ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

camomile Best Audio / Emi Fujita

camomile Best Audio
 ステレオサウンド和田博巳先生が推薦しておられたル・クプルのヴォーカリスト藤田恵美さんのハイブリッド・ベスト盤を買ってみました。上質な装丁、綺麗なジャケット写真、グリーンが綺麗なディスクと、視覚的には満足させてくれます。勿論グリーンは音質も考えた色のようです。ジャケット写真のクレジットは「tamjin」になってました。多分中島みゆきさんを70年代から撮り続けているタムジンこと田村仁さんでしょう、まだお元気で活躍されてるんですね~。

1. And I Love You So
2. Best of My Love
3. First of May
4. All My Loving
5. Unchained Melody
6. Desperado
7. Angel Voices Calling
8. Fields of Gold
9. Proud of You
10. Longer
11. Today
12. Walking in the Air
13. Beneath a Rowan Tree
14. Over the Rainbow
15. Wide Awake
16. Tears in Heaven
17. What a Wonderful World

『アジアでトータル20万枚以上をセールスしている"camomileシリーズ"のベストアルバム。アジアで藤田恵美の"camomile"に火が付いたのは、香港のオーディオファンからでした。シンプルな編成で、とても良い音のアルバムがあり、オーディオチェックに最適というオーディオ誌での紹介からオーディオファンの間で広がって行き香港で藤田恵美は『Hi-Fi Queen』と呼ばれるほどになりました。そしてそんな中からソニーで音響設計一筋30年というオーディオ界のカリスマ金井隆氏との出会いがありました。今回のこのベストアルバムは過去3枚の"camomileシリーズ"から16曲をピックアップ。全曲リミックス、リマスタリングSACD,マルチサラウンドのフォーマットで実施。それをLe Couple時代から長い間藤田恵美を手がけているフリーのレコーディング・エンジニア阿部哲也氏とソニーの金井氏とが正に二人三脚で、品川のソニーにある金井氏の試聴室にて行っています。(Amazon解説より)』

 解説の通り、いつのまにかアジアでは一番有名な日本人歌手になっておられるそうで、その癒し効果から「聴く薬」とまで呼ばれているとか。確かに聴いていてアルファ波が出そうな心地よい歌が続きます。聴いていて寝つきが良くなるような音楽を目指しているとおっしゃってるとおり、「聴くカモミール」と申せましょう。ヨガやストレッチをしながら聴くのもいいかもしれません。

 ただ、それ故に殆ど全てスローバラードで全体にあまり抑揚がありませんから、通しでじっくり聴き込むには少し辛いものがあります。破綻しない範囲内での優等生的な英語に終始している印象もぬぐえず、それ故か歌唱もやや平板で、本当の彼女の個性が奈辺にあるのかつかみきれない気がします。アジアの方が聞くとこういう英語もありなのかもしれませんけれどね。

 またカバー曲が殆どという構成もかえって災いしているような気もします。それぞれに名カバーがある曲ばかりですから、比べてしまうとどうしても見劣りしてしまうんですね。たとえば3ならサラ・ブライトマン、6ならリンダ・ロンシュタット、8,17ならエヴァ・キャシディ、16ならタック&パティなどを思い浮かべてしまうと残念ながら勝負にならないです。Fields of Goldなんかは日本人としては大健闘だなあとは思うんですけど、エヴァのバージョンを知ってしまうとね。そういう意味ではむしろ余りカバーされていない曲の方が安心して聴けます。例えばイーグルスの2やダン・フォーゲルバーグの10などは良かったです、Longerなんて本当に久しぶりで懐かしかったですね。

 また、親友のEstherという方が書いたオリジナルの7や13はいいですね。ケルト楽器に弱い私のツボを押さえ込まれました(笑。

 さてSACDの音質に関してですが、楽曲の性質上それほどのダイナミックレンジは要求されませんが、それでもS/N比の高さは十分感じ取れます。f特も十分広いと思いますが、曲によっては中域の密度が薄いなと感じないでもないです。ボーカルや各楽器の音質はとても自然でいいと思います。

 ちなみにライナーノートに制作者の説明が詳しく載っていますが、2Chの場合8と16がお勧めだそうです。8は先ほど述べたケルト楽器の質感が、16は甲斐よしひろさんのライブで強い印象を残してくれた美人ヴァイオリニストラッシャー木村さんの弦が聴き所かなと思いますが、先ほど述べたように個人的にはそれほど入り込めないところがありました。2や17の方が全体のバランスがいいかな、と思います。

 ちなみにマルチは拙宅では聴けないので分かりませんが、とても頑張って制作されたようです。2ではパーカッションのきらきらした音が二階から降り注いでくるそうですし、5ではフルートの音が天井に鳴り響き、それを見上げながら藤田さんが歌っているそうですので、機会があれば是非一度聴いてみたいものです。

 というわけで、女性ボーカルが好きなオーディオファイルや、適当なスリーパーをお探しの方にはぴったりでしょう。