ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

Tarantella / Lars Danielsson

タランテラ
 スウェーデンの名ベーシストLars DanielssonACTレーベルでの5枚目となる素晴らしい新作がリリースされました。彼が見出したポーランドの天才ピアニストLeszek Mozdzerとのデュオ・アルバム「Pasodoble」を以前紹介しましたが、今回はそのLeszekの他に新たにトランペット、ギター、ドラム三名のミュージシャンを加え、非常に多彩で美しい演奏を展開しています。

1: Pegasus
2: Melody On Wood
3: Traveller's Wife
4: Traveller's Defense
5: 1000 Ways
6: Ballet
7: Across The Sun
8: Introitus
9: Fiojo
10: Tarantella
11: Ballerina
12: The Madonna
13: Postludium

Lars Danielsson (double bass, cell, bass violin)
Leszek Mozdzer (piano,celesta,harpsichord)
Mathias Eick (trumpet)
John Parricelli (guiter)
Eric Harland (drums,percussion)

 本アルバムでのLarsの作曲および演奏は今までにも増して素晴らしいと思います。Leszekとの関係が成熟した事を受けて、更に一歩進んで自らの持てる才能を意欲的に発揮している印象を受けました。良く歌うベースは勿論のこと、チェロやバス・ヴァイオリンの演奏にも驚きました。特に3「Traveller's Wife」でのチェロ独奏は鳥肌が立つほど美しく感動的です。

 新たに加わったアーチストも無名の人ばかりですが、素晴らしい才能の持ち主ばかりです。1「Pegasus」でのMathias Eickのミュート・トランペットが醸し出すブルージーでいながらやはりどこか北欧的な清冽な雰囲気が冒頭から早くもこのアルバムの素晴らしさを予見させます。ギターのJohn Parricelliも東欧的雰囲気を持つ8「Introitus」で印象的なギターを聴かせ、ただ一人の黒人であるEric Harlandも黒人ならではのパーカッションのセンスが活きた5「1000 Ways」、10「Tarantella」や才能全開の12「The Madonna」でのドラムプレイで見事Larsの期待に応えています。それにしてもLarsはもうすっかりアメリカにおけるCharles MingusDave Hollandのような、若手育成の役割を担うヨーロピアン・ジャズの中心人物となりましたね。

 そしてやはり最後に特筆すべきは私一押しのLeszek Mozdzerのピアニズム。このアルバムに於いても鮮烈な印象を残しています。冒頭の「Pegasus」から2「Melody On Wood」の流れに於いてヨーロピアン・ジャズのエッセンスを見事に提示し、13の「Postludium」でのLarsとのインタープレイで静謐な美の世界を織りなして最後を締めくくるまで、ありとあらゆるタッチに聴き惚れてしまいます。二人のインタープレイは既にバーチュオーゾの域に達した事をどの曲でも実感できました。
 先ほどLarsがDave Hollandに比肩しうると述べましたが、その伝でいえばLars&LeszekはHolland&Gonzalo Rubalcabaに勝るとも劣らないコンビであると思います。

 早くも今年最高のジャズアルバムの一つであることを予感させる傑作です。ぜひどうぞお聴きください。