ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

10の語られなかった人道的危機(後編)

 先日国境なき医師団Medecins Sans Frontieres, MSF)の2006年4月号のニュースレターの「10の語られなかった人道的危機(前編)」という特集を紹介しました。5月号が届きましたので後半を簡単にまとめてご紹介したいと思います。

6: ハイチ
 2004年2月のアリスティド大統領失脚後政治的混乱が続き、多くに人びとが蔓延する暴力の犠牲になっています。MSFが設置した外科治療センターでは、昨年暴力による負傷者2250人を治療しましたがその半数が女性、子供、高齢者でした。

7: スーダン
 昨年1月に20年に及ぶ内戦が終結しましたが、同国南部では過酷な状況は殆ど改善せず武力衝突が依然として散発する中人々は基本的な医療さえも受けることができず、はしか、マラリア、肺炎等で命を落としています。MSFは南部各地で基礎医療定驚、感染症の治療を行っており、昨年は数千人の栄養失調の子供の治療を行いました。

8: ウガンダ
 同国北部の住民は20年近くの間、反政府組織と政府の紛争による暴力に苦しめられてきました。160万人以上が避難生活を強いられ多くの人びとがマラリア、呼吸器感染症、下痢などの予防可能な病気や暴力によって命を奪われています。その上HIV/エイズの蔓延が社会構造そのものに大打撃を与えています。昨年末起きた襲撃事件によりMSFは活動の一部縮小を余儀なくされました。

9: ソマリア
 1991年以来の紛争によって中央政府の不在が続くソマリアでは公共の医療サービスは一切無くなっています。多くの国民が極度の貧困の中で栄養失調等の問題に直面しています。内戦の被害の特に深刻な南部や中央部でMSFは外科手術を含む緊急援助を行っていますが、蔓延する暴力と複雑な部族構造のために同国で活動する援助団体はわずかしかなく世界から忘れ去られた中多くの人命が失われ続けています。

10: HIVエイズ
 HIVエイズ対策は依然として幾つもの難題を抱えています。毎日8000人がエイズ関連の病気で命を落としており、うち1400人は子どもです。開発途上国では幼児のHIV感染を調べることはできず、HIV陽性の子どもの半数が2歳になるまでに命を落としています。更に小児向けの抗レトロウィルス薬がないため適切な治療も行えません。
 結核との二重感染も深刻です。HIV感染者の結核診断は困難な上、主要な抗結核薬とARVは同時に処方できないなどの問題があります。

 ソマリアの惨状というのは昔Sadeの歌で知りましたし、ウガンダは先日映画にもなっていました。ハイチも良くハリウッド映画で登場します。しかしこれが現実であり、現在なお続いているという事実には本当に心が痛みます。再度前回記事に記載した内容を再掲しておきます。

10,000円でできることの例:
# 外科手術用麻酔キットを8人分購入できます。(約10,000円)
# およそ250人に予防接種を行うため必要な医療機器を購入できます。(約20,000円=10,000円×2口)

5,000円でできることの例:
# 避難民に毛布を8枚提供できます。(約5,000円)
# 避難民3,000人に清潔な飲料水を10日間供給できます。(約15,000円=5,000円×3口)

2,000円でできることの例:
# 避難民100人に緊急栄養食を提供できます。(約2,000円)
# 呼吸器系疾患に苦しむ子ども1人に抗生物質を用いた治療を行うことができます。(約4,000円=2,000円×2口)