ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

五輪真弓→加藤和彦←スネークマン・ショー

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 え~、調子に乗ってもう一枚紹介します。今回は加藤和彦さんの「うたかたのオペラ」を選んでみました。「スネークマン・ショー」からでも「冬ざれた街」からでもつなげます。理由は二つ。
1: スネークマン・ショーに変名で加藤和彦さんが参加してるから。
2: 3枚全てに大村憲司さんが参加してるから(またかよと言わないで^^;)。

うたかたのオペラ(紙ジャケット仕様)
うたかたのオペラ(紙ジャケット仕様)

 私はこの頃の加藤和彦さん(トノバン)をひそかに高等遊民夏目漱石の造語です)と呼んでいます。パートナーの故安井かずみさんと一緒に世界を回っては時代の一歩先を行くアルバムを作り続けていた、という贅沢な時間を過ごしておられたからです。当然ながらバックの演奏陣も超豪華な人たちを選んでは呼び寄せていました。坂本教授をはじめとするYMO人脈が中心ですが、大村憲司さんも常連の一人でした。
 そのピークを成すヨーロッパ3部作といわれているのが、
「パパ・ヘミングウェイ」(バハマ、79年)
「うたかたのオペラ」(ベルリン、80年)
「ベル・エキセントリック」(パリ、81年)
の3作。バハマが入っているのに何故ヨーロッパ三部作というのかは未だに謎。

 さて、「うたかたのオペラ」をわざわざ選んだのはスネークマン・ショーに参加した時の変名が「Dr.Kesseler」で、その名前の出所がこのアルバムの

ケスラー博士の忙しい週末(Dr.Kesseler's Busy Weekend)

という曲だと思われるからです。
 このアルバムはデビッド・ボウイブライアン・イーノの所謂ベルリン三部作に多大な影響を受けて、ベルリンはハンザ・バイ・ザ・ウォールで録音されたもの。「LOW」「HEROES」のB面において、ボウイとイーノがヨーロッパのデカダンスと時代の閉塞感をシンセサイザーで表現した部分に感化されたのだと思いますが、まだバブルの前の時代にすぐに行動に移せるのですから凄いですねえ。
 安井かずみさんの詞はたしかにヨーロッパのデカダンと時代の陰翳をよく反映していますが、音楽自体は時代の暗さを良く捉えつつもそれほど重く沈みすぎてはいません。このあたりはトノバンの資質とのせめぎあいというか、落としどころというか、オペラやコンチネンタル・タンゴ等をトノバンふうに料理するとこうなりますよ、という感じです。
 そういえば「ケスラー博士の忙しい週末」はいきなりスカ風のビートで始まります。スカ、といえばMadnessを思い出しますが、丁度あの頃流行ってたんですね。早速にうまく取り入れているって感じです。佐藤奈々子さんのバッキングボーカルも軽やかで、この曲のみならずアルバムを通しての貢献度も大です。

 ところで、冒頭の私のLP写真とCDの紙ジャケ写真が違うのに気が付かれましたか?これはCDになって変更されたわけではなく、最初から確か4種類のジャケットが用意されていたんです。これも贅沢ですねえ。私の記憶では当時そんなことをしてたのはLed Zeppelinの「In Through The Outdoor」くらいです。

 とにもかくにもサディスティック・ミカ・バンド解散後も高等遊民トノバンが日本の最先端を走り続けていた時代の輝きがこの三部作にはあります。とはいえ、フォークの名残をまだ残している「それから先のことは」も好きなんですけどね。