ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

のだめカンタービレ#20

のだめカンタービレ #20 (20) (講談社コミックスキス)
 のだめカンタービレもついに20巻を数えました。おめでとうございます。

『 ターニャの健闘、清良の快進撃。コンクールを見守るのだめは……?カントナ国際コンクール2次予選。清良は順調な演奏で本選進出を決めるもガケっぷちのターニャは実力を発揮できるのか!?一方、コンクールを見守っていたのだめは運命の曲と出会う。「いつか先輩と共演したい!」ラヴェルの協奏曲が宝物になったのだめを残酷な偶然が待ちうけていた……?(帯より)』

 それぞれの登場人物がそれなりに頑張ってはいるのですが、皆が皆望みを実現できるほどこの世界は甘くない、そんな当たり前のことを当たり前に描くと結構暗くなる(^_^;)、それが漫画の難しいところですね。肝腎ののだめと千秋の互いへの思いも微妙に歯車が合わないもどかしさがあり、この先どうなっていくんだろうという不安感に覆われた巻となっています。

 そんな中、この先主人公の二人にとっての「運命の曲」がついに顔を出しました。ラヴェルのピアノ協奏曲ト長調です。帯の「残酷な運命」と言う煽りは、以下ネタバレになりますが、既に千秋と彼に好意を寄せる一流女性ピアニスト・ソン・ルイの共演曲に決定していたことを指します。

 以前のだめコンサートの記事に書いたことがありましたが、この曲の第二楽章はアドバイザーの茂木大輔さんが「のだめと千秋の再会のシーンで是非使って欲しい」と作者に希望したことがありました。それが実現しなかった事を作者は気にかけていて、二人の運命を左右しそうな重要な役割を背負わせたのでしょうか。

 さてこの協奏曲についてですが、僭越ながら私のミケランジェリ盤のレビューから再掲してみます。

 ラヴェルが書いた初の協奏曲ト長調は、有名な左手のための協奏曲とほぼ同時に完成ました。3楽章からなり、

第1楽章: アレグラメンテ
第2楽章: アダージョ・アッサイ
第3楽章: プレスト

となっています。1と3は大変賑やかです。特に第3楽章は春の祭典ジャズゴジラのテーマをごった煮にして猛烈なスピードで駆け抜けてしまう感じで、最終楽章にもかかわらず最短の3分50秒で終了します。
 そして先日のコンサートで感動した第2楽章のピアノですが、さすがに稀代のヴァーチュオーゾミケランジェリ、これ以上ないと言うくらいの素晴らしい演奏です。右手を3/4拍子、左手を3/8拍子という独特のリズム・パターンでかなり長いソロ・パッセージが続くのですが、その深い慈愛に満ちた透明感溢れる旋律は、心の奥に宿る哀しみを少しずつ少しずつ洗い流してくれるかのよう。やがて木管や弦が加わって曲は盛り上がって行きますが、正直言ってミケランジェリのピアノの前では添え物に過ぎない感じも否めません。最後のこれまた長い長いトリルが深い余韻を残して終わります。』

 さすがのだめちゃん、ジャズ的なところも楽しいとさらっと言ってのけ、初めて聴いたにもかかわらず殆ど暗譜して弾いてしまいます。しかしこの曲を千秋と弾けるようになるまでには幾多の試練が待ち受けているようです。

 一方もう決まっているソン・ルイはどのような演奏を見せてくれるのでしょうか。まずはこちらの方が楽しみですね。同じ中国系の実在ピアニスト、ユンディ・リのようなタッチでしょうか?だったらあまり面白くない(^_^;)ので、できれば若い頃のアルゲリッチのように弾いてほしいです。