ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

エミール・ガレ展@NMAO

NMAO

 tetsuwancoさんの神戸阪神地域芸術文化情報というブログで、没後100年記念「フランスの至宝エミール・ガレ」をやっているのを知り、昨日OBNでのりんけんバンドコンサートの整理券を取ってすぐに出かけてきました。会場は中ノ島にある国立国際美術館(NMAO)です。幸いOBNの最寄の地下鉄西梅田から一駅(肥後橋)と非常に近くて助かりました。

 以前兵庫県立美術館を「迷路のような」と書きましたが、さしずめNMAOは「地下要塞」の趣。事前に大阪市立科学館の傍ということは確認してあったのですが、駅から歩いていってもそれらしき建物は見えず。科学館の傍になにやら巨大なオブジェ(冒頭写真)があるな、と思ったのが実はNMAOの屋根に該当する部分でした。地下3階構造になっており、エスカレーターで随分深くまで降りた地下3階が会場でした。

 それにしてもこの建物のある大阪の名所中ノ島って、川の中洲なのに地盤は大丈夫なんでしょうかねえ。

 エミール・ガレについては私がくどくど書くよりも、上述のブログに素晴らしい紹介が6回に渡ってされていますのでそれをご参照ください。

 もちろん、私もそれを読ませていただいた上で出かけたわけですが、それでも入るまでは、もっと気楽にガラス工芸品工場を訪ねるつもりくらいの感覚で見ればいいと思っていました。というのも、彼は純粋な芸術家として生きたわけではなく、あくまでもガラス工芸工房の主宰者であり経営者であったわけですから、美術館展や高名な画家の展覧会のように芸術の粋を味わうという趣旨の展覧会とは少し異なっているだろうと思っていたからです。

 しかし出展されている作品の中には、これが商売品になるのか?と思うほど、エミール・ガレの内面を映し出した特異な印象を持たせるものが数多く含まれていました。グロテスクといっていいほどのものもありました。まさしくこれがアール・ヌーヴォーだったのでしょう。例えば、

1: 日本やアラビアの文化に影響されたと思われる芸術志向の作品が数多く見られたり(獅子頭が「日本の怪獣の頭」になっていたのには苦笑しましたが)、

2: 植物学者としても高名だったそうですが、広く昆虫学、海洋生物学にも興味を示す面を見せていたり、

3: 死と向かい合った作品(悲しみの花瓶や、唯一のオブジェであるなど)も多く見られたり、

4: ドレフュス事件への抗議の思い(”究極のガレ”と呼ばれる海馬の花器)や普仏戦争によるアルザス・ロレーヌ割譲に対するフランス国民としての深い悲しみ(彫刻作品かと見まがうような傑作フランスの薔薇)等、社会的な事象へ目を向けた作品群もあり

 少なからずショックを受けました。ちなみに海馬とはタツノオトシゴのことですが、脳の中で記憶回路をつかさどる海馬と言う部分があり、「ドレフュス事件を忘れない」と言う思いがこめられています。

 それに比べると、最後の陳列棚に飾ってあった彼の死後工房で作成された作品群は大変高度な出来栄えであるにも関わらず、魂の抜け殻のような印象を持ってしまいました。もちろんそれらは工芸品であることが使命なのですからそれでいいのですが、何か芸術品と工芸品の線引きのレベルというものを教えてもらった気分になりました。

 5月22日まで開催されています。余談ですが、音声ガイドでガレの声を担当しておられたのはまず間違いなく森本レオさん。久しぶりに彼の朗読を聴けて少し嬉しかったです。