ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

地下鉄(メトロ)に乗って

地下鉄(メトロ)に乗って THXスタンダード・エディション
はむちぃ: 今回の映画レビューはご主人様お気に入りの浅田次郎先生原作の映画化「地下鉄に乗って」でございます。
ゆうけい: 浅田先生デビューの頃の古い作品で何故今頃?と思ってたのですが、どうも昨今の底の浅い昭和ブームに乗っかれ!てな企画だったように思います。

は: おっ、いきなり批判的な紹介の仕方でございますね、そう言えばTVCMをご覧になって

「こりゃトホホ映画かもな、、」

とおっしゃっておられましたが。
ゆ: そうそう、無理やり感動させようという魂胆ミエミエだったからね。

『いつもと同じ会社からの帰り道。地下鉄を降りて駅の階段を上がると、そこはオリンピック開催に沸く昭和39年の東京だった―。真次(堤真一)に突如訪れた、現実とも夢とも信じがたいタイムスリップ。真次は恋人みち子(岡本綾)とともに過去へ戻り、そこで若き日の父(大沢たかお)とその恋人お時(常盤貴子)出会う。時空を超える旅を続けるうちに明らかになる、父の真実の姿。そして真次とみち子との間に隠された、驚くべき秘密。それは、二人の愛に過酷な選択肢を突きつける、あまりにも切ない運命だった…。』(AMAZON解説より)

は: もともと浅田次郎先生の原作なんですから、そんなに張り切らなくても普通に撮れば感動できるように思うのですが?
ゆ: ところがそうでもないんだな、いくら浅田先生といえどデビューの頃の作品だからまだストーリー展開が生硬なんですよね。
は: 本領である人情話、家族愛のあたりはよく練られていると思いましたが?
ゆ: ところが道具としてのタイムスリップの手法がやはり素人っぽくてうそ臭いんですよね。同時存在のパラドックスとか過去への関与禁止事項とか全く考えてないのはご愛嬌としても、主人公(次男)の父がいろんな時期に主人公を見てそれでも同一人物だと全然気がつかないところなどどう考えてもおかしいですよね。
は: 死期の近い父の病床に、闇市時代に主人公があげた腕時計が置いてあったところを見ると、知っていたのではありませんか?
ゆ: あれは私の記憶では原作にない設定ですね。それに「あいつとの出会いで自分のやるべき職業が見えた」と言ってたところから見ても恩人としか思ってないんじゃないでしょうか?そうでなきゃ子供時代の主人公にあれだけ冷たい仕打ちはしませんよ、普通(^_^;)。

は: 原作にない設定と言えば、TVCMで散々流れた

「小沼正一はあなたの子供で幸せでした!」

と主人公が叫ぶ場面はどう考えても不自然でございますね。
ゆ: そうそう、愛人のバーに主人公カップルがタイムスリップして訪れ、長男を亡くした直後の父に向かって叫ぶんだけど、見ず知らずの男にそんな事叫ばれて父は一体どんなリアクションすりゃいいんでしょう(苦笑?心底ひっどい脚本だなあと思いましたね。バカかお前は、と小一時間(以下略。
は: ご主人様、きっこ様ではありませんが過激な発言はお慎みくださいませ(-.-)。

ゆ: スマソ、まあ簡単にまとめると浅田次郎先生の原作にもかなり無理があるところへ持ってきて、その原作を安易になぞっただけの展開にした上で無理やり感動させようとするもんですから、その感動が非常に薄っぺらになってしまった、と言う事になります。
は: 確かに原作を読んでいるものにとってはダイジェスト版を見せられているような気になりました、もっとじっくり親子の情なり、近親相姦になってしまったカップルの悩みなどを描きこめば良かったと思いますね。
ゆ: そうそう、タイムスリップネタをある程度削ってでもそちらの方を丁寧に描く方が浅田作品らしい良さが出たと思いますね。

は: 出演者の皆さんは如何でございました?
ゆ: 主人公の次男役の堤真一は同じ昭和ものの「ALWAYS-3丁目の夕日」にも出てましたね。出来はあっちの方がずっと良いと思うけれど、この作品でもまずまず無難な演技をしてました。父役の大沢たかおはいろんな時代を演じなければいけないと言う難しさはありましたが、闇市時代のアムール役の演技はおっ、良いね!と思いました。この人には良い印象が全くなかったんですが(解夏セカチュー等)、今回はちょっと見直しましたね、でもそれだけに作品の薄っぺらさが返す返すも残念です。
は: 女優さんでは大沢たかお堤真一の親子それぞれの愛人役を演じた常盤貴子様、岡本綾様、ともにお美しゅうございました。
ゆ: そうですね、常盤さんはもう立派な中堅女優さんになりましたね、堂々とした演技でした。岡本さんは私生活で話題を提供してしまいましたが、あの中村獅童を惑わすだけの魅力がどこにあるのかは分かりませんでした。でもまあ、まずまずの雰囲気を持った女優さんでしたね。

は: 昭和39年のセットはそれなりに雰囲気を感じさせる作りでしたね。
ゆ: ちょっとセットぽすぎる嫌いはあったけれど、まあまあよく作ってある方でしょうね。
は: という訳で最後に一言お願いします。
ゆ: トホホ系まではいきませんが、脚本の貧弱さが良く出ている作品です、企画者の浅田文学に対する造詣の浅さと相乗して、昭和ブームというものの底の浅さを認識させてくれます。チープと分かっていて入って楽しむ幽霊屋敷みたいなもんでしょ。
は: ご主人様、タイムスリップものと脚本にはうるさいもので申し訳ござません、俳優陣のそれなりの頑張りは評価しておられますのでご勘弁のほどを<m(__)m>