ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

ネルソンス&CBSO feat ヒラリー・ハーン@兵庫芸術文化センター

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 11月24日日曜日の午後、久しぶりにクラシックのコンサートに行ってきました。ずばりヒラリー・ハーン目当てです。実は今まで2回ヒラリーの演奏を聴く機会を逃していました。一度は突然の体調不良に見舞われていけず、もう一度は仕事の関係であきらめました。

シェーンベルク&シベリウス:ヴァイオリン協奏曲

 しかも今回は私も家内も大好きなシベリウスのヴァイオリン・コンチェルトを演じられるというではありませんか。というわけで三度目の正直、今度こその意気込みで半年前に先行予約を押さえ、ついにその日を迎えました。数日前にマイミクさんが東京での演奏を絶賛されていたので否が応にも期待は高まるばかりでしたが。。。

 いやあ、よかったです。全く知識を持ち合わせていなかったネルソンス&バーミンガム市響の統率の取れた、美しくかつ力感に満ちた演奏に深い感動を覚えました。もちろんヒラリー・ハーンも素晴らしかったですクール・ビューティと言う勝手なイメージを抱いていましたが、いい意味でケレンみを効かせたダイナミックなシベリウスを聴かせてくれました。

 熱狂的なアンコールの拍手に応え、最後にネルソンス氏が

「台湾~日本と長く続いた今回のコンサートツアーも今日が最後でした。充実したコンサートを熱心な日本のファンの皆さんにお見せすることができて大変嬉しく思います」

と挨拶されました。なるほど、勝手な想像ですが最後とあってより完成度が高められ、かつオケの面々も熱気に溢れてたのでしょう。そして終了後には驚きのサイン会が待っていたのでした。

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『 日 時 2013年11月24日(日)   15:00 -  

 会 場 芸術文化センター KOBELCO大ホール

指揮  アンドリス・ネルソンス 

ヴァイオリン  ヒラリー・ハーン

管弦楽  バーミンガム交響楽団 

プログラム

1: ワーグナー:歌劇「ローエングリン」より 第1幕への前奏曲

2: シベリウスヴァイオリン協奏曲 ニ短調 (ヴァイオリン:ヒラリー・ハーン

アンコール(ハーン): バッハ:無伴奏ヴァイオリンのためのパルティータ 第3番より「ルール」「ジーグ」

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3: チャイコフスキー交響曲 第5番 ホ短調

アンコール: エルガー「朝の歌」

今、世界が注目する若き指揮者ネルソンス。ウィーン・フィルの来日公演に急きょ抜擢されたのは記憶に新しい。ベルリン・フィル、コンセルトヘボウ、メト、ウィーン国立歌劇場など次々世界の檜舞台に登場。旬の指揮者とヒラリーの華麗なる共演にも注目!

 (兵庫県立芸術文化センター HPより) 』

 まずは一曲目のワーグナー:「ローエングリン」第1幕への前奏曲 の冒頭、最弱音で始まるヴァイオリンパートの弦のアンサンブルが鳥肌が立つほど美しかったです。「妙なる調べ」とはこういう音を言うのでしょう。その一糸乱れぬ統率の取れた演奏がもたらす快感は私の好きなセル&COを思い出させました。

 そしてそこからじっくりとクレッシェンドしていき、ついにたどり着いた最強音部の迫力は、前から8列目という近さもあってか、力技で圧倒される感がありました。

 ネルソンス氏の指揮は一見身振りが大きく、パフォーマンス重視派に見えましたが、その実、演奏が進むに連れて動きの一つ一つが的確にそのフレーズに対応しているとても理にかなったものであるという印象に変わっていきました。

 そして二曲目のシベリウス:ヴァイオリン協奏曲で待望のヒラリー・ハーンが万雷の拍手に迎えられて登場。小柄ですが、ジャケット写真どおりの美貌の持ち主でした。しかし先ほども述べましたが、クール・ビューティと言うイメージとは異なり、小柄な体を大きく動かし全身で演奏される情熱的なスタイルに、予想外の驚きを覚えました。

 冒頭にリンクしたサロネンとの録音では優等生的な演奏でしたが、今回はアゴーギクはそれほど効かさない正確な演奏ではあるものの、よりディナーミクを重視した演奏に変容した印象を受けました。キャリアを重ねて自在に演奏スタイルをコントロールされるようになったのかもしれませんね。

 それにしても彼女の演奏は音色がとても綺麗な上に濃密で、かつとてもよく響きます。例えば第一楽章の冒頭の弱音部が、ちゃんと会場全体に浸透していきます。第三楽章のロンドになると、シベリウスからイメージされる北欧の音とは思えないほど華やかに一音一音が会場全体に舞い散り降り注ぎました。
 なんだか「のだめカンタービレ」の読み過ぎだと言われそうな感想ですが、それだけヒラリーのヴァイオリンに人を感動させる力があったとご理解ください。ちなみに愛器はフランスの生んだ名器ヴィヨームだそうです。

 さて、ソロイストがこれだけの実力の持ち主だと、オケが弱い場合協奏曲全体としてはつまらなくなってしまいます。しかし、ネルソンスの鍛え上げたバーミンガム市響は屈強でした。ヒラリーのよく歌うソロに十分拮抗して力強くヒラリーのソロに絡んでいきます。
 長い第一楽章も全く退屈する暇もなかったですし、美しい第二楽章には聞き惚れました。ロンドの第三楽章はそれこそ体がじっとしていられなくなるような興奮を覚えました。
 終わるや否や、いやフライング気味にブラボーの大喝采。ヒラリーとネルソンスが何度もアンコールで呼び出されます。

 そしてヒラリーはアンコールに応えて二曲もバッハのパルティータを演奏してくださいました。これもまた美しく濃い音色でオケもメンバーも聞き惚れているようでした。

 休憩を挟んで最後はチャイコフスキーの第五交響曲。闘争→勝利の表題的内容を持つとの解説どおり、チャイコフスキーらしい激しい感情表現に満ちた起伏の激しい交響曲で、このオケにはぴったりの選択だったと思います。弦楽パートはもとより、ホルンやクラリネットがとてもよく鳴っており、ティンパニの力強さも格別でした。第四楽章のコーダは音圧が強過ぎて8列目にいてさえのけぞってしまいそうでした。

 万雷の拍手の鳴り止まぬ中、何度もネルソンス氏が呼び戻され、最初に書いたような挨拶をされました。そして日本語に堪能なメンバーがいるからと、ヴィオラのリーダーが呼び出され、本当に達者な日本語で会場を沸かせてくれました。

 そしてアンコールはこのバーミンガム市響の最初の指揮者、エルガーの「朝の歌」。ネルソンス氏が「平和の歌です」と紹介されていたように思うのですが、その通り、とても美しく豊潤な慈愛に満ちた佳曲でした。

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 終了後予想外のサイン会があることがわかり、長蛇の列に加わりました。1時間近く待ってやっとヒラリーさんとご対面。黙々と前の方々が進んでいくので喋ってはいけないのかなと思いましたが思い切って

"I'm very glad to see you, Ms Hahn."

と声をかけてみましたところ、サインに集中していた顔をふと上げ、にっこりと微笑んで

"Oh, thank you very much!”

と言ってくださいました。後がつかえていたのでこれだけしか言えませんでしたので、横のNelsonsさんに

"Thank you for the wonderful concert!"

と謝礼の辞を述べさせていただきました。Nelsonsさんも喜んでくださったようでした。

 以上とても充実した、そして深く思い出に残るコンサートでした。ヒラリーさんの笑顔は一生忘れません(^_^;)。