ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

First Voyage / T.E.E.

Tee_2
 Progressive Cafeを主宰されているfrancofrehleyさんがギタリストをされているオリジナル・プログレ・バンドT.E.E. (The Earth Explorer)の初アルバムをようやく手に入れました。素晴らしい出来で感動しました。CD-Rとは思えない音質で1200円は安い!皆さんも是非どうぞ!

Recorded Live at Crazy Jam, Tokyo Japan,
July 29th, 2007

1. Awake ~ Nomad (Yonekura, Yoneda)
2. Stromboli (Yonekura, Yoneda)
3. Over The Ocean (Yonekura, Yoneda)
4. L`oiseau Bleu (Yonekura)

The.Earth Explorer:
RYUJI YONEKURA - Keyboards
KENJI IMAI - Flute
TAKAYUKI ASADA - Drums
YUKIO IIGAHAMA - Bass
KATSUMI YONEDA - Guitar

 まずジャケット・デザインが素晴らしいですね。だまし絵で有名なオランダの画家エッシャーを彷彿とさせるようなバンド名のロゴ、初航海の夜明けを思い起こさせるバックの絵、いかにもプログレという感じでわくわくします。このデザインはEskenさんというミュージシャン仲間の方が担当されたとの事です。内側にはfrancofrehleyさんの「Dawning」という英語詩が記載されているのですが、ジャケットデザインとよくマッチしていて素晴らしいです。絵と詩のインタープレイとでも言いましょうか。

 これだけでもう完成度の高いプロのアルバムという気がしますが、あえて言うと帯の

「初航海にもかかわらず楽曲の完成度は高い」

というキャッチコピーなんだか音楽評なんだか分からないような一文がインディーズ系っぽいです(笑。

 さて一曲目、いきなり地を這うようなシンセ・ベースが体を震わせます。「おっ、来たな来たな」という感じですね。続いてfrancofrehlyさんの流麗なギターが絡んできます。このあたりが導入部に当たる「Awake」なのでしょう、そしていよいよプログレサウンドが炸裂、主旋律担当のImaiさんのフルート演奏が展開されていきます。「Nomad」という題名どおりのオリエンタルな旋律が、意外にも変拍子的なプログレサウンドとよく溶け合っていますね。最後はどういう展開で落とし所を見つけるのだろう、とドキドキしていたら、来ました来ましたフルートによる怒涛の長尺アルペジオ吹奏が!これこそプログレの醍醐味でしょう。

 プログレのフルートといえば先ず思い出すのがキング・クリムゾンイアン・マクドナルドメル・コリンズジェスロ・タルイアン・アンダーソンあたりですが、二曲目の「Stromboli」という曲名、francofrehleyさんのハンドル名の由来(franco=フランコ・ムッシーナ)などを考えると、イタリアプログレ界の雄、PFMのフルート奏者マウロ・パガーニを意識していらっしゃるのではなかろうか、と思ったりもします。

 そのイタリアの火山の名前の付いた二曲目、いきなり変拍子炸裂、不協和音の氾濫に火山の爆発のイメージが重なり、ユーロ・プログレの魅力全開です。不協和音といっても旋律の上でのことなので和音として濁らないところがこのバンドの音のクリアさにつながっている感じですね。でも、職業柄、救急車の音は心臓に悪いです(^_^;)。

 三曲目「Over The Ocean」はバラードとして全体の流れに良いアクセントをつけています。フルートは何故か妙にCamelアンディ・ラティマーを思い起こさせます。そう言えばfrancofrehleyさんの泣きのギターのメロディ・ラインや音のチューニングも、後期のアンディ・ラティマー(Stationary Travellerあたり)を彷彿とさせます。

 四曲目の「L`oiseau Bleu」は、全ての楽器の魅力を順番に聞かせてくれる総集編的楽曲で、憂愁に満ちた旋律から徐々に長調に転じていく感動的な展開は「ロワゾ・ブルー=青い鳥」という題名にふさわしいですね。

 以上四曲、もう立派にプロのバンドの音と断言していいのではないでしょうか。惜しむらくは曲の終わりに入る拍手がまばらなのと、ライブにもかかわらず謝辞だけでMCがないのが寂しいですね。以前francofrehleyさんに頂いたDr.Diamondのライブの方がその点では圧倒的に勝ってます(笑。まあ、冗談はともかくとして、これだけカチッとして遊びの無いサウンドなら、KCの「Starless and Bible Black」のように、ライブ録りということをあえて強調せずオリジナル・アルバムとして出しても良かったのではないかと思いました。

 とにもかくにも日本プログレのレベルは高い!と思わせる作品で、バンド名の如く今後も和製プログレの新たな地平を開拓していかれることを願って止みません。なお、ジャケット写真はfrancofrehlyさんの許可を得て掲載させていただきました、ありがとうございました。