ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

August Rush OST

August Rush
 先日「奇跡のシンフォニー(原題"August Rush")」という映画を観たのですが、これがまあアメリカ脚本家協会がストライキを打つくらいのご時勢ですから、ついに向こうの脚本家もぶちきれたかと思わせるくらいのトホホ度。ハリウッド版「母を訪ねて三千里」は、なんぼなんでもそんな事アリエナイザー的展開の連続でとても感心しました(苦笑。
 唯一素晴らしかったのがハンス・ジマーマーク・マンシーナの黄金コンビによる音楽。バッハからヴァン・モリソン、脅威のスラッピング・ギターからゴスペル、最後には現代音楽的なシンフォニーともう音楽の闇鍋状態で何が出てくるのか息も打つかせぬ展開でした。終わった途端OSTをアマゾンで探してクリックしてました。ちなみに映像面でも廃墟と化したフィルモア・イーストや名門ジュリアード音楽院、セントラル・パークの野外音楽堂等が出てきて楽しめます。

1. Main Title - Mark Mancina 
2. Bach / Break - Steve Erdody and Jonathan Rhys Meyers 
3. Moondance - Featuring Jonathan Rhys Meyers 
4. This Time - Jonathan Rhys Meyers 
5. Bari Improv - Kaki King 
6. Ritual Dance - Kaki King 
7. Raise It Up - Jamia Simone Nash and Impact Repertory Theater 
8. Dueling Guitars - Heitor Pereira and Doug Smith 
9. Elgar / Something Inside - Steve Erdody and Jonathan Rhys Meyers 
10. August's Rhapsody - Featuring Freddie Highmore - Mark Mancina 
11. Someday - John Legend 
12. King Of The Earth - John Ondrasik 
13. God Bless The Child - Chris Botti and Paula Cole 
14. La Bamba - Leon Thomas III 
15. Moondance - Chris Botti (hidden track)

 日本盤のジャケットがあまりにださいし、解説や余計なボーナストラックは要らないと思って輸入盤にしたんですが、多分音質的には正解。でも、解説があるなら読みたかったと思った点が一点だけあります。収録曲のどこにも全くハンス・ジマーの名が無いんですよ。ようやく見つけたのがプロデューサーの謝辞の中で一回だけ出てくるだけ。想像するに大御所ハンス・ジマーは監修役、実質的な仕事はマーク・マンシーナが殆どこなしたというところでしょうか。

 マーク・マンシーナと言えばプログレ・ファンにはYesEL&Pのプロデューサーとしてのイメージが強いと思いますが。「スピード」の音楽を担当してからはすっかり映画音楽家になりましたね。今回も、現代音楽風にもガーシュウィン的にも聞こえる「August's Rhapsody」(10)というこの映画のクライマックスとなる壮大なシンフォニーのスコアを書いています。

 そしてそれ以上に彼のセンスが光るのは素晴らしいミュージシャンの選択。脅威のタッピング・ギターを聴かせるカーキ・キング、主演俳優でありながら完璧にロックバンドのボーカルを演じ(歌い)きったジョナサン・リース・メイヤーズ、そして怒涛のエンドロールではソウルシンガージョン・レジェンドポーラ・コール、才人ジョン・オンドラジク等が素晴らしい歌声を聴かせ、最後を締めくくるのは名トランペッター、クリス・ボッティ

 ちょっと映画のネタばらしをすると、「ネバーランド」や「チャーリーとチョコレート工場」の名子役フレディ・ハイモアが主人公の少年を演じています。絶対音感を持つ11歳の少年と言う設定なんですが、初めてギターを叩きだしたかと思う間もなく、すぐさま驚くべきタッピング&スラッピング・ギターの演奏が展開されるという、もう笑うしかない場面で実際に弾いているのがカーキ・キング。私はこの映画で初めて知ったのですがその筋では有名な女性ギタリストだそうです。それにしてもフレディ・ハイモアが弾いているようにしか見えないんですよね、エアギターの大会に出たら拍手喝采ですよ、ホント。

 そして何と言ってもフレディ・ハイモアのまだ見ぬ父親であるロック・シンガーを演じるジョナサン・リース・メイヤーズ、「ヴェルヴェット・ゴールドマイン」でも主演してましたが、今回はそれ以上の迫力を感じました。ヴァン・モリソンの名曲「Moondance」(3)も歌ってますが、あれだけ自分流に完全に歌いこなし演じきるとはもう脱帽です。アル中治せよ(苦笑。
 まあ冗談はともかく、このアルバムにも4曲収録されているんですが、ベストトラックは「This Time」(4)かな。ちなみに彼の曲は何とフィル・ラモーンがプロデュースしているんですよ!

 そうそう、親子と知らずこの二人が出会ってお互いのギターを交換してギグする場面があるんですが、これまた凄い演奏でまたまた笑うしかない(^_^;)。その曲が「Dueling Guitars」(8)です。ギター・ファンのオーディオファイルなら5、6、8を聴くだけでも買う価値があるんじゃないでしょうか。

 そしてまだ見ぬ母にしてジュリアードの卒業生の名チェリストケリー・ラッセル。彼女の演奏シーンも見事。指使いなんかを見ると実際そこそこの音が出てるんじゃないですかね。ちなみに実際に使われいる音はSteve Erdodyと言う方のチェロ演奏です。

 いやあ、こう書いてくると素晴らしい音楽映画だったような気がしてきた(笑。興味の湧いた方はくれぐれも感動を期待しないで観てください。そして音楽が気に入ったらOSTもどうぞ。