ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

岩手旅行(4)一関ベイシー探訪

Ichinosekibasie3
 さて、花巻市をあらかた回ってしまってもまだお昼過ぎ、飛行機まで時間が随分余ってしまいました。そこで、Naviもあることだし、思い切って岩手県南部まで足を伸ばそう、と思い立ったのでした。

Konjikidou
 先ずは県内有数の観光スポット、平泉は中尊寺を訪れて見ました。県を南北に縦断する東北自動車道(ほんとにまっすぐ^^;)を南下、一時間も経たないうちに着いてしまいました。ここはもう人人人で、長閑な花巻市とは桁違いの賑わい、風邪で調子の悪いものにはこの人いきれは堪えました(涙。写真はかの有名な金色堂、といってもそれを覆っている覆い堂が写ってるだけですけどね。

 ここを訪れたのは大学生時代、高校の同級生数名と東北一週旅行を敢行した時以来でした。もう20年以上前のことですから記憶もあいまいですが、もっと鄙びた山の中の静かな寺だったように思っていました。記憶とはあてにならないものです。おまけにその時に

「ミイラを見たような気がする」

のですが、、、そんなに都合よく特別公開なんかしてませんよね~(^_^;)。

Ichinosekibasie
 さて、一通り境内を巡回し終わって駐車場に戻ってもまだ随分と間があります。と言う事で今回は遠すぎて無理か、と諦めていた「ベイシー」をNaviで検索してみたら何と嬉しいことにありました。まだ昼間なので念のためそこに書かれている電話番号に電話してみますと、こちらの質問が終わらないうちにぶっきらぼう

「もうやってます」

という答の後、がちゃんと電話を切られてしまいました。普段なら「なんやこのおっさんは!」と怒るところですが、今回ばかりは

「おっ、この対応はかの有名な菅原Swifty正二さんに違いない」

と嬉しくなり、そこから更に南下すること半時間足らず、ついにジャズファン、オーディオファイル憧れの聖地一関ベイシーに到着したのでした。

 知らない方のために一応説明しときますと、もう35年以上になる老舗のジャズ喫茶で、通称「日本一音の良いジャズ喫茶」とか。店主の菅原正二さんは早稲田のハイソサエティ・オーケストラ(通称ハイソ)ご出身で、2期後輩にタモリがいます。店の名前にもなっているカウント・ベイシー人脈や渡辺貞夫坂田明をはじめ内外のジャズ・ミュージシャンと親交があり、ここでライブも催されます。ちなみにSwiftyというニックネームは故カウント・ベイシー御大が名付け親とのことです。また、ジャズ評論家故野口久光氏より死後何十トン(枚じゃないですよ^^;)という膨大なLPを寄贈されたことでも有名ですね。

 オーディオファイルにも「JBL」「シュア」「リンLP12」等々のキーワードでその名は知られています。JBLのスピーカーユニットをマルチアンプ駆動して数十年、まだ日々研究に余念が無い様はステレオサウンド連載の「聴く鏡」を読んでおられる皆さんはご存知のはず。

 例えばベイシーと言えばシュア V15Type IIIというくらい長年に渡ってこのカートリッジを使い続けておられるのですが、最近Ortofon MC☆20Wに変更されたとのことです。まあこれには良い交換針が無くなったという事情もあるそうですが。但し、「聴く鏡」にはサブで使うと書いてありましたので、ひょっとしたら併用されているのかもしれません。

 さて夫婦で恐る恐る入ってみますと中は予想通り真っ暗、その闇の奥から突き刺さるような音がいきなり襲ってきました。いやあ、ジャズ喫茶だなあ(爆。一番奥のテーブルに座ると、菅原さん自らが注文を取りに来られ、これまたびっくり。定番どおり800円コーヒーを二つ注文しました。冒頭写真がそれです。
 
 窓が無く照明を落とした空間に音が充満しているという状況で思い出したのが、昔神戸三宮のセンター街近くの地下にあった「木馬」というジャズ喫茶でした。ここは同じJBLでも4343を使ってましたが、雰囲気はどことなく共通していますので既視感のようなものを感じました。ただ、ベイシーはSPのある直方体の空間の横にもうひとつ直方体の空間があるので音の逃げ場があり、それほど閉塞感は無かったです。
 音は凡庸な表現ですが、

「迫力のあるJBLサウンド

そのもの。片Ch2発のウーファーに下支えさせられ、中域の張り出しが良く、しかもホーン型の特徴とされる、前方向へ飛んでくる音、私なんぞに言わせるとベイシーのホーンは猛獣が襲いかかってくる感じでした。

 当然ながら定位感や音場については細かい事は言わず、とにもかくにも各楽器のガッチリした音像を描くタイプです。ある程度デフォルメされた濃密な油絵、とでも言う印象でしょうか。

 それにしてもLPの良く鳴ること、カウント・ベイシー・ビッグ・ジャズ・バンドチャーリー・パーカーがゲスト出演した古いライブをかけられたのですが、相当古い録音で無音部だけ聴くとノイズだらけにも拘らず、出てきた音はフレッシュでf特も決して悪くないから不思議。ヤードバーズ組曲を吹くバードのサックスのリアルさったら文字通り「はるか時空を超えて」でしたね。これだけガッツリ来るのはやっぱりシュアだろう、と思っていたのですが先述したようにオルトフォンかもしれません。駄耳だなあ^^;。

 そんなこんなで30分以上家内に付き合ってもらい、「聴く鏡」を購入して菅原さんにサインを頂き、大満足でベイシーを後にしました。さすがに病気の体には堪えたのかちょっとしんどくなりましたが何とか無事にレンタカーを返し、空港にたどり着いたのでした。

 どうも長々とおつき合い有難うございました、岩手紀行終了とさせていただきます。