ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Pictures / Katie Melua

PICTURES
PICTURES

 先日はシンガポール出身LA在住のコリン・メイを紹介しましたが、今回はグルジア出身で英国で活躍している女性シンガー、ケイティ・メルアを紹介します。このアルバムの日本盤ボーナストラックにも入っている「The Closest Thing To Crazy」が大ヒットし、エリザベス女王の前で歌った事で俄然全世界の注目を集めました。「Pictures」はそんな彼女の新作で、第三作目にあたります。

1. Mary Pickford
2. It's All in My Head
3. If the Lights Go Out
4. What I Miss About You
5. Spellbound
6. What It Says on the Tin
7. Scary Films
8. Perfect Circle
9. Ghost Town
10. If You Were a Sailboat
11. Dirty Dice
12. In My Secret Life
bonus tracks only for Japan
13. When You Taught Me How To Dance
14. The Closest Thing To Crazy - acoustic

 「世界一の美声」とか「ギターを持ったノラ・ジョーンズ」とか相も変わらずの陳腐なキャッチコピーが出回っていますが、まあ少なくとも世界一ではない(笑。美声と聞いて思い浮かべるようなクリスタルクリアなハイトーンの持ち主ではなく、ややウェットだけれどもノラ・ジョーンズほど粘っこくもない声質といったところでしょうか。
 私の第一印象はジュエルみたいだな、という感じでした。声質も内に秘めたエモーションを感じさせるところも似ている気がします。また、彼女が好きだというエヴァ・キャシディエラ・フィッツジェラルドの歌唱法を積極的に取り入れようとしている姿勢も見て取れます。

 さて、このアルバムですが、さすがに3作目だけあって意欲的にレゲエ、スパニッシュ等々の色々なタイプのアレンジを導入しています。まさに「Pictures」のタイトル通り、各曲にそれぞれの色がありとてもカラフルな印象を受けました。ただ、こういう場合往々にしてアレンジが勝ちすぎ肝心のボーカルを損なってしまいがちですが、幸いこのアルバムではそういうマイナス点はあまり見当たらず、どの曲を聴いても彼女のボーカルが十分に楽しめると思います。

 さて、今までは彼女の育ての親とも言えるマイク・バットが殆どの曲つくりをしていましたが、今回は5曲で彼女も曲作りに関わっています。その中でもアンドレア・マクユアンとの共作であるシンプルなトーチ・ソングの4「 What I Miss About You 」が素晴らしい出来で、ベスト・トラックの一つと思います。もちろんマイク・バットの作品も高いクオリティを維持しており、その中でも古典的なラブソングの文法に則った10「I f You Were A Sailboat 」が良くできていると思います。
 最後を飾るのはなんとレナード・コーエンの作品である12「 In My Secret Life 」。若々しくも堂々とした歌いっぷりに、彼女の意気込みが感じられました。

 日本盤には映画「ミス・ポター」の主題歌である13、最初にして最大のヒット曲のアコースティック・バージョン14が入っており、まあこれはお買い得と言っていいんじゃないかと思います。ただ折角ついている訳詩がいまいちラフで、このあたりはもう少し気を使ってほしいところです。