ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

木住野 佳子@OBN

 今年のGWはどこへも出かけずいつもと同じ日常を送っていたので(突発的事件はございましたが(^_^;))、最後に変化をつけるべく大阪ブルーノート木住野 佳子さんのコンサートを聴きに出かけてきました。早いもので、彼女もデビュー10周年だそうです。寺井尚子さんやKeiko Leeさんと若手美女トリオなんてスウィングジャーナルでアイドル扱いされていましたが、もう立派な実力派中堅ピアニストとなりました。

 それにしてもOBNには度々出かけてますが、不思議なことに王道である筈のジャズのピアノトリオというのは凄く久しぶりでした。木住野さんもおっしゃってましたが、新しくなって本当に音が良くなりました。こもらずデッドになりすぎず、また今日のようなアクースティックのトリオでも、マイクあるいはピックアップで音を拾ってPAからも音を出しているようでしたがそれを感じさせないクリアな音質です。ピアノトリオを演奏するのに日本でも1、2を争う良い会場ではないかと思います。

May 5th., 2005, @ Osaka Blue Note (1st set)


YOSHIKO KISHINO TRIO
10th anniversary Tour 2005

木住野 佳子 トリオ

木住野 佳子 Yoshiko Kishino (Piano)
鳥越 啓介 Keisuke Torigoe (Bass)
トミー・キャンベル Tommy Campbell (Drums)

 今回は最新作2作、すなわちオリジナルで構成した「Heartscape(H)」とスタンダードを集めた「Timescape(T)」を中心とした構成でしたが、素晴らしいリズムセクションを従えたトリオによる熱い演奏を堪能できました。彼女には叙情的なバラード演奏が得意というイメージがあり、一部の口うるさいジャズファンにはお孃様のイージーリスニング音楽と揶揄されたりしますが、今日の演奏は熱いインプロヴィゼーションもあり、結構ハードな面も見せてくれました。
 彼女のそのような面を引き出してくれたのが、トミー・キャンベル鳥越啓介リズムセクション。トミーは確か先日亡くなられたジミー・スミス氏の甥っ子だそうです。木住野さんも言ってもましたが面影が似ています。とにかく変幻自在のテクニックでステージを熱くしてくれました。島木譲二の得意なあひるちゃんまで登場したのにはびっくり。そして、若手のベーシストのホープと紹介された鳥越さんは、もう風格のあると言ってもいいくらいの演奏でした。ドラムがおとなしくタイムキープに徹するタイプではまるで無いので(^_^;)、一人でタイムキープしなくてはいけない時間帯も多かったのですが、平然とにこやかにこなしておられました。速いパッセージも楽々とこなされテクニックも多彩でしたが、それを決してひけらかすことなく涼しげにグリスやヴィブラート、ピチカート等々織り交ぜていくとこなんか憎いばかり。鼻が痒かったのか汗が滴るのか、しょっちゅう掻いておられたのが少し気になりましたが。

Setlist
01: 風に抱かれて(H)
02: Ancient Dream(H)
03: Con Passione(H)
MC
04: By The Sea
05: Manhattan Daylight
MC
06: Come Together(T)
07: 風の情景(H)
MC
08: The Good Old Times(H)
Encore
09: A Song For My Friend(H)

 1-3曲目はオリジナル曲。一曲目はちょっとキース・ジャレットのアルバム「マイ・ソング」を思い出させるような叙情的な曲でした。3曲目はスパニッシュな曲ですが、トミーのトリッキーで変幻自在のソロにあおられて、木住野さんも後半熱いインプロを展開。終わった後「前にやった2曲を忘れてしまいました」とMCしたほど。会場もトミーに要求されたアフタービートの手拍子を結構うまくあわせてました。自分も演奏に参加した気になりました。
 
 4曲目はアルバム「Tenderness」からのボサ・ノバ風の曲。私もこのアルバムを持っていますが、彼女の好きだというベーゼンドルファーでの演奏でした。今回のステージはスタインウェイだったのでそれよりもからっと明るく、歯切れの良い感じがしました。5曲目は彼女が一番好きだという定番曲です。

 6曲目はレノンーマッカートニーの名作。ベースソロであの有名な冒頭のリフをモディファイして始まり、最初主旋律をピアノで演奏した以外は、殆どインプロでブルージーかつハードに濃厚なインタープレイが展開していきました。素晴らしい演奏で大変感動しました。3曲目とともに今日のベストアクトかなと思いました。

 7,8曲目もオリジナル。7曲目はアルバムではなんと尺八が入っているそうです。最後は木住野さんらしい叙情的な曲。さっきキースを引き合いに出しましたが、これはキースなら「Sometime Before」に入っている名演「My Back Pages」を思い起こさせるノスタルジックな雰囲気で和みました。

 アンコールはピアノソロで、病気の入院中の友達のために書いたという美しい曲でした。トリオでもう一曲くらいやってほしいなあとも思いましたが、深い余韻を残す木住野さんらしい終わりかただったのかもしれません。

ハートスケープ-オリジナル
ハートスケープ-オリジナル

タイムスケープ~スタンダード
タイムスケープ~スタンダード