ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Declare A New State! / The Submarines

ディクレア・ア・ニュー・ステイト!
ディクレア・ア・ニュー・ステイト!

(「奥様は魔女」のナレーター中村正さんの声でお読みください)
 奥様の名前は「ブレイク・ハザード」、そして旦那様の名前は「ジョン・ドラゴネッティ」、ごく普通の二人はシンガーとプロデューサーとして出会い、ごく普通の恋をし、ごく普通の喧嘩別れをし、ごく普通にまた元の鞘に収まり、ごく普通の結婚をし、その引き出物としてこのCDを作りました。でもただ一つ普通と違っていたのは「奥様は魔女」、、、

ではなく(^_^;)、奥様は「スコット・フィッツジェラルドの曾孫」だったのです!(^○^)

1. Peace and Hate
2. Clouds
3. Vote
4. Brighter Discontent
5. Hope
6. Ready or Not
7. Modern Inventions
8. Good Night
9. This Conversation
10. Darkest Things
Bonus Track ( for Japanese Edition)
11: Brighter Discontent(Styrofoam Remix)
12: Waterloo Sunset

 男女二人のボーカルにアコースティックの楽器というシンプルなデュオ構成に、打ち込みを中心としたエレクトロポップ風味をまぶして仕上げました、という感じの音で、ユルユルの雰囲気がなごみます。じゃあ、その程度の作りじゃ携帯メディア+イヤフォンで十分か、というとそうでもないんですね。J-Popと違って無理な音の詰め込み方はしていませんので音は意外にナチュラルでかつ音場感もあるミキシングがなされており、良いシステムで聴いたほうがむしろ癖になるように思います。また、ボーカルに各種イフェクタをかけてある事もあり、良いシステムの方が歌詞を聞き取り易いですしね。実際自分の場合iPodで聴き始めたんですが、今はメインシステムでヘビーローテーションになっています。

 はてさて、売りの「アメリカの文豪スコット・フィッツジェラルドの曾孫」というところには、私もこのブログで何回も取り上げている大好きな作家ですので触れないわけにはいきません。レコード会社も村上春樹訳の「グレート・ギャツビー」とのタイアップを組むなど力を入れているようです。正直売る為の強力な武器にはなるでしょうし、実際私もその惹句が無ければおそらく買ってなかったでしょう。

 しかし、スコットの血を継いだ文学的な歌詞が魅力とか煽るのはやりすぎ。実際、ライナーノートによるとやはりブレイク・ハザードにとっては重荷でしかなかったようで、大学で文学を専攻して初めて読むようになったそうです。そんなにプレッシャーをかけずにのびのびとやらせてあげれば面白い素材だと思いすし、一言付け加えるとスコットだって何十という煌めく様な傑作の背後には、金の為に書き散らした何百と言う凡作もあったわけで、そんなに重荷に感じる事も無いよ、と言ってあげたい気もしますね。

 そう言えば、スコットの遺伝子を1/8継いでいるという事はスコットの妻のゼルダ の血も(おそらく)継いでいるわけですが、そっちには全く触れられてません。まあ、レコード会社の戦略とはその程度なのかなとも思いますし、病歴のこともあってわざと触れないのかもしれません。

 能書きばかりたれてても仕方ないので、自分なりに歌詞をみてみましょう。このアルバム、実は題名が「Declare a new state!」なのか「Peace and Hate」なのか良くわからないんですが、いずれにしても一曲目「Peace and Hate」と言う曲から取られており、たしかにこのアルバムのベストトラックだと思います。
 さて、その歌詞ですが、夏の終わりの海岸のアンニュイという比較的ステレオタイプな導入部から始まり、4行詞を積み重ねていくうちにどんどんシリアスになっていき、ついには「新事態宣言」に至ると言う面白い構成になっています。

 まず出だしを抜粋してみましょう

behind the sweet
summer fade
and on a coast
not far away

次いで曲名、アルバム名に取られているサビの部分はこんな具合です。

I should be gone
cast away


forever more

peace and hate
love and war
declare a new state

 スコット・フィッツジェラルドの小説に当てはめてみると、南仏での新人女優と精神科医夫妻の一夏の悲劇を描いた「夜はやさし」を思い起こさせる気がちょっとばかりしますね。さらにこんなところ、フィッツジェラルド独特の美文調を意識しているのかもしれません。

in light of all
darkest things
the fire glimmers and
the darkness sings

とまあ、こんな風に歌詞を楽しんでみるのも一興かと思います。ちなみに冒頭のリンクは日本盤です。いつもは輸入盤を探してリンクするのですが、ボーナス・トラックの12の出来がいいので今回ばかりは日本盤の方がお徳かな、と思います。