ゆうけいの月夜のラプソディ

ゆうけいの月夜のラプソディ移植版

The Hawk Is Howling / MOGWAI

The Hawk Is Howling
 前記事シガー・ロスを取り上げた以上、これも取り上げないわけにはいかんだろうと(笑。グラスゴーと言えばオーディオファイルにはLinnですが、ブリティッシュ・ロック・ファンには何と言ってもMOGWAIです。ポストロックを代表するバンドである彼らの新作「The Hawk Is Howling」も9月に出ております。こちらは知っていて既にヘビーローテーションで聴いておりました、と言ってもやっぱり家族のいない隙をついてしかかけられませんが(苦笑。

1. I'm Jim Morrison, I'm Dead 
2. Batcat 
3. Danphe and the Brain 
4. Local Authority 
5. Sun Smells Too Loud 
6. Kings Meadow 
7. I Love You, I'm Going to Blow Up Your School 
8. Scotland's Shame 
9. Thank You Space Expert 
10. Precipice 

『美しさと激しさを併せ持った独自のサウンドが世界中で愛されているグラスゴー出身のバンド、モグワイが「Mr. Beast」に次いで「The Hawk Is Howling」をリリース。静寂の中で流れゆくメロディ、轟音の中に込められた静寂。その作品に身を浸していると、アルバムタイトルにもなっているHawk(鷹)の持つ強さ、美しさ、孤高さがバンドの存在そのものにシンクロしてしまうのは僕だけではないはずだ。2曲目「Batcat」、5曲目「Sun Smells Too Loud」が白眉。(silly walker) (Amazon解説より)』

 確かに鷹の持つ気品はジャケットに溢れておりますが、一曲目からして題名はヒネクレまくり。7や8など、どうコメントしていいんでしょうか(笑。これで歌詞があるとえらい事になるのかも知れませんが、シガー・ロスと異なり、ボーカル一切無し。「通奏轟音」をバックに刻み続けられるアルペジオや美しいギターソロ、キーボードをはじめとする様々な音の浮遊感はやはりモグワイならではのもの。特に2,5などにはそれを感じます。その上でAmazonの解説にある「静寂」を強調したところが本作の特徴でしょうか。

 この解説にある「静寂の中で流れゆくメロディ、轟音の中に込められた静寂」と言う惹句は音響派ポストロック全般に通用するキャプションで、例えばシガー・ロスなんかもそうでしょう。でもこの二つのバンドを比べると全くそのサウンドは異なったものとなってしまいます。

 一方で、個々のバンドをとってみるとそのサウンドは、どのアルバムを聴いてもシガー・ロスシガー・ロスだし、モグワイモグワイ。どちらの新作も敢えてノイジーな部分を抑制して聴きやすさを意識しているように思えるものの、根底にある彼らのコンセプトは全く変わっていないように思えます。

 彼等もその辺はある程度意識しているのか、前作をプロデュースしたTony Dooganも一曲(5)つきあってますが、他全曲はプロデューサーにデビューアルバム「Young Team」をプロデュースしたAndy Millerを再起用しています。初心に戻るという気概でしょうか、確かにこれまでの流れを一旦断ち切った緊張感漂うアルバムになっている印象を受けはしますが、MOGWAIファン以外の方にどこかどう新しくなったのか説明するのは、、、難しいですね。

 振り返ってみれば彼等も既に13年のキャリアを積んでいます。英国ロックの勃興期だった1960-70年代にはビートルズプログレ、グラム、パンクをはじめ様々な音楽、バンドが変遷を重ねていく中で、10年も同じ音楽をやり続けるミュージシャンの方が稀有だったと思いますし、バンドも大抵同メンバーで10年はもたなかったですね。
 
たとえばデヴィッド・ボウイのように次から次へと新しいロックの「方法論(by 渋谷陽一)」を取り込み変化していく事が自らの成長と延命を図るには得策でしたし、それに応えるだけの音楽ジャンルや楽器の進歩があった時代だったのだと思います。
 そういう意味では現代の音楽シーンはその「ロックの方法論」が出尽くして多様化・拡散してしまい、どんなに既成の音楽を否定しようとも結局は開墾されたフィールドの中で演奏せざるを得ない状況なのでしょう。そしてもし成功したなら、その方法論を基本的には守っていくしかないのがポストロックというポストモダンの時代に生まれた音楽の宿命なのかもしれません。

 最後はちょっと小難しい話になってしまいましたが、ポストロックの宿命を彼等がどう考えているのか、ラスト曲の「Precipice(崖っぷち、危機)」という曲の憂愁が示唆している気もします。昔「Close To The Edge(邦題「危機」)」という傑作を生み出したグループの行く末を見ると、ひょっとしたら忘れた頃に新たな展開が見えてくるのかもしれませんが。

 ちなみにMOGAWAIも来年1月に来日するんですが、大阪は水曜日。ダメじゃん(ToT)