ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

thunderbird / Cassandra Wilson

サンダーバード
サンダーバード

 映画ネタの続きになりますが、「アメリカ・家族のいる風景」のOSTがまだ出ていないのは寂しい限りです。しかしそれを補って余りあるアルバムが出ています。この映画の音楽を担当したTボーン・バーネットがプロデュースを担当したカサンドラ・ウィルソンの2年ぶりの新作「サンダーバード」です。店頭試聴して即買いでしたが、前回痛い目にあったコピーコントロールCDではなかったので一安心。東芝EMIもようやく愚を悟ったか^^;。悟ってませんでした(ーー;)(次の記事参照)

1. Go To Mexico(C.Wilson et al)
2. Closer to You (Jakob Dylan)
3. Easy Rider (trad.)
4. It Would Be So Easy (C.Wilson et al)
5. Red River Valley (trad.)
6. Poet (C.Wilson-K.Ciancia)
7. I Want to Be Loved (Willie Dixon)
8. Lost (J.H.Burnette)
9. Strike a Match (J.H.Burnette-E.Cohen)
10. Tarot (Wilson-Ciancia-Keltner)

『 カサンドラ2年半ぶりの新作。キーマンはやっぱり、プロデュースを担当したT.ボーン・バーネットでしょう。聴いた瞬間、10年前『ニュー・ムーン・ドーター』発表時にカサンドラにインタビューした際の一節が頭に浮かんだ。といっても、正確に彼女の言葉を覚えているわけではないので、当時のメモを引っぱり出した。「私は音楽を作る側にいるから、ジャンルなんて考えない。音楽はひとつであって、カテゴリーとかジャンルなんて、私は信じない。洋服や食べ物と同じね。いつも同じ服を着ていたくはないし、同じものを食べつづけるのもいや。ジャズ・シンガーと言われても、それはそれで一向に構わない。でも、自分ではシンガー・ソングライターだと思っている」ブルーノート入りしてからのカサンドラはクレイグ・ストリートと組んでブルース/フォーク色の濃い作品を発表してきたが、どうやらここらあたりで、また別の洋服を着たくなり、別の食べ物がほしくなったようだ。それで今回、T.ボーン・バーネットと組むことになったと理解していい。バーネットは48年セントルイス生まれ、テキサス育ちのシンガー・ソングライター、ギタリスト、プロデューサー、映画音楽家(『アメリカ、家族のいる風景』『ウォーク・ザ・ライン ~君につづく道』など)。また、ボブ・ディランエルヴィス・コステロらとの活動でも知られている。だから当然、この新作はバーネット色が濃厚。バーネット色ってなんだと言われると困るけど、要するにブルース、R&B、カントリーなどが一体となったアメリカン・サウンド。テキサス育ちのバーネットなので、そこにはテックスメックス(テキサスにおけるアメリカとメキシコの混合文化・音楽)の要素も加わっている。新たな相棒バーネットと組むことによって、カサンドラは確実に自身の世界を広げた! (市川正二) -CDジャーナル 2006年04月号 より引用 』

 いきなりトミー・リー・ジョーンズの新作「メルキアデス・エストラーダの3度の埋葬」を連想させるかのような「Go To Mexico」で幕を開けます。テックスメックス的なアレンジからいきなり野太いエレキ・ベースの低音が入ってきて迫力満点、そしてカサンドラの声、歌唱力は健在そのもの。

 ヴァン・モリソンジョニ・ミッチェル、更にはザ・バンドマイルス等カバーものの選曲にいつも冴えを見せる彼女ですが、今回はTボーンのプロデュースということもあってか、ディランの息子の曲やウィリー・ディクソンの曲に混じってトラッドも取り上げています。彼女の深い声を更にリバーブで深くし、けだるく尾を引くギターとの掛け合いで聴かせる「Red River Valley」なんかは非常に味わい深いです。拙宅の残響の多さではちょっと音量を上げると辛いところはありますが(涙。

 個人的には「アメリカ・家族の居る風景」のためにTボーンが書き下ろしたという「Strike A Match」がとてもよかったです。そう言えばサム・シェパード、しょっちゅうマッチを擦ってました(^_^;)