ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

将棋の渡辺くん(1) / 伊奈めぐみ

将棋の渡辺くん(1) (ワイドKC 週刊少年マガジン)

 先日例によって例の如くプールから帰宅したら、家内が「番組改変期で面白い番組がない」とTVをザッピングしていました。そして、ふと手をとめたのが「渡辺明」さんという棋士の日常のドキュメンタリー。
 我々の職業にも変わった人は多いですが、この方も相当なもので、しかもユーモラス。藤子不二雄の「魔太郎」に似たおでこの広い風貌もいい。一方でこの方、棋士としては凄くて永世竜王にして、あの無敵を誇る羽生善治さんに唯一人勝ち越しているという凄い方。 

 その天才変人の私生活をコントロールする奥様が、雑誌編集者に勧められてなんと1年間漫画を描く練習をして、別冊少年マガジンに連載を始めたのがこの「将棋の渡辺くん」。TVでちらっと紹介された部分だけ見ても急造漫画家とは思えないほど上手いし面白かったので早速読んでみました。

 渡辺君は対局のない時は基本家にいます。ひたすら家にいます。で、PCで将棋の研究をする以外はゴロゴロ。家事はほとんど何もできない。野菜が嫌いで虫が嫌いで、ものすご~く「ぬいぐるみ」が好きで漫画が好きで競馬が好き。世界地理は「キャプテン翼」で、日本の地理は「桃太郎電鉄」で覚えました。
 「千手先を読む」くらいだから記憶力抜群と思いきや、奥様によるとそれは全くの誤解で、

「神経衰弱とか強いんじゃない?」 → 「弱いです
「一度通った道とか覚えていそうだよね」 → 「よく迷子になります
「私生活でも読みが深そう」 → 「そんなことは全くない

 勝負の世界で登りつめた人の凄さと、笑っちゃうくらいダメ夫な日常生活というギャップが心地よいです。そして、昔の「勝負師=生活破綻者」的なところが全くないホノボノ系なのがこの漫画の一番の良さだと思います。
 渡辺君は将棋雑誌のインタビューにスーツ姿で真面目にこう語ります。

悟空が超サイヤ人の状態を日常としたようにタイトル戦に出ることを当たり前にしたいです。」

 がんばれ、渡辺君、そして奥様。