先日記事にしたCrimson Jazz Trioがやっと到着しました。
King Crimson Songbook Vol. 1
Tracklist:
1. 21st Century Schizoid Man
2. Three of a Perfect Pair
3. Catfood
4. Starless
5. Ladies of the Road
6. I Talk to the Wind
7. Red
8. Matte Kudasai
Personnel:
Ian Wallace - drumset
Jody Nardone - acoustic grand piano
Tim Landers - fretless bass guitar
Produced and mixed by Ian Wallace
ジャズのスタンダードナンバーと言うのは元歌が必ずあるわけで、それが古い時代の流行り歌や映画音楽だけというのも偏狭に過ぎる気はします。以前ハービー・ハンコックもThe New Standardと言うアルバムで、新しい時代のスタンダードを作ろうと言う試みをしていました。ビートルズやシャーデー、カート・コバーンなんかのナンバーをアレンジしてましたがなかなか印象的でした。
それをキング・クリムゾンでやろうという試みをキング・クリムゾンサイドが考えた、と言うところが面白いと言えば面白いわけですが、逆に言うと今までジャズとして演奏されたことは全くと言って良いほどないわけで、ジャズサイドからは魅力の無い、または難しすぎる素材なんでしょうね。確かに変拍子ばっかりじゃあ食指は動かないかも。
ところがその変拍子の王道を行くビル・ブラフォードは今は完全にジャズの世界におられるわけでそれも皮肉と言えば皮肉なめぐり合わせです。じゃあ、ビルブラにやってもらえば、と言う気もしますが、多分ビルブラはKCナンバーをジャズでは演奏しないでしょう。One of A Kindあたりまでが自分の矜持の許せる限界なんでしょうね。
という訳で今回の主導権を握っているのは第2期KCのドラマーだったイアン・ウォーレスです。写真で見るとすっかりおっさんになってしまいました。他の二人もおっさん然としていてビジュアル的には見るべきものがありません(^_^;)。
とはいえ、音的には大変オーソドックスなジャズ・アルバムに仕上がっています。一聴して、
おっ?ラウンジ・ジャズかい?
というくらい衒いの無いオーソドックスなジャズ演奏を展開しています。
まずイアンについて言えば、彼自身が以前どこかのライナーノートで語っていたように、彼の在籍した第2期は最も西寄り(アメリカのジャズを指している)にベクトルが振れた時期で、本アルバムでも彼のドラミングはオーソドックスなジャズの雰囲気を濃厚に醸し出しています。KCのドラムにラウンジジャズ的ブラシワークはありえませんが、このアルバムではそつなくこなしていますね。
ピアノのジョディ・ナローンという人は正直言って良く知りません。村上春樹流に言えば、クリスプな、透明感のある綺麗な音を出せる人だな、と言う感じです。もちろん変拍子やKCらしい盛り上がりにもちゃんと対応していますし、オールラウンダーかな。
ベースは通常のピアノ・トリオと違い、ジャコ・パストリウスですっかり有名になったフレットレスのエレベです。ティム・ランダースという人は、前回記事のコメントでオラシオさんが教えて下さいましたが、ビリー・コブハムのバンドにも在籍したことのあるなかなかの使い手とか。ここでも随所に流麗なソロワークを展開してくれます。グレッグ・レイク、ピーター・ジャイルス、ジョン・ウェットンと言ったプレシジョン・ベースでの堅実な演奏とは一線を画した、ジャコ流のジャズ・ベースでKCナンバーを演奏してくれるあたりは、このアルバムでの一番の聴き所かと思います。
個々の曲については、まあ、皆さん、聴いてみてのお楽しみですよ、と言うことにしておきます。個人的にはCatfood, Ladies Of The Roadと言った2期のナンバーがイアンも安心して叩けるのか、ジャズとしての完成度が高いように思います。キ-ス・ティペットを入れてほしかったと言う意見も多いようですが、それじゃあフリーの方向に振れすぎて、オーソドックスなジャズ・アルバムにはならないと思いますし、2期のまんまの音楽を今聴いても仕方ないかなあとも思います。それよりは、カルテットにして管楽器を入れてほしい。当然ながら
メル・コリンズ
でなくっちゃねヽ(^o^)丿。