ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

石井先生宅オフ:番外編;F様宅訪問

F
 さて、名残りを惜しみながら石井先生宅を後にしたあと、私はHoteiさんの計らいで石井式リスニングルームを御持ちのF様宅にお邪魔させていただくことができました。閑静な住宅街にある素敵なお宅で素晴らしい経験をさせていただきました。日曜日の夜という団欒の時間帯にもかかわらず快くお招きいただいたF様には深く感謝いたします。

 さて、冒頭の写真はどこかで見た気がするという方もいらっしゃると思います。実はステレオサウンド154号343-353ページで石井先生とHoteiさんが「新方式リスニングルームの全て」と題してF氏邸を紹介しておられます。と言うことで詳細はそちらを参照していただけると幸いですが、このお部屋の特徴としては、
1:部屋の寸法比として石井先生が理想的と提唱されるダイアモンド・プロポーション(1:0.845:0.725)を初めて採用し天井高が4.2mある。
2:堅牢な床構造になっている(ステサンに構造図あり)
3:完全吸音完全反射でクラシックにベストな残響時間としてある。
4:遮音性が高い
5:内壁材が天然木で美しい響きである
等があげられます。

 F様宅は外見は通常の2x4住宅なのですが、実際リスニングルームにお邪魔させていただきますと、視覚的には写真で想像していたよりずっと天井が高く感じるのが印象的です。そして聴覚的にはノイズフロアが驚くほど低く、エアコンを切ると無音室のようです(すぐ外は道路で車が行き来しているのですが)。しかし無音室と違って話し声が非常にまろやかであることにも気づきます。感覚的には床が非常にしっかりしていることが踏みしめた感覚で実感できます。

STさてF様のシステムです。 
Loudspeaker: Diatone DS-V3000
SW:Yamaha YST-SW1000
ST: SV-X3000のボロン・ツイーター単体を自作ネットワークで使用
CDP: Esoteric(VRDSメカ)
PreAmp: ARCAM FMJ C30
PowerAmp: Sausui AU-07 Anniversary(パワー部のみ使用)
 スピーカーはアラミドスコーカー、ウーファー、ボロンツイーターという大変凝った素材を使ってあり、仕上げも非常に美しく、これがペアでなんと90万円というプライスはダイアトーン全盛時の実力を感じます。
 F様は予備に80000Hzまで伸びているというこのボロンツイーターをワンペア持っておられ、自作ネットワークを介してスーパーツイーターとして使用されています。写真のようにSPの横に置いておられます。これだけの天井高ですからSPの上に置かれれば音像がより上方に伸びるのではと思ったのですが、幼いお孫さんが落としてしまわないように、とのご配慮からだそうです。

試聴ソフト:
F氏:
1:Igo Pogorelich: The Great Gate of Kiev;
  Mussorgsky: Pictures at an Exhibition(DG437 667-2)
2:Bryn Terfel: The Trumpet Shall Sound(Messiah);
    Handel Arias(DG453 480-2)
3:Rosalyn Tureck: J.S.Bach Clavier Concerto,G Minor:No.7,BWV1058;
    The Rosalyn Tureck Collection, Vol. 5: Bach and Moazrt - Five Keyboard Concertos(VAIA-1112-2)
4:Sarah Brightman: Time To Say Goodbye, O Mio Babbino Caro;
  Time to Say Goodbye
ゆうけい;
5:Vllery Gergiev and The Kilov: The Young Prince And Princess
    R.コルサコフ:シェエラザード
6:Patricia Barber: Call Me;
  A Fortnight in France
7:Beth Neilsen Chapman: Life Holds On;
  Beth Nielsen Chapman
8:Minoru Nojima: La Campanella;
  Nojima Plays Liszt
Nojima Plays Liszt

 さて、いよいよ試聴に入らせていただきました。まずはのシェヘラザードをかけていただきました。

スピーカーが部屋中央に位置しその背後にグランドピアノがある

というセッティングに音が出始めるまでは違和感があったのですが、たおやかな弦の音が鳴り始めた途端スピーカーの存在が消え、ピアノの少し手前あたりに広大で澄み切った音場が開けました。まさに息を呑むような情景です。
 音質的にはやや細身で温度感がやや低めですが、刺激的な所謂「きつい」音が全くありません。ダイアトーンのイメージを大きく覆すような柔らかくてふくよかな音です。特に弦の美しさは特筆もので、低音の凄みで聴かせる感のあるゲルギエフ+キーロフがまるでウィーン・フィルのようです。

