次期キング・クリムゾン、何と三度目のツイン・ドラム体制にするそうなんですが、新加入する予定の二人目のドラマーがこのGavinなのでした。なるほどねえ、さぞや腹に応えるライブとなるでしょう(笑。

 楽曲的には17分以上ある3「Anesthetize」が一番の聴き所だと思いますが、さすがに私も昔のような気力・体力は無いもんで付き合うのはちょっとしんどい(^_^;)。SteveとRichard二人の考えるサウンドのコンセプトはアルバムタイトルにもなっている1「Fear of a Blank Planet」を聴くだけで十分に分かりますね。

 個人的にいいなと思うのは、4「Way out of Here」です。一時期のピンク・フロイドと第3期キング・クリムゾンのエッセンスが詰まっているようなサウンドです。最後の方でフリップ翁もサウンドスケープ(現代版フリッパトロニクス)で参加しているようです。

 タイトルにSF的な面白さを期待してしまったのがいけなかったのかもしれませんが、少々げんなりしたのは歌詞ですね。コンセプト・アルバムと言うことで、このアルバムを聴く方は全曲に渡ってゲームと薬とポルノに溺れる引きこもり男の妄想と愚痴を延々と聞かされることを覚悟せねばなりません。日本人ならまあ無視して聞き流すこともできますが、向こうの人はそうもいかない、というかファンはそれが好きで買うんでしょうけど。

 というわけでPorcupine Treeと言うバンドは「閉塞感が世界を覆いつくしている現代」における正統派プログレバンドですね。KCは40年前に

「21st Century Schizoid Man」

と言う実に示唆に富んだ予言をしていましたが、さしずめこの作品は

「21st Century Autistic Man」

といったところでしょうか。KCの復活とともに今後も注目していきたいと思います。