ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

PHANTOM girl / 坂本美雨

PHANTOM girl
 先日「今日の一曲」で坂本美雨の「Phantom Girl's First Love」を流したところ、何人かの方から「あのハイトーンボイスの美雨って子誰?」というご質問をいただきました。ええっ、知らんの!?という驚きを隠して「坂本龍一矢野顕子の娘ですがな、母親譲りの声でしょ」と説明したらみんな納得。

 で、最新作「PHAMTOM girl」はとても良く出来たアルバムだと思います。私はiTunesからお手軽DLしちゃったものでレビューするつもりはなかったんですが、この際知名度を高めるためにも紹介したいと思います。この暑い時期にスカッと爽やかな気分になれる事請け合いです。

1. The Blue Hour
2. Phantom Girl’s First Love
3. Destination
4. Interlude I:Whispers Within
5. The Magic Hour
6. Far Across The Sky
7. Interlude II:Nowhere In Between
8. Silent Fiction
9. Our Home
10. A Girl’s Waltz

『 日本国内のみならず世界にもその名を轟かせる偉大な父と母を両親に持つサラブレッド・シンガー、坂本美雨。その透明感のある歌声を活かしてオーガニックなサウンドによるアルバム制作をここ数年続けてきた彼女だが、新作ではガラッとイメージを変えてエレクトロニカにアプローチした。NYの気鋭プロデューサー、デイヴ・リアンと組んで、これまでの生演奏中心から完全に打ち込みサウンドに転換。するとエモーショナルになった歌声の存在感をより際立たせる結果を生んだ。(ADLIB 2010年5月号) 』

 エレクトロニカに美声を合わせるといえばPUPAの原田知世様ですが(笑、美雨+デイブ・リアンサウンドの硬質な透明感も相当のハイ・レベル。ちなみに龍一氏と交流の深い知世様と美雨ちゃんはとても仲良し。だから知世様の持ち歌、「彼と彼女のソネット」を美雨さんがカバーしたリしてます。ちょっとそこの「それは大貫妙子の持ち歌やろ」と言ってるあなた、認識を改めてください(w。この曲は知世様の依頼でター坊がシャンソンに歌詞をつけたものなのです。

 えらい脱線してしまいましたが、一曲目の「The Ble Hour」のボーカルの揺蕩う感じが微かなエスニック風味とあいまって鼓膜を心地よく微振動させます。そして続く2曲目のキラー・チューン、エレクトロニカ・ポップ「Phantom Girl’s First Love」のはじけ方で美雨サウンドの魅力が全開!母親譲りの硬質なクリスタルボイスの、どこまでも高く、天空に突き抜けていくようなボーカルは最高。続く3曲目「Destination」もそのテンションで疾走し続けます。

 Interludeを挟んで五曲目はアジアン風味のバラード「The Magic Hour」。これも素晴らしい。美雨独特の歌詞とメロディ、アレンジとキラーボイスで魅了します。矢野顕子さんもこういう感じの曲を好んでいましたが、聴きやすさでは美雨さんの方がはるかに上。どうしてお母さんはこう言う歌唱をしてくれなかったんだろう(苦笑。「Far Across The Sky」も同系統の曲ですが、出来としては前者の方が上。でも、

 far across the sky~

というフレーズだけはクリスタルボイスファンにはたまらない快感。

 再びInterludeを挟んで、意表をついた歌詞の朗読で始まる「Silent Fiction」、シンセ・ドラムと彼女の声のサンプリングをバックに流れる彼女の声が、聴くものを一種のトランス状態に引き込んでくれます。

 最後の二曲「Our Home」「 A Girl’s Waltz 」はスキャットの多重録音。別に歌詞のネタが尽きたわけでは無いんでしょうけれど(^_^;)、もう一曲くらい「Phantom Girl’s First Love」のような元気の良い曲を聴かせてくれても良かったかな。

 というわけで、iTunesでDLしておいて今頃紹介してなんですが、「傑作」です。父や母の助けを全く借りずにこれだけのアルバムを作れる才能は七光からはるかに遠い所にあると思います。

 最後にしばらくの間もう一度「Phantom Girl’s First Love」のPVを埋め込んでおきますね。