ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

A Tribute to Joni Mitchell / V.A.

A Tribute to Joni Mitchell
はむちぃ: ゆうけいのディスクレビュー、このところ「ディラネスク」「Twelve」とカバー集が続いてまいりましたが、本日は極めつけでございます。
ゆうけい: カバーされる事の多いシンガーといえばボブ・ディランと双璧をなすのがこの人、ジョニ・ミッチェルですね。今回そのジョニのカバーを集めたコンピレーションアルバムがでたんですが、これが凄いんです。
は: どの辺が凄いんでございます?やっぱり参加ミュージシャンでしょうか?
ゆ: それもさることながら、何とノンサッチ・レーベルが出したというところが凄い(^O^)!

は: ノンサッチと言えば通好みのアーチストを集め、出る盤はどれも高音質でオーディオファイルにも人気でございますね。
ゆ: そうそう、おまけにジャケット写真が芸術的で、必ず上質の紙カバーがついてるんですよ。これで中のプラスチックの品質が日本並みだったら言うことないんだけどねえ(苦笑。
は: その通好みのノンサッチがコンピレーション・アルバムを出すとは意外と言えば意外ですね?
ゆ: どうもオーナーのRobert Hurwitzがジョニの大ファンらしくて、とにかくトリビュートアルバムを作りたくて仕方なかったらしいよ、それで専属である無しにかかわらず良いアーチストをかき集めて作ったようなんですね。そして出来上がったのがこのアルバム、ジャケットも渋さ極まれりですが、まあこの豪華なラインナップを見てくださいよ、お客さ~ん!
は: あいも変わらずアントニオ猪木ですか、トホホ、し、しかし確かに凄いですね。

1. Free Man In Paris - Sufjan Stevens
2. The Hobo Dance - Bjork
3. Dreamland - Caetano Veloso
4. Do'nt Interrupt The Sorrow - Brad Mehldau
5. For The Roses - Cassandra Wilson
6. A Case Of You - Prince
7. Blue - Sarah McLachlan
8. Ladies Of The Canyon - Annie Lennox
9. Magdalene Landries - Emmylou Harris
10. Edith And The Kingpin - Elvis Costello
11. Help Me - k.d. lang
12. River- James Taylor

ゆ: カサンドラ・ウィルソンk.d.Langは以前にもジョニをカバーしたのを聴いた事があったけど、それ以外の方々は初めてでした。みんな素晴らしいアーチストですし、選曲もさすがで、実に聴き応えがありますね。
は: その中でもベストテイクを選ぶとしたらどれでございますか?
ゆ: やっぱりプリンスの「A Case Of You」でしょうね。プリンスがジョニを歌うというところでもう十分なサプライズでしたけれど、今回の選曲の中でもおそらく最もカバーされた回数の多いであろうこの曲を実に斬新にアレンジしてますね。
は: ファンク・フェイバーを残しつつ見事なソウル・バラードになっておりますね、あの独特のプリンス節とも言えるボーカルも健在でございますし。
ゆ: 前のカサンドラのキーが低いので、どちらが男でどちらが女か戸惑ってしまうくらいですね(苦笑。私もこれまでジョニ自身のセルフカバーを含めて数多くの「A Case Of You」を聴いてきましたがこれ程クールなのは初めてです、さすがプリンス!としか言い様がないですね。おまけにドラムス以外の楽器は全部彼が弾いてるんですが、ピアノのタッチが素晴らしいですね。
は: 深い余韻を湛えた響きがとらえられていて、オーマニにもたまりませんでしょうね(^.^)。

は: さて、女性陣はいかがでしょう?
ゆ: 何れ劣らぬ個性派ぞろいですからね、各々が完全に自己流に消化していて見事です。
は: 私メも、カサンドラ・ウィルソンサラ・マクラクランアニー・レノックス様あたりは凄いと思いました。
ゆ: 良いとこついてきますね~、はむちぃ君。特にサラの「Blue」なんかオリジナルを歌っているのかと錯覚してしまいそうです。「Surfacing」あたりに紛れ込ませたら、ジョニの歌だとすぐ気付く人はいないんじゃないでしょうかね(^_^;)。まあ、それにしてもやっぱり「Blue」は名盤ですねえ。
Blue

は: では女性陣のベストテイクはサラ様のブルーということで、、

ゆ: 「ちょっと待ってね」

は: おおっ、これは先日他界された、はな寛太師匠の名文句(T_T)!、、、という事は他にもっと素晴らしいカバーがございましたですか?

ゆ: あるんだよ、はむちぃも知ってるでしょ、私がノンサッチレーベルで最も好きなアーチストが誰か。
は: はは~ん、グラム・パーソンズの流れを汲む稀代の名女性ボーカリストエミールー・ハリス様ですね。
ゆ: そうなんだ、ノンサッチレーベルだから当然彼女も歌うだろうと思っていたんだけれど、その選曲の素晴らしさに泣きました泣きました、ガオ~(号泣。
は: これまた他界された岡八朗師匠のネタですがな(--〆)、トホホ。いや、でもお気持ちは分かります、ジョニ・ミッチェル様がアイルランドカトリック修道院の腐敗とあまりにも酷い女性への仕打ちに猛烈な憤りを覚えて完成させた「Magdalene Laundries」ですからね。
ゆ: この実話は「マグダレンの祈り」という映画にもなっておりますので是非ご覧下さいませ。ジョニの歌も、男性を魅惑する容貌を持っているというだけで「Lady Of Charity」という皮肉な異名を持つ生き地獄のような修道院に叩き込まれ、やがてはボロクズの様に死んでいくことを覚悟している女性の悲痛な心情を歌っていて、ジョニの憤りが心に突き刺さってくるような名曲です。
は: ジョニ様も、アイルランドの至宝チーフタンズのアルバムに参加した時にこの曲を自ら選ばれたほど入れ込んでおられましたが、さすがにこの曲をカバーする事は並みのシンガーには至難の業でしょうね。
ゆ: 私の知ってる限りでは今までカバーした人はなかったですね。やるとすればシニード・オコーナーあたりがやってくれそうな気はしていたんですけど。

は: それだけにエミールー・ハリス様の勇断には拍手を送りたいですですね。
ゆ: 自身のアルバム「Red Dirt Girl」や「Stumble Into Grace」において社会の底辺で虐げられている女性を歌ってきた彼女だからこそ、この歌を歌う資格があると思いますね。得意のギターの弾き語りで歌う哀愁を帯びた声が切々と胸に沁み入るようで、もう泣けました泣けました、ガオ~。
は: もうええっちゅうに(-_-;)、しかしお気持ちは分かりますよ、ジョニ様を「義憤」とすればエミール様は「哀切」でございましょうね。歌の主人公の魂が乗り移って血の涙を流しながら歌っておられるような神々しさを感じました。
ゆ: げげっ、はむちぃ君いつからそんなに鋭い感性を身に付けたんじゃ(驚?

は: 門前のハムでございます。さて、パティ・スミス様の「Twelve」と偶然にも同じ12曲でこのコンピレーションは幕を閉じるわけでございますが、トリは大物JT様でございますね。
ゆ: 名曲「River」で幕を閉じます。私はレイチェル・ヤマガタのカバーが好きですけど、彼らしい朴訥で誠実な歌唱も良いですね。この曲も先ほど紹介した名盤「Blue」所収なんですが、このアルバムで渋いギターを聴かせてくれていたのがJTでしたから、締めくくりにはふさわしい人選と申せましょう。
は: ということで、このコンピレーションはどなたでも楽しめる素晴らしいアルバムでございます、是非どうぞ。