ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

21世紀少年(上)(下)

21世紀少年 下 (2) (ビッグコミックス)21世紀少年 上 (1)20世紀少年―本格科学冒険漫画 (22)

はむちぃ: 先日ご主人様がレビューしたいと申しておりました「20世紀少年21世紀少年」の完結編が発売になりましたので早速取り上げることになりました。
ゆうけい: 奇しくも前回ご紹介した「夏への扉」の舞台となった年代と全く重なっているのですが、「夏への扉」がより良い未来を信じていたのとは対照的に、「20世紀少年21世紀少年」では1970年に子供達が描いた他愛無い夢想が悪夢のような21世紀を招来する、というストーリー展開になっております。

『日本が高度成長期のまっただ中の1970年、夢と希望に満ちあふれた時代を象徴するイベントが催された。それが日本万国博覧会だった。その当時小学校5年生だった少年たちが空き地に作った秘密基地で空想した世界。地球滅亡をもくろむ悪の組織、それに立ち向かい地球を救う正義のヒーローとその仲間たち。こんな下らないストーリーを“よげんの書”と、少年たちは名付けた。大人になるにつれ、そんな空想の記憶は薄れていく。しかし、1997年幼なじみの死をきっかけに、その記憶が次第に呼び覚まされていく。そして、世界各地の異変が昔幼い頃空想した“よげんの書”通りに起こっていることに気づく。出来事に必ず絡んでくる謎の男“ともだち”との出会いによって、全ての歯車は回り出す。悪の組織“ともだち”に、ヒーロー “ケンヂ”は立ち上がるのだが。。。(Wikipediaを元に改変)』

は: ビッグコミックスピリッツに「20世紀少年」が連載開始になった当時は大変な話題作でございましたね。
ゆ: 現在最も人気のある漫画家である浦沢直樹氏の作品ですからね。序盤から中盤までは、ストーリーテリング、作画能力ともに卓越したものを持っている彼が自身の子供時代に重ね合わせて全力を傾けただけの事はある作品でした。だから、2000年を迎えて謎の宗教集団「ともだち」がいよいよ人類滅亡計画を開始するあたりまではワクワクドキドキの展開でしたね。
は: その後「ともだち」の正体が一旦明らかになり、そして死んでしまうのですが、ローマ法王の前で奇跡の復活を遂げるという劇的展開もございました。
ゆ: そうそう、しかしその後氏の体調不良による休載もあったりして、内容的にも明らかに失速してしまいました。そして、第二の「ともだち」の正体を含め多くの謎を残したまま、単行本で言うと第22巻(冒頭リンク右端)までで突然終了となってしまったんですね。

は: その不満に答える形で再度浦沢様が短期集中連載の形で書かれた完結編が「21世紀少年」なのでございますね。
ゆ: 本来なら次巻は「20世紀少年・第23巻」となるべきなんですが、第22巻とかなり重複する部分があるため、止む終えずタイトルを変更して「21世紀少年(上)」(冒頭リンク中央)とした訳なんですね。
は: そして完結編として出たのが今回の「21世紀少年(下)」(冒頭リンク左端)でございますね。印象は如何でしたでしょうか?
ゆ: (上)でもう一度期待が高まった分かえってがっかりしましたねぇ。話の展開が意味不明な部分もあればスカスカのところもあるし、「第二のともだち」の正体以外にも決着をつけなければいけない事柄は沢山あったのにほったらかしだし、これじゃファンは到底満足できないでしょうね。

は: 第22巻と言い、今回と言い、浦沢氏に一体何があったのでございましょう。
ゆ: それが心配で私も色々調べてみたんだが、どうもネット上での「第二のともだち」の犯人当て競争が過熱してしまい、殆ど特定されてしまったことに嫌気がさしたみたいなんですな。
は: 確かに自分が描く前に犯人の名前がネット上で全国に流れればやる気がなくなりますよね。
ゆ: それを意識してか、彼は一度どこかのインタビューで

20世紀少年は犯人探しのミステリーではない」

と答えていたそうです。
は: 正論ではございますが、それが一番の謎であった事も事実ですからね。
ゆ: そう、浦沢氏の苛立ちを感じる発言と思いますね。実際本作のラストで主人公けんじが「ともだち」の作ったバーチャルアトラクションに入り込み、お面をかぶった子供時代の「ともだち」に

「おまえ、○○○○君だろ」

と語りかけるんですが、ともだちはそのまま通り過ぎる形で終わってしまい、結局お面の下の素顔は明かされないままでした。
は: 犯人当てに熱を上げているネチズンへの無言の抗議でございましょうか。
ゆ: 降参の白旗のようにも感じましたね、

「お前らの言うとおりだよ、これでいいだろ」

という氏の疲れきった表情さえ見えるような結末でしたね。
は: 現実が虚構の世界の結末に影響を及ぼすところはポストモダン的でございますね。
ゆ: ハリー・ポッター最終巻でも全世界からのプレッシャーが結末に影響を与えた印象があると思いましたが、情報が一瞬にして全世界を駆け巡り誰でもそれに接することが出来る21世紀という時代の恐さかなあ。さすがのハインラインもそこまでは予想できなかったですね。

は: ところで、他の説明されなかった謎のうちでこれだけは知りたかった、という点はございますか?
ゆ: ストーリー上の謎ではないんですけど、T-REXファンとしてこれだけは訊いておきたかったという事はあります。それは、

「どうして「ともだち」という教祖名を思いついたのか」

という事です。
は: それがどうしてT-REXと関係するのでございましょう?
ゆ: タイトルの「20世紀少年」がT-REXの「20th Century Boy」である事は明白なんですが、作品中ではイントロの暴力的なギターのリフしか流れてこないんですよ、だから殆どの方は歌詞をご存じないと思うんです。実はこの歌はこんなフレーズから始まるんです。

Friend say it's fine
Friend say it's good
Everybody says
it's just like rock'n'roll

( lyrics by Marc Bolan )

は: おおっ、ともだちでございますね!!、、、、、、

   、、、、、、ん(・・?

ゆ: と、ここで突然に終わるのもこの本のレビューらしいかと(爆
は: はあ、またまた姑息なフェイクを(-_-;)、とにもかくにも浦沢直樹様、どうもお疲れ様でございました。
ゆ: 気を取り直して現在進行中の「PLUTO」に全力を傾けていただきたいですね。