ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

はむちぃの関西弁講座

 みなさまこんにちは、はむちぃでございます。前回の「レコーダーも買いました」の記事中で私メが、関西弁講座これにて終了と発言いたしましたところ、極私的一部の方から

 「全然説明してない」

という厳しいご意見をいただきました。ご主人様に上申いたしましたところ「チミに任すよ」との仰せでございました故、不肖私メが私見を述べさせていただきますm(_ _)m。では早速前回の文章を引用してみましょう。

(はむちぃの質問に対して)
a. ゆ: ちゃうちゃう。
b. は: ちゃうちゃうちゃうんちゃう?
c. ゆ: ちゃうちゃう、ちゃうちゃうちゃうんちゃうちゃう、ちゃう(違う)のちゃうちゃうや。

まずは標準語訳してみましょう。

a. (ゆうけいがはむちぃの質問に対して)
それは違います。

b. (偶然近くにいた犬がチャウチャウではないことをはむちぃが指摘して)
あれはチャウチャウと違うのではないのですか?

c. (はむちぃの勘違いに気づいたゆうけいが)
それは違います、「チャウチャウと違うのではないのですか」は誤解です、「違う」の意味の「ちゃうちゃう」です。

 ご理解いただけましたでしょうか。実はこの会話は探偵ナイトスクープトミーズ雅探偵が取り組まれた作品の中で屈指の名作と言われている「大阪弁講座」をモディファイしたものでございます。地方から大阪へ出てきた投稿者からの「関西弁を話せるようになりたい」と言う依頼に対する抱腹絶倒の講義でございました。確かに関西弁のエッセンスがすべて詰まっているような会話でございます。ではこの会話の中の関西弁の特徴について検討してまいりましょう。

特徴1: 単語が短く丸くなる

 「ちゃう」はもともと「違う」だったわけですが、会話で使われているうちにきつい感じのする濁音が無くなり、3音だった単語が実質2音に減っております。
 「関西人が二人寄ると漫才になる」と言うくらい会話文化が発達した地域でございますゆえ、短時間で多く話せるように言葉が短くなり、さらに響きのきつくない方向に変化していった結果でございましょう。
 そう言えばアナウンサーの発音練習では濁音を柔らかくする訓練があるそうでございます。「が」を「んぁ」というニュアンスで発音することが求められるそうでございますが、これを長い年月かけて熟成させていったのが関西弁なのかもしれません。

特徴2: 同じ言葉を二回続けて言う:

 これも会話文化の特徴でございましょうか、同じ言葉を二回続けて言うことが関西人には多う見受けられます。例文aでも「ちゃう」の一言で意味は通じるわけでございますが、ご主人様は「ちゃうちゃう」と重複して申しておられます。だから私メが犬のチャウチャウと勘違いしてしまったわけでございます。もし質問に肯定的に答える場合でも、関西人なら「本当です」で済むところを大抵の方が「ほんまほんま」と答えられます。
 せっかく会話文化の中で短縮されてきた言葉を何故わざわざ重ねるのでございましょうか。これは実際関西人の発音を聞いてみると容易に分かるのですが、一語で終わってしまうと非常に断定的できつく聞こえるのでございます。
 例えば「ちゃう!」で終わってしまうと怒っているかのごとくに聞こえてしまいます。実際それで終わってしまうと顔面の表情筋も強張ったままでございます。そうでないことを示し会話を柔らかく円滑に進めるためにわざわざ同一語を二度重ねるのであろうと思われます。実際関西人が二度言葉を重ねたあとの表情は緩んで微笑んでいることが常でございます。これも会話文化の特徴なのでございましょうね、ほんまほんま。

特徴3:助詞類がしばしば省略される:

 以前「英語は関西弁に通ず」と言う記事の中でも取り上げたことがありますが関西弁では主文と補文をつなぐ助詞を省略できるという特徴がございます。それ以外にも主語と述語の間等助詞の類はいたるところで省略されておりますし、更には代名詞の主語まで省略されてしまいますので、今回のような会話が成立してしまうわけでございます。実際今回の例文で省略されているところに下線を引いてみましょう。

それは違います。
あれはチャウチャウ違うのではないのです
それは違います、「チャウチャウ違うのではないのです誤解です、「違う」の(意味の)「ちゃうちゃう」です。


 ここで言語感覚の鋭いお方なら「の」は省略されにくいことにお気づきかと思います。おそらくは意味の違う単語を並列ではなく結びつける格助詞であるためかと思われます。では「の」は変化なしかと思いきやさすがに恐るべし関西人、会話をスムーズにするためには労を厭いません。「の」は「ん」に変化してしまうのでございます。よって

「違うのと違う?」→「ちゃうのちゃう?」→「ちゃうんちゃう?」

と変化して最終的に絶妙なグルーブ感を醸し出すわけでございますね(^_^;)。

 いかがでございましたでしょうか、はむちぃめの関西弁講座、ここまで読んでもう一度例文を読んでいただきますと、一見分けの分からない会話に秘められた関西弁の懐の深さがお分かりいただけるかと存じます。とは申せ、私メも日本語修行中の身でございますゆえ、至らぬ点も多々あろうかと思います、ご意見いただけるところがあればよろしくお願いいたしますm(_ _)m