ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Full Tide / Mary Black

 アイルランドの国民的人気歌手メアリー・ブラックの新譜です。MAO.Kさんよりインプレ希望あり、書かなくちゃイケないなあと思いつつ、なかなかに難しく今日に至ってしまいました。申し訳ございませんm(__)m、ということで遅まきながらレポートしたいと思います。
Full Tide
Full Tide

Let's do our best in this full tide. ( The Real You )

アルバムの特徴を客観的に紹介する分にはさほど難しくもなくて、
1: 6年ぶりのスタジオ新作である
2: ほとんどの曲を彼女がプロデュースしている
3: 今までなかったのが不思議なくらいだが、彼女自身が書いた曲を初収録、また息子ダニー・オライリーとの共同作品が2曲入っている
4: 彼女にとって憧れの人であるボブ・ディランのカバーが2曲
5: サンディ・デニーのカバーも一曲収録

といったところでしょう。収録曲を見てみますと

1. The Land of Love (Noel Brazil)
2. Lay Down Your Weary Tune (Bob Dylan)
3. Your Love (O'Reilly/Mary Black)
4. Don't Let Me Come Home A Stranger (Robin and Linda Williams,Jerome Clark)
5. The Real You
6. Stand Up (O'Reilly/Black)
7. Full moon (Sandy Denny)
8. Straight As A Die (Noel Brazil)
9. Siul A Run (Trad. arr.M.Black)
10. St. Kilda Again(Shane and Damien Howard)
11. To Make You Feel My Love (Bob Dylan)
Bonus Track
12: Japanese Deluxe (Noel Brazil)

となっています。彼女が自ら曲を書いた背景には、彼女が信頼を寄せていた作詞家ノエル・ブラジルが2001年に亡くなったという事があるのかもしれません。5曲目はクレジットがありませんが、彼の作品です。歌詞中にタイトルになっているfull tideという言葉が出てきますし、bonus trackには in honor of Noel Brazil のクレジットもありますし、強く彼を意識したものであることは間違いないようです。

 以上です、お楽しみください、で済めば苦労はないのですが、うーん、印象を書けそうで書けないアルバムでした。曲は粒揃いの佳曲ばかり、特にMAO.Kさんご用達^^;、フェアポート・コンベンションのサンディ・デニー(一般にはLed Zeppelinの「限りなき戦い」で有名)のfull moonがとても良い出来だと思います。Dobloの名手Jerry Douglousも参加したボブ・ディランの2もゴスペル調にまとめてなかなか秀逸。何の前知識もなく初めて聴かれる方にも非常にとっつきやすく、楽しめるアルバムであると思います。

 でもメアリー・ブラックの新作だ!と過度に期待して聞くと失望するかもしれません。平均点過ぎて、これは!というセールスポイントには欠けるように思います。やはりメアリー・ブラックと言えばIrish tradに根ざした音楽をやってほしいとついつい期待してしまうのですが、その香りがやや希薄かなあと思いますね。そういう意味ではIrishならぬBritish Tradのサンディ・デニーの曲が一番良いというのも何か皮肉な気もします。
 結局、彼女くらいの大物になると、そうそう哀愁を帯びたアイリッシュ・フォークばかりやってる訳にも行かないし、エンヤのようにこの道一筋!っていう曲作りに没頭するわけにもいかないのでしょう。良い喩えかどうかは分かりませんが、美空ひばりが演歌ばかり歌ってるわけにいかなかった様なもんでしょうか。遠い異国でメアリー・ブラックを聴く私のようなものにとってはやっぱり「Song For Ireland」のような曲ばかりの方が聴きがいがあるし、購入意欲も湧くんですけどね。

Song for Ireland