ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

T.REXのアナログ盤復刻

Trexanalogue
はむちぃ: ご主人様、この頃こればっかり聴いておられますね。
ゆうけい: そうなのだ、T.REXの傑作「The Slider」と「Tanx」なんだな。インペリアルレコードから昔のロックの名盤が重量盤LPで復刻されてるんだが、その第一回シリーズに入っていたんだ。

リンク: IMPERIAL RECORDS アナログ・レコード復活!.

は: ご主人様はベスト盤をお持ちですよね。
ゆ: というか、厨房の頃はおいそれとLPを買う金が無くてのう、「電気の武者」とこの2枚は指をくわえて見てるしかなかったんじゃ、今回LPで復刻されて涙涙じゃ(T_T)

は: なんか最近涙もろうなられましたねえ、やっぱりボケてるんじゃ?(-.-)ボソッ
ゆ: ん?何か言ったか(・・?
は: いえいえ別に、この2枚とも70年代初頭を席巻したグラムロックの名盤でございますね。
ゆ: そうそう、グラムとは男性がど派手な化粧を施した様(グラマラス)を指したんだけど、当時は

グラム=マーク・ボラン

というくらいすざまじい人気だったんだ。そしてその時代を代表してるのが、ケバい中に中性的魅力をたたえた「ザ・スライダー」のジャケ写真ですね。アート的に見ても歴史的価値からしてもCLASHの「ロンドン・コーリン」と並ぶジャケットの傑作だと思うな。
は: リンゴ・スター様が撮られた写真でございますね。あのデビッド・ボウイ様も当時は人気絶頂のマーク・ボラン様に嫉妬してたと言われてますね。
ゆ: 人気実力ともその後完全にボウイが凌駕するんだけど、最大瞬間風速的には「電気の武者」と「ザ・スライダー」の頃のボランには勝てなかったと思います。少なくともこの「ザ・スライダー」のジャケットに勝るジャケットはさすがの芸術家ボウイでも作れなかったね。

は: このアルバムには「メタル・グルー」「ザ・スライダー」「テレグラム・サム」と大ヒット作が3曲も入っておりますし、音楽的にもまさしくこれぞグラム・ロックと言うアルバムで時代の「風」を感じますね。
ゆ: 確かにボランの作る歌詞の世界は独特だけれど、音楽的には当時の難しくなりすぎたプログレへのアンチテーゼとしてのシンプルなロックンロールへの回帰がグラム・ロックの特徴でしたね。それにしても「wind」と言う歌詞をよく使ったボランを研究しておるのう、はむちぃ君。
は: お褒めに預かり恐縮でございます。ご主人様はそれ以外にお好きな曲はございますか?
ゆ: 唯一と言っていいバラード曲で、不思議な雰囲気を湛えた「ボールルームス・オブ・マーズ」が良いですね。

You talk about day
I'm talking 'bout night time
When the monsters call out
The names of men
Bob Dylan knows
And I bet Alan Freed did
There are things in night
That are better not to behold

Ballrooms of Marsより、Alan Freedはロックンロールの名付け親と言われる伝説的DJ)

は: 「タンクス」の頃には早くも人気に翳りがみえていたようでございますが?
ゆ: 独特の甘ったるくて舌足らずなビブラートのかかった声、重くてのたくるようなギターリフで作り出されたのがT.REXサウンドだったと思うんだけれど、それだけで完成されてしまった閉鎖的な世界だったのが災いして飽きられるのも早かったんだよね。
は: そういう意味で飽きられる前にジギー・スターダストの仮面を脱ぎ捨ててどんどん音楽性を変えていったボウイ様の戦略は実に巧妙でしたね。
ゆ: そうなんだよね、でもだからといって「タンクス」が失敗作かというと決してそうじゃないし、「エレクトリック・スリム」とかヒットした「ボーン・トゥ・ブギー」とか佳曲も多いんだけれどね。
は: 同時期にはシングルで「20世紀少年」がシングル・ヒットしてますしね。
ゆ: そうそう、だから音楽的にはより充実させていった時期なんですけど、悲しいかなセールスがついていかなくなりました。もう一つ言うと「ロックンロール」とか「ブギー」とかうきうきするようなサウンドを連想させるキーワードを用い、派手な化粧を施しながら、内実はどこか物悲しくて寂しそうな湿気を帯びたサウンドが、最大の音楽マーケットだったアメリカのミュージックシーンには受け入れにくかったんでしょうね。

は: ところで重量盤LPの音質は如何でございました?
ゆ: う~ん、こんなに綺麗なサウンドだったかと言うくらいハイファイです、もっとどろどろして重くてのたくっているサウンドと言うイメージがあったんですが、田舎でラジオにしがみついて聴いてた雑音だらけの音の刷り込みが強烈過ぎたかな(^_^;)。ひょっとしたら綺麗にリマスタリングしすぎたのかもしれないけど。
は: プログレと違ってチープな再生装置で十分な音楽的扱いを受けておられましたゆえ、まあまあハイファイなオーディオセットで甦ってボラン様も草葉の陰で喜んでいらっしゃいますよ、きっと。
ゆ: うん、そうだといいね(しんみり)。当時は落ちぶれた上に事故死、と悲涙を禁じえなかったけれど、自ら

「自分は30歳までに死ぬだろう」

と予言してその通りに事故死した彼の方が、才能を使い果たしてその後長く苦しんだボウイより幸せだったのかもしれないですね。

And when I'm sad,
I slide.
Watch now
I'm gonna slide.

( The Slider )

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