ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

虎よ、虎よ!

dai3shinseimaru

 というわけで昨日のノマドつながりでこの作品を阪神タイガース優勝の翌日に紹介します。

虎よ、虎よ!

ジョウント効果と呼ばれるテレポーテーションの開発によって、世界は大きく変貌した。一瞬のうちに空間を跳び、人々はどこへでも、自由に行けるようになったのである。しかしそれと同時に、このジョウント効果がもたらしたもの、それは富と窃盗、収奪と劫略、怖るべき惑星間戦争でもあった。この物情騒然たる25世紀を背景として顔に異様な虎の刺青をされた野生の男ガリヴァー・フォイルの、無限の時空をまたにかけた絢爛たる復讐の物語がここにはじまる……。

 先日からMAO.Kさんのブログで名作SFが紹介されていましたが、これもSF黎明期の傑作です。作者はアルフレッド・ベスターですが、題名は英国の詩人ウィリアム・ブレイクの詩から引用されています。ブレイクの詩はトマス・ハリスハンニバル・レクター博士シリーズ「レッド・ドラゴン」でも引用されていますし人気が高いですね。

 

  さて、ノマドの説明をしましょう。本作は壮大なというか、もう狂気をはらんだといってもいいくらいの復讐譚です。主人公は、外惑星連合の攻撃により壊滅的な打撃を受けた宇宙船NOMAD号の中でただ一人生き残り、百七十余日暗黒の中で狂気寸前となって救助を待ちます。ある時<ヴォーグ号>という宇宙船がNOMAD号の残骸と、その中の生存者の救難信号を認識しながらも通り過ぎてしまいます。主人公は何とか生き長らえて、生涯をかけてこの船に復讐をする決心をする訳です。そして復讐を誓った主人公が額に彫りこんだ入れ墨がNOMADでした。Nomadは漂流民という意味ですが、入れ墨にはNo Madすなわちどんな状況に陥ろうと正気を保つぞという強い意志がこめられていました。

 まあ、そこまでやるかというプロットはともかく、随所に出てくるSF的小道具は発表された1956年という年代を考えると非常に斬新だったと思います。特にジョウント効果というテレポーテーションの概念は後世に多大な影響を与えました。自分の覚えているだけでも筒井康隆の小説に使われていたり、吾妻ひでおの漫画でギャグにされていたりしてました。

 さて、冒頭の写真は根室沖で当て逃げされ沈没した第3新生丸です。宇宙船ノマド号とだぶります。許しがたい当て逃げをした船はガリバー・フォイル並みの復讐を受けるぞ(怒。