ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

邦画2題

 久しぶりに邦画をホームシアターでみました。「ジョゼと虎と魚たち」「東京原発」の2本です。

ジョゼと虎と魚たち

ジョゼと虎と魚たち 特別版 (初回限定生産2枚組)

大学生の恒夫は、乳母車に乗って祖母と散歩するのが日課の自称・ジョゼこと、くみ子と知り合う。くみ子は足が悪いというハンディキャップを背負っていたが、自分の世界を持つユーモラスで知的な女の子だった。そんな彼女に恒夫はどんどん引かれていき、くみ子も心を許すが、ふたりの関係は永遠ではなかった。(Amzonレビューより)

 田辺聖子さんの短編、というよりは掌編の映画化です。もう2年前に公開され評判の良かった映画ですが、私は身障者ものや難病ものは話半分に聞いておいたほうが落胆しなくてすむと常々思っているのでまだ見ていませんでした。しかし、想像以上に良い映画でした。

 聖子さんの短編をうまく膨らませた渡辺あやという脚本家には脱帽です。あまり聞いたことの無い方ですが、要注目ですね。ほろ苦い青春を思い出すのにとてもいい筋立てになっています。また、身障者を全然甘やかさないところも好感を持ちました。

「この子は壊れもんです。何の世間様のお役にも立てません。こんな子は一生日陰もんであることが’分’というものです」

とおばばに戦前世代の本音を語らせるところ、恒夫を盗られた彼女は福祉を勉強している子なのに

「あんたみたいな子になんで私が彼氏を盗られんなあかんの」

と叫ばせるところ、そして(内心は傷ついていても)ジョゼがへこたれないところ、お見事です。

 俳優陣ではなんと言ってもジョゼ役の池脇千鶴が素晴らしい演技を見せています。性格のひねくれてしまった口の悪い下半身麻痺の女の子役を達者な大阪弁で見事に演じてます。主人公との唐突な出会いからの流れの中での演技は本当に素晴らしかったので、おばばが亡くなったと聞いて駆けつけた恒夫に帰れと叫びながらも思慕の思いが爆発して泣きながら愛を告白してしまう場面、思わずほろりとしてしまいました。

 恒夫役の妻夫木聡は、今時のちょっとモテる大学生を、素のままで自然に演じている感じでした。でも最後にジョゼと別れて元彼女と一緒に歩いている途中で嗚咽をこらえきれなくなる、というところ、思わずもらい泣きしてしまいました。犬童一心監督の映像感覚もきらりと光るものがあり一見の価値はあると思います。

東京原発

「東京に原発を誘致する!」突如飛び出した都知事の爆弾発言に都庁はパニックに陥った。推進派、反対派それぞれのもっともらしい意見が入り乱れて会議室は戦場と化し、議論が白熱する中、強引に原発誘致を推し進めようとするカリスマ都知事の真の狙いが明らかになる…。(オフィシャルサイトより)

 昔広瀬隆が「東京に原発を」という本を書いて物議をかもしましたが、それの現代版を映画にしたという感じです。笑いながら今の原子力発電の抱える問題を勉強できる、という一種の教育映画。

 反対派の教授が示すフリップで気になったのが原発施設の耐震性。あれが本当なら一番耐震性が高い東海地方の浜岡原発でさえ、阪神大震災の900ガルを下回る600ガル程度の設定になっているとのこと。これで気になったのが、先日の中越地震震源地付近では確か1000ガルを超えて史上最大の加速度を計測したという報道があったと記憶しています。信越地方といえば原発銀座ですよね~。ぞっとします。

 役者陣は主役の役所広司を含め達者揃い。特に反対派教授役の東京乾電池綾田俊樹がいい味出してます。それにしても岸部一徳さん、どの邦画見ても出てる気がするヨ(>_<)、貴重な人材なんだろうけどちょっと食傷気味です。