ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

WATARIDORIのからくり

 先日家内のリクエストで借りてきたDVDですが、あまりにも綺麗な画像と信じがたい程の近接撮影に驚愕してしまいました。これこそメーキングを見るべき映画だと思いAMAZONでコレクターズ・エディションを注文し、やっと届きました。早速2枚目のメーキング編を見てみました。以下ネタばれガあるので御注意ください。

WATARIDORI コレクターズ・エディション

おすすめ平均
羽ばたきの懸命さに感動・・・
奇跡的な映画
ドキュメンタリーならではの詩性

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 総監督はなんとジャック・ペラン!「ニュー・シネマ・パラダイス」で主人公のトトの大人役を演じておられた方なんですね。トトは映画監督になったのですが、それを地で行くとはあの映画のファンにはこたえられないシチュエーションですね。

 彼が製作に4年という途方も無い年月をかけて世界中の渡り鳥を撮影したフィルムなのですが、冒頭に述べたように、様々な渡り鳥の一体どうやって撮影したんだというくらいの近接撮影が数多く出てきます。翼の動きはもとより背筋の動き具合など信じられないくらいのダイナミズムで迫ってくる映像です。ただ、ジャック・ペラン本人が「ドキュメンタリーではない」とコメントしておられたことから、ある程度CGなり何なりの特撮を入れているのだろうと思っていましたが、実はそうではなかったんです。

 実は「刷り込み」という鳥の特性を利用しているんです。これは生まれて最初に見た対象を親と思い込む習性なのですが、鳥類学者との協同でこの「刷り込み」が可能な鳥種を数種ピックアップし実際に孵化させ人間を親と思い込ませます。同時にエンジン音に卵の段階から慣れさせておきます。そして飛べるようになると、軽飛行機やパラグライダー等とともに飛ぶ訓練を繰り返し、習熟した段階でロケ地に運んで実際に撮影するというわけです。なるほどこれなら特撮は要らないし、どれほど近接しても鳥は恐れたり逃げたりはしません。

 自然の摂理に反しているとか動物愛護の精神に反するとか批判するのは簡単かもしれませんが、メーキングフィルムには鳥への愛情が滲み出ていることもあり、不思議とあざといとか嫌な感じは抱かなかったです。ただ、ドキュメンタリーとして賞の候補に挙がったというくらいですから映画館の公開の段階ではそういうカラクリがあると知らずに観客は見ているわけで、一見完全なドキュメンタリーに見える手法というのはどんなもんだろうかという気はしました。

 もう一つ気になるのはあの鳥たちの今後。そのまま人間が育てていれば、繁殖という問題も出てくるだろうし、動物園や農家に引き取ってもらったりしたんでしょうかね。その辺はさすがにメーキングフィルムでも明かしていません。

 何はともあれ、圧倒的に美しく貴重な映像は一見の価値があると思います。機会があればぜひご覧ください。