 次にピアノを聴かせていただきました。は高名なキース・ジョンソンの録音によるNojimaのピアノ演奏です。よくデモに使われる「ラ・カンパネラ」をかけていただき ました。ppから始まる正確無比な指使いとffでの打楽器の如く鍵盤を叩く迫力は尋常ではありません。そのダイナミック・レンジの広さを見事にとらえた キース・ジョンソンの録音もまた素晴らしいものです。実は石井先生宅でもかけていただいたのですが、一音一音があまりにもクリアに分離されすぎてHoteiさんに

指使いが凄すぎて攣りながら弾いているように聞こえる

と言われてしまいました。そんな筈では、と思っていたのでF様宅でもかけていただいたのですが、Hoteiさん自らが

今度はらくらくと弾きこなしている!

と驚かれました。残響時間が適切なのだと思いますが、スタインウェイがその場で鳴っているような錯覚に陥りました。
 今度はF様がピアノの違いを比較するため、ベーゼンドルファーを使用しているポゴレリッチをかけて下さいました。ややテンポを落とした懐の深いゆったりとした演奏でベーゼンの特徴を知り尽くしてその魅力を十分に引き出している素晴らしい演奏でした。

 次にボーカルをまとめて聴いてみました。まずはバス・バリトンをかけていただきました。普段はアリアなど殆ど聴かない私ですが、よく通る声が部屋に適度にこだまして、本当にオペラホールに来たかのような錯覚に陥ります。
 女性代表でサラ・ブライトマンはポップス的な歌唱法のTime To Say Goodbyeとベルカント唱法のO Mio Babbino Caroの違いがくっきりと浮かび上がります。
 ではクラシック以外ではどうか、ということでジャズ・ボーカルであるパトリシア・バーバーからCall Meをかけていただきました。独特のつぶやくような凄みのある歌唱法が持ち味の彼女ですが、なんとも毒気が抜けてしまい美声で端正に歌うではありませんか!これには驚きました(^_^;)。もちろんF様がセッティングをクラシック用に詰めておられることは言うまでもありませんが、やはり部屋の影響というものの大きさを痛感しました。
 ではこの部屋に合うようなポップスをということでキャロル・キングの流れを汲む正統派ベスをかけて頂きました。これは見事にハマりました。とても気持ちの良い演奏です。ただ、電気楽器もアクースティックのように綺麗過ぎるきらいがあり、ディストーションの多い激しいロックや一部プログレには合わないだろうなあと思います。キャメルは合いそうに思いますけれどね^^;。

 ノイズ・フロアが非常に低く音場が綺麗だと言う話から、「行儀の悪いアメリカ聴衆のざわつきを見事に捕らえたアルバムがある」とのことでロザリン・チュレックをかけて頂きました。グールドが尊敬して師と仰いでいたといわれるチュレックの見事な演奏のバックで咳やしわぶきの音、がやがやしたざわめき、更に録音された暗騒音が見事にSP感に現前しました。これも部屋のS/N比が高いことの傍証かと思います。

 あまり遅くまで居座っても失礼なので今回はこれで終了しましたが、クラシックには疎い私が片っ端からクラシックを聴かせて頂きたいと思うほどの魅力(魔力)がありました。

建ててから石井式にしとけばよかったと後悔する方が多い

と石井先生自身が書いておられますが、これは宣伝文句ではなく、本当です!新築を考えておいでのオーマニの方は一度は石井式を聴いてみられることを御勧めします。

追記:今日サウンド・ミカサでGuitarra Celtica:Andrew Whiteを買ってきてBGMで流しています。いやあ素晴らしい録音、拙宅でもふくよかで懐の深い、それでいて歯切れの良い音を聞かせてくれています。ケーナ前回書いたのですがクレジットを見ると

Declan Masterson: uillean pipes, low D whistle,high whistle

となっていました。お詫びして訂正いたします。調べてみたところ、uillean pipeとはアイルランドバグパイプだそうです。