とりあえず見とかないと。ということでカンフー・ハッスルです。「少林サッカー」で当てたチャウ・シンチー(Stephan Chow)がめでたくハリウッドからのオファーを受けて完成させた映画です。彼のカンフーへの、そして生い立ちへの思い入れがつまっておりました。そして世界を席巻する日本アニメの影響も。
文化革命前の混沌とした中国。本当のワルに憧れるチンピラのシンが、恐喝しようとしたオンボロアパーには、なんとカンフーの使い手がゴロゴロ! やがて彼はこのカンフーの使い手たちと街を牛耳る斧頭会の戦いに巻き込まれていくことに…。奇想天外な達人たちの超絶カンフーバトルは「ありえねーっ」技の連発(AMAZON解説より)
先日紹介したスパイダーボーイに出てくるスラムも顔負けの貧乏人の巨大アパート豚小屋砦が設定としては興味深いですが、筋そのものは前作のようなアイデア勝負ではなくむしろフィルム・ノアール風のマフィア対カンフーの達人の勝負の連続で展開していきます。
この達人たちが凄い。何が凄いって「一見凄く見えない度」が凄い。風采の上がらないおっさん(と一人のおばさん)ばっかり。だから筋が展開していかないと誰が達人だかサッパリ分かりません。主役のチャウ・シンチーも終盤まで狂言回し役に徹しています。
その達人たちを順番に紹介していきますと、
1:家賃を払えない貧乏間借り人3人
担がれやすい人足:十二路譚腿
手荒い仕立屋:洪家鐵線拳
コシの弱い麺打ち職人:五郎八卦棍
マフィアの集団をあっという間にやっつけてしまいましたが、2の刺客にあっという間にやられてしまいます。
2:奏でる刺客:古い琴波動拳
バブルガム・ブラザーズみたいな二人組です。琴から刃となる風を起こし切りまくります。最後はロード・オブ・ザ・リングのパロディみたいなゾンビーズまで繰り出しますが、実は達人だった家主夫婦にイチコロでやられてしまいます。
3:闘う家主夫婦:夫:太極拳、妻:獅子の咆哮
最初は面倒事御免の逃げ腰夫婦ですが、実は、というありがちな展開。でも伏線はありました。旦那はキスマークを妻に見つかって3階から突き落とされて頭に植木鉢を落とされても死ななかったし(^_^;)、奥さんの逃げ足は只者ではなかった\(~o~)/。まあこの映画で最も魅力的(か?)なキャラといえましょう(苦笑。
その奥さんの口から発せられる獅子の咆哮は恐ろしい凶器。奏でる刺客なんかイチコロ、世界一の殺し屋でさえあと一歩というところまで追い詰めますがーー。
4:笑う殺し屋火雲邪神:崑崙派の蛤ばく功
初登場のシーンでは痴呆老人かと思いました。実は世界一の殺し屋。この俳優さんもブルース・リーの時代に花形カンフー役者だったそうで、チャウ・シンチーの思い入れを感じます。蛤ばく功というのはヒキガエル拳とでも言えばいいでしょうか。巨大蛙となってその突進力で覚醒したシンを弄び、空に蹴り上げたまでは良かったのですがーーー。
5:街のチンピラ・シン:如来神掌
シンは最初は子供の頃のいじめをきっかけに悪で成り上がろうと決めたちんけなチンピラとして登場。ところが不思議なことにナイフが刺さろうがコブラに咬まれようが火雲邪神に顔を完全に破壊されようが死なない。そして最後には真の達人として覚醒。
最後の火雲邪神との勝負では、蛤ばく功により空中高く放り上げられ絶体絶命に陥った彼が雲に如来の姿を見てそのまま落下し、掌から巨大な気を火雲邪神に対して繰り出すと掌型に地面がへこむという最終兵器的超荒業を繰り出します。これが如来神掌。
以上をまとめると
1:凄い達人が出てくるが必ずそいつを軽くやっつける悪役が出てくる。
2:その悪役の野望が達成される寸前にもっと強い善玉が出てくる。
3;その善玉も最終兵器的な悪役にやられてしまい、悪が勝利を収めかける。
4:死の淵から蘇った主人公が覚醒しついに絶対的な力を得て悪に勝つ。
ということになります。
このシチュエーションってどこかで見たことあると思ったらドラゴンボールの孫悟空そのまま。「少林サッカー」はキャプテン翼の影響が大きかったとインタビューに答えていたのを思い出し、オフィシャルページでインタビューをチェックしてみたらやっぱりありました。ドラゴンボールとドラエモンに多大な影響を受けたそうです。
ということでカンフー好きにはたまらない贈り物ですが、少林サッカーのようなプロットの面白さを期待する向きには少しがっかりさせるかもという映画でした。